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89、魔女?

パチパチパチパチ☆


「「「!?」」」


「素晴らしいわねぇ。坊や」


都の外で昼食を食べ終わり、場所を変えて魔法の検証をしていると 突然ハルカ達は後ろから声が掛けられる。驚いて振り向くと 目の前に魔女がいた。


魔女という印象が滲み出るのは、童話の挿絵にある様な捻くれた枝の杖を手に持ち 魔女の帽子を被っているからだ。

紅茶にミルクを入れたような色の長い髪、黒に近い紫のローブは細い赤のラインが センス良くアクセントを作っている。年齢は20代半ばだろうか・・その体はローブの上から見ても男達を引き寄せるだけの魅力を振りまいている。

美しい顔に備わった意志の強い目には そんな近寄る虫たちを払いのけるだけの迫力が有った。


ハルカの体が大人のままなら 直ぐにでも口説いていたかも知れない理想的な女性である。


『ハルカ、コノ者・・・ソナタト同ジクライ強イ魔力デアル』


「えっ、うそ!、・・精霊が側に居るの?。凄いのねぇ」


「だれ?・・」


「そんなに警戒しないでぇ。子供に警戒されると傷つくのよ」


出会ってきた年頃のメイド達が そろってショタだった事も有り、命に危険は無くともこの手の女性に警戒するハルカだった。そう言えば、驚いて流していたが ハルカを坊やと呼ぶということは 彼女はハルカが男だと見破った事になる。

魔女の姿をしているくらいだし、その手の魔法を使う。あるいは 看破するスキルが使えるとも考えられる。


「その歳で魔法を変化させて使うなんて驚きだわぁ」


「魔法は他人に見せない・・困る」


「私は年上だしぃ色々な魔法知ってるわ。アドバイスくらいなら出来るわよ」


「!、・・たとえば?」


「そうねぇ・・じゃあ このファイヤーボール見てて」


そう言うと魔女は 手の上に作り出した火の玉を打ち出した。

見やすくする為なのか ゆっくりと飛んで行くと、いきなり細かく分散して広い場所に着弾した。


「面白いでしょ。少ない魔力で数多くの弱い敵にダメージを与えられるのよ」


「ふーん・・」


「えーっ、そんな つまらなそうな顔しないでぇ。

じゃあね。同じくファイアーボールだけどね、それっ」


彼女が火の玉を岩にぶつけると ピタリと岩に張り付き、溶けたバターが広がるように岩を包んでいった。


「どう?。少ない魔力で 大きな魔物に有効なのよ」


「そんなので良いなら練習なんてしてない。

巨大な相手を倒す方法を考えてるんだ。邪魔しないでよ、魔女のお姉さん」


ハルカは何故か少しイライラしていた。


「あっ、自己紹介してなかったわね。私の名前は アリスよ」


その姿で その名前は止めて欲しい。夢が壊れる・・。



「巨大な魔物を倒す方法が知りたいのね。それだけ 魔法を使いこなせる君なら難しく無いわよ。倒す相手の大小に関係なく基本は大体同じなのよ」


「えっ?」


年上(おねーさん)なんだから 色々知ってるのよ。聞きたい?」


「むぅ・・・・・・・・・聞きたい」


ハルカは地球という環境のせいで 誰にも教えられず自力で魔法を覚え、マンガやアニメ そして小説などから学んだイメージで多くの魔法を身に付けていた。


しかし、だからこそ基本的な魔法の発達から逸脱している。

魔法が当たり前に使われる世界に来ても ハルカの能力が突出していた為に その姿勢は何も変わっていなかった。今までは必要が無かったのだ。

魔法を改良しようとイメージした時に初めて基礎的な知識が必要になった事を感じていた。


「うんうん、良い子ねぇ。簡単に言うと、集束、粘着、転送が柱になるわ」


「集束と粘着は何となく分かるけど・・転送?」


「切り離して考えてはダメよ。必ずとは言わないけど、この三つはセットで使われる事が多いからね」


「・・?」


「順番に説明するわね。集束はそのままの意味で 大きな力を一点に集束して打ち込む事よ。例えばファイヤーボールを集束して使われるのがファイヤーランス あるいはフレイムランスで、どちらも破壊力は跳ね上がるわ」


「わかる・・」


「ただ、収束して破壊力が高まるほど命中率は下がる。フェンリルみたいに俊敏で強い相手には当てるだけで難しい。そこで、先ほど使った張り付く魔法を拡散させて数を当てる方法が生きてくるの。粘着した魔法が徐々にダメージを与えるわ。

