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アヤマリ⑤

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


僕の足もとで、もがき苦しむ土岐。喉を両手で押さえて、体を大きく揺らす。


オーバーヒートした機械を無理に電源を切ったら壊れるのは当然だ。


無理に活性化したヴァサラ遺伝子から、ヴァサラ粒子という養分を吸収したのだから、土岐の体は僕の想像のつかない痛みに襲われている。


その手で、近くに落ちた剣を持ち、もう一度、僕に突き刺そうとする。


僕は容赦なくシールドを展開して、その勢いで、剣を土岐の手が届かないほど遠くに飛ばす。


彼は、充血した眼で、涙を流しながら、僕を睨む。


「く……あ……お……ら……」


口を動かして何か話そうとしているが、耳が聞こえなくなったせいで、うまく言葉にできていない。


しかし。


「コ……ロ……ス」


「殺す」、それが彼が言いたいことであった。彼は僕を呪うように、その言葉を何度も何度も唱えていたのだ。


彼がそう思うのは当然だ。


彼は、幕府の横暴に耐えられず、この国を変えるために行動したにすぎない。


つまり、その行動の原点は、「正義」であったのだ。


その「正義」に反する幕府に、味方している僕は、明らかに「悪」であろう。


僕はあなたが「正しい」ことは知っているし、間違ってるなんて微塵も思わない。


あなたのような「正義感」の強い人がいなくなることは、非常に悲しい。


でも、あなたを助けることはできない。


武士として、戦場で、僕の手で眠ってください。


僕のヴァサラから、青く光った数多(あまた)の触手が生えてくる。


そして、その細長い触手は、薬によって活性化されたヴァサラ遺伝子目掛けて、飛びかかる。


それらが遺伝子に突き刺さると、「毒」によって、遺伝子は死滅した。


土岐は、スイッチの切れたロボットのように、憎悪の表情のまま停止し、やがてそれは無表情に変わっていった。


やった。やってしまった。


ついに、僕は人を殺してしまったのだ。


▷▷▷▷


「撤退! 撤退!」


無事に、テロリストの鎮圧を完了したため、六波羅探題軍は、撤退を始めた。


「救護班です! どいてください!」


タンカを持った救護班の方々が、急いで、兄さんのところにやってきた。


僕と直義も協力して、タンカに乗せる。


このまま、兄さんに付き添いたかったが、「あなたも怪我しているので、治療を受けてください」と言われてしまった。


自分の体の異変は、気づいていたので、黙って僕はそれに従った。


「タンカに乗りますか?」


と、聞かれたが、僕は「大丈夫です。歩けます」と伝えて、自分の足で、診療所に向かう。


その途中、「高氏くん!」と綺麗な声が聞こえた。


目の前を見ると、そこには(つぼね)さんがいた。


「大丈夫!?」


そう心配そうな顔をして、近づく彼女。


心配してくれて嬉しい。本当に、嬉しい。



でも……僕はこう言った。


「今の僕は『汚い』です。近づかないでください」





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