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43、何の・・事かな?

精霊樹そのものを魔物除けの魔道具化したことで半径2百メートルが安全地帯になった。この世界において城壁の外に安全な公園など今までは有り得なかった。


それが作られただけで大変な偉業なのだが、そんな事には全く興味がない ハルカ達は少し騒がしくなった地上に転移で降りてきた。


「やはり・・ハルカさんの仕業でしたか」


「あれっ。えっと、何の・・事かな」


「まぁいいでしょう。詳しい事は後でお願いしますね。その様子では特に危険も無いようですし」


彼の中では すでにハルカがこの件の犯人と確信が得られたようだ。


フェレットの後ろには 数名の冒険者らしき男達が武装して控えている。

ギルドマスター直々に調査に来ていた事になる。


「ところで、先ほど上からアレが落ちてきたのですが、どう致しますか?」


「知らない・・どうして、かな?」


今も 氷の槍が刺さっている虫の頭と 羽根を開いたままの胴体が転がっている。

突然 巨大な虫の死骸が空から降って来た事で緊迫した空気になっていたのだ。

空気を自然に読む日本人のハルカは本能的にとぼけた。


「という事です。ただの落とし物ですので これは 皆さんの戦利品にして下さい」


「「「「おおーっ」」」」


「単なる調査依頼なのに 儲かったな」


「虫 触りたくないし、問題ない」 ぶつぶつ


虫の外郭は丈夫で厚さもあり 削りだして様々な道具の部品に加工される。

軽くて丈夫というプラスティックみたいな扱いがされている。

普通ならそれなりに倒し難い強敵なので希少で 値段もそこそこ高く買い取られる。


「調査は完了といたします。達成を証明しますので この場で解散としましょう」


「わかりました。俺たちはこいつを解体してから戻りますぜ」


「ご苦労様。確か今の買値は高かったはずですよ」


「おっ。ますます運が良いな、急ごうぜ」


冒険者たちは虫に駆け寄っていく。


ハルカは 自動収納の魔法をOFFにしておいて心底良かったと感じていた。

解体されていたとしてもアレには触りたくない。

あんなのに触れなくては冒険者が務まらないのであれば今後は別の生き方を考えなくてはならない。



「それではハルカさん、少し この辺を散歩しませんか」


「わかった。 ・・・で何が聞きたいの?」


最近 事有る毎に関わっているフェレットなので、多少は相手の考えている事が分かるようになったハルカだ。


「そうですね、一番 気になるのは 精霊樹(コレ)がここに有って 都に危険が増えないかですね」


「ここは安全だよ。・・ララムと遊びに来ると良い」


「えっ?。すみません、意味が分からないのですが・・」


「木の周りには 虫とか魔物が・・寄り付かないから 子供だけで来ても安全って事」


(木の周りに結界でも作ったのでしょうか?。 そんな気配は感じられませんが)

