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無知の知④

「さあ、皆さん! 北条高時様主催、剣舞大会二日目が始まりましたッッッッッッ!!」


「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



観衆の叫びは、前回よりも増して大きくなっている。それもそうだろう。前回の戦いでだいたいの選手の実力が伺えた。


初戦の義貞と一親の戦いはスピード対スピードの戦い、さらに言えば、剣対銃の戦いでもある。両者がどのように戦うのか注目されている。


そして、最も注目されているのが、高氏と直義の兄弟対決だ。両者とも、一回戦は一撃で相手を倒している。この両者が本気を出したらどのような戦いになるのかが見物なのだ。


「では、登場していただきましょう! 赤コーナー! 奇跡の大逆転でコマを進めた男! 新田義貞ぁぁぁぁぁ!!!!」


そのナレーションに伴って、義貞が登場する。相変わらず大声で叫び返す姿が、調子に乗っているように思えるが、調子に乗らなければ調子が上がらないのも義貞の特徴だ。自分の特徴を活かすための行動であろう。


「続きまして、激しい銃撃の嵐の中、持久戦に耐え抜いた男! 安田一親ぁぁぁぁぁ!!!!」


そして、一親の登場である。(義貞が例外で、これが当たり前なのだが)冷静に立ち位置まで歩いていく。


一親は加賀と動揺にミラーシールドをしていて素顔が見えなかった。


ミラーシールドには様々な用途があり、加賀の場合は良すぎる目を制御する役目がある。


両者が立ち位置に着くと義貞が、「よろしくな!」と挨拶したが声援で聞こえないのか一親は返事をしなかった。


義貞は内心恥ずかしく思いながらも、目だけはずっとギラギラしていた。


そして開始の合図が鳴る。


「始めッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」


その瞬間、一親が義貞に向けて銃弾をほおりこむ。


その綺麗な直線は義貞の剣によって途切れた。


一親は義貞との距離を保ったまま息もつかずに銃弾を放つが、全て義貞によって切られた。


その剣筋も銃弾の軌道も、飛行機雲のように残っているため、そこには芸術性すら感じた。


(このままじゃダメだよな)


スピードタイプにとって攻撃が最大の防御。相手が飛び道具とあって、いつもの先手必勝をやめたが、このまま黙っている義貞ではなかった。


(よし動くか)


義貞は一親に向けて真っ直ぐに突っ込む。もちろん銃の雨は止んでいない。前に進みながらも、剣をその数多(あまた)の銃弾の中心に上手く当て無効力化していく。


少しずつ少しずつ前に進み、ついには一親の目の前に辿り着く。


しかし、義貞はすぐには一親に攻撃しなかった。義貞は剣を地面に突き刺したのだ。その剣で、一親の周りに円を描いた。


その結果、粉塵が舞い、一親の視界が封じられた。


一瞬でも視界が塞がれれば命取り。

そして義貞にとっては絶好のチャンスである。


粉塵の中から義貞の剣筋が、雲の中に踊る稲妻のように見える。


画面の一親のゲージが著しく減少していく。



それに一親も黙っていなかった。

一親は銃口にヴァサラ粒子をチャージし、飛び跳ねながら地面に半径1メートルほどの銃弾を撃ち込んだ。


一親の体は反作用で上空に上がり、粉塵を回避し、銃弾は地面に当るや否や複数の小さい球となり、散乱した。


(くそっ!)


そのいくつかは義貞に被弾し、義貞のゲージも減る。


今のところ、一親が61%、義貞が84%である。


一親の移動先が分からず、今度は義貞の視界が粉塵に遮られているため、思いっきり剣を空振りさせ、粉塵を止ませる。


そして義貞は一親の姿を目で追おうとする。


しかし、何度も言うようにスピードタイプ相手に一瞬でも視界が封じられれば命取りになる。



そして、もちろん義貞も同じである。



義貞が振り向くと、先程よりも大きい、半径1.5メートルほどの光が一親の銃口に形成されていた。


義貞が驚く暇もなく、銃弾は発射され、防ぐ術もなく義貞は吹き飛ばされる。


義貞のゲージが一気に49%にまで減少する。


(めちゃくちゃ痛てぇぇぇ!!)


