Blue Scream②
「お願いします! 通してください!!」
「ダメだ! ここは集中治療室だぞ!! 誰も入れることはできない!!!」
「集中治療って……義貞がそこまでの大怪我負うわけないでしょ!」
「素人の君に何が分かる!?」
素人でも分かることだから言ってるのに……。
加賀はあの後集中治療室に向かった。理由は義貞に会うためである。
目の良い加賀は、観客席からでも負ける寸前の義貞の表情が見えていた。
義貞は体力的な問題で動けなくなったのではない。驚きで体が硬直したところをやられたのだ。
それが分かった加賀は、何に驚いたのか考えた。
そして、導き出された結論が、義貞はミラーシールドの奥に驚いたということだ。
彼はミラーシールドの奥に何を見たのか?
それは流石に分からなかったので、聞きにきたのだ。
さらに、もう一つ理由があった。
それは戦力に加えるためだ。
この一連の謎は、あまりにも大きく、加賀一人ではどうにもならない。
せめて一人でも味方が欲しい……加賀はそう思った。
それで、その味方として相応しいと思ったのが、義貞である。
義貞とは付き合いが長い。あの攻撃に耐えられないほど義貞が弱くないのは知っている。
だが、白衣を着た男は、加賀を中に入れさせようとはしない。
これは、義貞が目撃したことがそれほど重要であるから、それを知らせないために取っている行動だと加賀は勘くぐった。
「お願いします!」
「だからダメだ!」
早くしないと!
そういうやりとりを行っていると……。
「うるせぇな」
と、扉の向こうで声が聞こえた。
その瞬間、銀色に光っている扉が、シワだらけになり、倒れてきた。
白衣の男は驚き、腰を抜かした。
「遅かったじゃねぇか」
その向こうにいたのは右手にヴァサラを持った義貞であった。
治療中だったのか、上半身裸で、下は淡い緑色のズボンを履いていた。
「分かってたんですか? 私が来ること?」
「いや、勘だ」
「あー、なるほど……」
「で、俺はどこに行けばいい?」
そうだ。今は急いでいた。早く用件を言わないと!
「案内します! 着いてきてください!!」
「おうよ!!!」
二人は走り出した。越前局を救うために。
▷▷▷▷
始まった途端、早速一親は銃で超音波を発してきた。
観客席には、準決勝を踏まえて、耳栓が配られていたため、観客に被害はなかった。
僕はすぐにシールドを展開した。
「あんなもので防ぐことできるのか!?」
耳栓で、耳が聞こえなくて、大きな声になった本音が聞こえる。
たしかにシールドで、音を防ぐことは不可能だ。
音は振動である。世の中で振動しないものはない。シールドを張ったところで、振動はシールドを通り抜け、僕の耳に届くだろう。
だが、僕には策があった。
僕はシールドを二重にして、展開した。
すると、周りから一切の音が聞こえなくなった。
その二枚の間には何の物質を入れない、つまり真空状態にして音を防いだのだ。
振動する物質がなければ、音が響くことはできない。
これで、当分の間、時間稼ぎできるだろう。
今回の僕の役目は、勝つことではない、時間稼ぎだ。
僕は願った、加賀が局先輩を助けてくれることを……。
僕にはそれしかできないのだから。
▷▷▷▷
「この会場に地下があるって?」
「はい! この会場は地下一階までしかないと公表されていますが、実はもっと深くに階があるんですよ!」
「なんで、お前が知ってんだよ!?」
「企業秘密です! あっ、ありました!!」
そう言うと、加賀は目の前の「STAFF ONLY」と書かれた扉を開けた。
中には、この会場の設備を支える基盤がそこら中に敷き詰められていた。
「どこかに階段があると思うんですが……」
しかし、周りを見ても、それらしきものが見えない。
加賀の目ですら捉えることができないほど、上手く階段は隠されているのだ。
通常なら、見つかるわけがないのだが……。
「そこだ!」
義貞は、色々な重要な機械があるのにもかかわらず、何の躊躇いもなく壁を破壊した。
「何やってるんですか!?」
「そこに階段がありそうだったから」
「そんな勘で当たるわけ……」
しかし、空いた穴の向こうには、金属製の板が段を作って貼り付けてあった。
「あれを階段と呼ぶんじゃないのか?」
「嘘…………」
改めて義貞の勘には驚かされる。だが、それを呆然と見ている時間もない。守時たちにバレたら命すら危うい。
「行きましょ!」
「おうよ!!!」
二人は地下に入った。高氏のために、また、その先にいる二人を待つ者のために。




