表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

プロローグ

 



「おまえの嫁ぐ日取りを決めてきたぞ」


 まるで飼い犬の貰い手が決まったとでも言うように、婚姻があっさりと告げられた。

 城に到着した途端にこれかと、乾いた笑いが漏れそうになる。

 嫁ぎ先は政情不安を今も引きずる、山脈を越えた先の帝国。本気だろうか。

 嫁いだならば、国に戻ることは難しいだろう。それどころか、帝都に無事辿り着けるかどうかも甚だ怪しい。

 ――婚姻すら初耳なのに日取りだなんて。


 椅子に悠々と腰かける男の、自分と同じ緑の瞳。喜ばれ、礼を言われることを疑っていない無神経な瞳。クロエセリア・ハノーファーは、それを謁見室の檀下から見つめながら、男を椅子ごと蹴り飛ばしたい気分に駆られた。



 凛々しく、人々を魅了してやまない姿。

 緑の瞳は理性に溢れ、流れる金の髪の一本すら尊く輝く。

 声はどこまでも力強く、言葉は人々を正道へと導く(しるべ)そのもの。

 それら全ての賛辞を受けたエルクラルドの先々代国王、カイセル・ハノーファー。


 目の前のフェルディナンド・ハノーファーは、その孫にあたる。

 クロエセリア唯一人の兄。

 彼は即位当初、偉業を成した先々代国王カイセルの生き写しと呼ばれていた。

 でも実際は――――。




 もっと穏便に済ませるつもりだった。

 ――でも兄上がそのつもりなら、こちらだって手加減しないわ。



 クロエセリアは、兄に視線を合わせたまま口を開いた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