バトルスーツがあるとはいえ、肉体にもダメージをくらう。骨は折れてないが、それでも筋肉の損傷ぐらいの怪我を負ったであろう。


(また不利な展開かよ…………)


義貞は大の字に横たわっているが、ずっとこのままでいるわけにはいかない。

すぐに立ち上がろうとする。


だが……そこには…………。


(う、嘘だろ?)



そこには半径が2.5メートルあるであろう光があった。流石にこれを防ぐには人数が必要で、観客を守るために配置、防御のエキスパートも、予備にいた仲間を呼ぶという緊急対応をした。




そして、その光はなんの無情もなく、放たれた。


義貞の体は強風に煽られたポイ捨てされたビニール袋みたいに吹き飛ばされた。


赤いゲージが39%を記す。


(おいおい……俺が日本の高三のトップ? ふざけんなよ。上には上がいるじゃねぇか)


それは昨日の一親の発言に対してだけではなく、ついこの間までの天狗だった自分にも言っているように感じた。


この時、誰しもが義貞の負けを確信しただろう。


でも…………。



(俺は今までとは違う!


逆境なんてどんと来いだ!! )



義貞は剣を構え、最大限のパワーをチャージする。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



ついに目の前に光が訪れたとき、義貞はその剣を横に振った。



「あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



そして、その光をまるで野球のように振り抜いて、跳ね返した。



防御のエクスパートが守っているとはいえ、流石にビビった観衆が逃げ出す。


一親は逃げたかったが逃げることはできなかった。さっきの銃弾を作るのにかなりのヴァサラ粒子を使ったからだ。


その自分の渾身の一撃が、哀れなことに、悲しいことに、可哀想なことに己に牙を向いた。



(…………終わったか)



義貞の前には大きなクレーターができていた。客席はもちろん無事だが、エキスパートの何人かがヘタヘタになっていた。


そして、壁際に一親が倒れていた。


義貞が画面を見ると、青いゲージが31%を記していた。辛うじて勝っていない状況である。


しかし、一親はぴくぴくと痙攣しているが、立ち上がろうとはしない。


(あれほどの攻撃を受けて立てるわけないか……)



義貞がゆっくりと一親のほうに歩き、義貞の影が一親を覆ったとき、剣を振り上げた。



その刹那。



一親が手元の銃を義貞に構える。

その銃口から光がパラボラの形を作り、ノイズを発生させた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


そのノイズに観客たちは苦しみ、中には泣き叫ぶものもいた。


バトル用のヘルメットをしてる義貞でも、零距離で放たれたらたまったものではない。



そのまま膝から崩れ落ちる。



(そのための特殊ヘルメットか……)


ミラーシールドがあるヘルメットは、特殊ヘルメットと呼ばれ、ミラーシールド以外に他のヘルメットと異なる機能があることを表す。


義貞の返事が聞こえなかったのは、観衆の声が原因でなく、耳栓の機能が備えつけられたヘルメットを着用していたからだ。



一親はゆっくりと立ち上がる。さっきの攻撃で、無惨にもミラーシールドは割れていたが、特殊ヘルメットの設計上ミラーシールドの中にも顔を保護する透明なシールド(これはヴァサラ粒子で出来たもの割れることはない)が貼られているので顔は無事だった。



銃口が義貞に向けられる。



そして……、



義貞は離さなかった剣を手に、片足の裏を地面につけて、上半身だけを起こし、一親に剣先を向けた……!!!




だが、反撃もそこまで、一親の顔が見えるまで上半身を起こしたが、動きが止まった。


そして、驚愕の表情に銃弾が放たれた。

















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