ゴーレム系の硬い相手にも強い魔法を粘着させると効果的なのよ」


「拡散させても・・ 当たらないと思う」


「そこで転送ね。見てて」


お色気魔女アリスは火の玉を作り出すと すぐに消してしまう。

すると 突然離れた場所で拡散された炎が飛び出し 広い範囲を焼いていた。


「という感じで 途中の軌道を悟られないように転送するのよ」


「難しい・・」


「これ以上に難しい魔法使ってたじゃない。直ぐに出来るように成るわよ。

集束した魔法を転送したり、拘束する系統の魔法を粘着させて動きを抑えた後に 集束魔法を打ち込むなんて使い方も有るわ」


「転送の感覚がいまいち分からない・・」


「あー、それね。

 そうね・・あそこの木の幹のあたりを四角く別の空間とイメージして、その空間に手元の魔法を送り込む感じね」


「あっ・・」


アリスが示した木の幹が一瞬で消えてしまったように見えた。送り込まれた魔法がその空間だけに作用したのだろう。


「じゃあ 転送して ・・相手の体の中で燃やせば良いのか?」


「んー、残念。炎とか氷とかは 有る程度の空間が空いて無いと作動しないのよね」


「そか・・そんな甘くないか」


「基本はこんな感じね。

後は自分の使える魔法との相談で 魔物が倒せるかどうか考えないとダメよ」


「・・ありがとうアリス」


「参考になったら嬉しいわ。頑張ってね♡」

チュッ♡

「??」


キスされた。

やはりアリスもその手の人なのだろうか?


この世界に来て魔術師とは何度か出会ったが、魔法使いに会ったのは初めてだ。

彼女が同類意識を持っているのはその点なのかも知れない。


「ところで、お主 何の目的でハルカに近づいたにゃ。・・魔法使いがこれほどの知識を教えるなど異常なことにゃ。何を考えておる」


「ネコが喋った!。・・まぁいいわ、理由は簡単よ。仲間のハルカちゃんを応援したくなったのよ。同じ趣味の同胞が活躍してくれると嬉しいのよ。」


「意味が分からんにゃ」


「ネコには分からないわね。  そうよ、せっかくこれほど美しく生まれたのに・・女性以上に美しいのに、余計な物が付いているだけで女性扱いされないのよ。

同じ苦しみに耐えている可憐なハルカちゃんに手を貸して何が悪いのかしら」


「・・・にゃにゃにゃ!。お主、男なのか?」


「書類上はそう。でも、心は乙女なのよ」


「ハルカ、しっかりして。大丈夫?」


ハルカはオネェと同類にされたことを知って、ガックリと崩れ落ちていた。

マタ・オトコニ・キス・サレタ・・・・

忘れかけていた傷口がパックリと開いて黒い思い出が蘇る。


「こんな場所でお仲間に出会えるなんて嬉しかったからノリノリで教えてしまったわ。もう行かなくちゃならない時間だから、またね。今度ゆっくりガールズトークしましょうね」


不吉な言葉を残して魔女?アリスは転移して消えて行った。

この世界でも転移などは高度な魔法であり、使える者も限られていた。


まして、ハルカのように長距離を飛ぶなど驚愕の能力なのだ。

魔女(アリス)?もハルカから見えない場所に転移するだけで限界だった。



「ゲァアリス陛下・・」


「影か・・」


「調査は終了いたしました。フェルムスティア領主一行を襲撃した工作員3名、

内 一人は再起不能、二人は死亡いたしております。その全てが あの少年の魔法との事です」


「証拠は揃ったな・・他国にバカな襲撃を企てた者共を拘束せよ。我が国の理念を汚す国賊だ、生死は問わん」


「・・あの少年の処置はいかが致しましょう」


「異な事を聞く。

我が国は魔物の脅威に対抗するために魔法に長けた人間を集め、より強い能力者を育成する事をもって建国の理念とする。あれは千年に一人の逸材ぞ。

いずれ 大人に成ったら国に招待して種を落としてもらうも良し。だが、決して下手に手を出してはならぬぞ。私でも勝てぬ使い手だ、国が滅びてしまうからの」


「・・・・御意。では、失礼いたします」


影を使って転移する特殊な能力を持つ男は、現れた時と同じように影の中に溶け込んでいった。

リンリナル魔法王国 現国王ゲァアリス・フォア・リンリナルは心底楽しそうな顔であった。


若い内から卓越した魔法の使い手だった彼の周りには、優秀な子孫を残すべく巨大なハーレムが形成されていた。

次から次へと押し寄せる女性たちに辟易(へきえき)した彼は とうとう特殊な趣味(オネエ)に走ったのである。


自分以上の強大な存在を知った王様は その重い使命(子作り)をハルカに押し付け・・

もとい、引き継いでもらう事を思い浮かべて 自由を得た鳥のように晴れ晴れとした開放感に浸っていた。







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