フェレットは理解に苦しむ。結界を張るにしても規模が大きすぎるのだ。

もし魔法で結界を張るにしても 範囲の大きさと比例して 構築するにはかなりの時間がかかるはずである。

これが、他の人間のセリフなら冗談で済ますだろう。



「私には何も感じ取れません。具体的に範囲を教えていただけますか?」


「えっと、あそこの木から あの岩まで。それから あの道の曲がり角から壁のあのあたりまで」


次々と示していく範囲は大きく、フェレットを驚かすものであるが、それ以上に城壁の広い範囲をカバーしている点に興味が引かれる。

話が本当ならば、その部分は都を魔物の脅威から二重に守っている事になる。


どちらにしても 都全体に影響のある事であり、領主に報告して判断を仰ぐしかない。


しばらくは 安全性の検証も必要だろう。

だが、安全が確認されたなら子供を外で遊ばせるのも悪くない。


フェレットが考え事を終えると、既にハルカは姿を消していた。




「飛べた。本当に飛べたね・・ノロ」


「どうして、いきなり飛べるようになるにゃ。おかしいにゃ」


ハルカはフェレットの遥か上空に浮いていた。

試しに杖を取り出して 魔法をイメージしたら浮いたのだ。


ノロが驚くのも無理は無い。


ロスティアだった頃、多くの教え子たちに指導したが 飛行が出来るのは ほんの僅かな人数で、しかも長い練習の後に成功したのだ。


勿論、成功したのは ハルカの魔力や制御能力が際立っているのも原因ではあるが、何より日本で飛行機に乗って飛んだ経験が有る事が大きい。魔法はイメージだ。

飛べる事に疑う気持ちが無く、重力という知識も有る。

それらを含めた上でイメージを作り上げ魔法を行使したのだ。


ロスティアのくれた杖は空間を安定させ乗りやすかった。

座りやすいと言った方が良いかもしれない。



早速 木の上から見えた海の方角に飛んでみる。

空間に包まれて飛んでいるので風が殆ど当たらず、寒さも変化が無かった。


「ハルカ、虫や魔物に狙われないように 気配を消していくにゃ。高度も上げたほうが良い」


「了解」



ハルカはすっかり童心に返って夏休みの子供のように大喜びで海を目指す。



*************************



ハルカが喜び勇んで海を目指したころ、フェルムスティアの都に一台の馬車が近づいていた。

御車をしている者は筋骨隆々で3メートル近い大きな体をしている。

場所が違えばオーガと間違われるかも知れない。


馬車の中には10名ほどの様々な人間が乗っていたが、一様に首輪をしていた。


門の衛兵は御車の迫力に 内心ビビリまくっているが、職務には忠実であった。



「どの様な用件でこの都に?。ここでは奴隷の売買は出来ないが」


「ああ、これが身分証だ。俺は奴隷商人じゃねぇよ」


「・・冒険者?。それにしては馬車の乗員が皆 首輪をしているようだが・・」


「そうだ、俺たちは首輪を外してもらう為に旅をしてきたんだ。そういう魔法使いが居ると聞いてな」


「そんな魔法使い知らないが・・問題は無いようだ。ようこそフェルムスティアへ」


「邪魔するぜ」


馬車は門を潜り抜けると 何度も道を尋ねて 仮の冒険者ギルドまで進んでいく。


御車の男がギルドの中に入るが 見知らぬ新入りに絡む テンプレなバカは居なかった。


見た目だけでも圧倒的強者なのは歴然だったからだ。




「人探しの依頼をしたい」


恐がる受付にギルド証を見せて安心させ、用件をきりだした。


「探す相手は、魔法使いの子供で 名前をハルカと言う」


驚いた受付の反応を見た男は 目的が早く終わりそうだと内心で大笑いしていた。



*******************




「海だ・・」


「海は久しぶりにゃ」


この世界にも海は存在していたようだ。


地球の構造と似ているのは不思議だが 同じような生き物が存在するのだ、自然環境が似ていても当たり前なのかも知れない。


ちょっとだけ海水を舐めてみる・・・ちゃんと塩水のようで安心した。

残念ながら岩場の海岸で 砂浜は近くに無かった。



海を覗き込もうとしたが、ピアが強い力で引き戻す。

珍しい行動に驚いたが 理由は直ぐに分かった。



海中からウネウネと黒い触手が伸びてきて獲物を探している。

気持ち悪さに鳥肌を立てたハルカだが、姿を見せた存在に対し 今度は逆に熱い視線を向けている。海から上がってきたのは巨大なウニだ。

大きさが ちょっとした平屋の一戸建ての家ほどもある。

海から出て来るなんてこの世界のウニはアクティヴなようだ。


本当に新鮮なウニは 臭みも無く濃厚でまろやかな美味しさがある。

海で取れたらその場で割ってオレンジ色の身を食べるのが最高に美味しい。

がぜん やる気が出たハルカだが、困ったことに気が付いた。

下手に倒すと 中の食べる部分が壊れてしまう。

炎系の魔法は 焼きウニになってしまうのでパス。


氷の槍では衝撃が強く、失敗すると逃げられそうだ。


パーン☆


ハルカがアレコレ悩んでいると ピアがあっさり風系の魔法で真っ二つにしていた。出来る子である。


ウニはいったん魔法で倉庫に収納して分離し 余計な内蔵とかを海に捨てた。


しかし、これが悪かった。

ウニのアラに引かれたのであろう 今度は巨大なカニが上がってきた。

まるでSF映画のようである。


だが、カニには遠慮する必要も無いので 頭上から火の玉を落とす。

焼けたら そのまま食べれるので むしろ好都合なのだ。


かにみそを食べるときに お酒が飲めないと思うと悲しいハルカである。


何やら美味しそうな匂いを漂わせ カニは こんがりと焼けていた。

こちらも収納すると ちゃんとミソも食材として分離され回収されている。


(この世界ではウニもカニも 硬い外側の部分が 素材として需要が有るらしいので持ち帰る事にする)


とりあえず、ウニの身を大皿にとりだして食べてみた。醤油とわさびが欲しかったが塩味でも最高に美味しかった。

今なら 腹いっぱいウニ丼が食べられるのに・・・ご飯が無い。


有るのはコンピニ弁当の中のご飯か、おにぎりのご飯しかない。

米を買い溜めしていなかった事を 心から後悔するハルカである。


美味しい食材が巨大なサイズで獲れる海。

宝箱を見つけたハルカは 上機嫌で今後の獲物を考えていた。





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