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28、ドロドロになってきておる

騒がしい一日が終わり やっと眠りについたハルカは 全身をくすぐられる感覚で目を覚ました。


「あら、目が覚めましたか」 うふふ


薄明かりの中 聞こえる声は侍女のフィルファナだ。


何時の間にか ハルカは素っ裸で、上に圧し掛かるフィルファナも同じである。


「何で・・」


「ふふっ、この前の借りを返してもらいますよ。

恐くなんてありません。静かにしてくださいね。痛くはしませんから。ハアハア」


フィルファナ お前もかぁー、と叫びたくなるハルカ。

この少女も レレスィと同類、つまり ショタだった。

ハルカは知らないが、この世界は思いのほか その手の女性が多い。


何故かと言えば、色々な理由が有るのだが まず 同年代の異性との出会いが少ない。


同じ年齢の子供が集まる日本のような一般人向けの学校がある訳ではない。

幼いうちは危険なので家から遠くには行かせてもらえず。

大人になり年頃になる頃には それぞれに働いているので尚更 出会いは少ない。


しかも、この世界の若い男性は魔物との戦いで死に易く少なくなり 必然的に男女の数が釣り合わなくなってくる。

残る男は脳筋の筋肉バカか 逆に全く戦えない 頼りない男の二種類が多くなる。

数少ない理想の男性には女性が群がり奪い合う。

やがて 無意識に欲求不満を抱える女性たちは 相手が年下だろうと 有望な男子を見ると青田買いするようになる。結果としてショタな性癖のメイドも多かった。

フィルファナも そんな女性の一人だ。


「ん!」


子供のハルカ相手に 大人のキスを本気でしてくる。

手は体を撫で回し 胸を押し付け興奮している。

逆レイプという事になるのだろうか。おまわりさーんな事件である。


ただし、フィルファナは知らなかった。

ハルカが日本でプロの女性たちに鍛えられ 女性の体をを知り尽くし、浮名を流した遊び人だった事を。




ひあぁぁぁぁっ


少しして 声に成らない絶叫が超音波のように広がり、静かにハルカの寝ていた部屋のドアが開く。


出てきたのは しっかり服を着用したハルカ。


ベッドの上には大満足の顔で 気絶しているフィルファナが寝ていた。


フィルファナは女性として魅力的だが いかんせん ハルカ自身が子供の体なので彼は何一つ楽しく無い。

鬱陶しくなったハルカは全力で女性の弱点を攻撃した。


妄想だけは大人になったフィルファナだが自分が攻められる想定はしていないし、

言うまでも無く耐性も無かった。

襲っていたはずのフィルファナは 何時の間にかハルカのテクニックに翻弄され、

一方的に攻められて人生で一番高い所から落ちて意識を失った。



体の汚れを落としたいハルカは 風呂に向かっていた。


だが、風呂には先客がいるようだ。

脱衣場には2人分の衣類が有り 中から色っぽい声が聞こえる。

ハルカは邪魔しないように静かにドアを閉めた。


フェレットがギルドから帰ってきたのだろう。

ハルカを見て男の子供が欲しくなった奥さんがその気に成ったらしい。

気の毒なギルドマスターに黙祷するハルカだった。



しかし、こうなると風呂は使えない。


ふと 考えて都の隣の湖を思い出した。

今の時間 水は冷たいだろうが最悪 自分の周りだけ 魔法で温めれば良いだろうと考えた。


だがしかし、その湖には 苦悶し 嘆き苦しむ精霊がいる。


『水ガ 淀ンデキタ。水底モ ドロドロ ニナッテキテオル。コノママデハ 真ニ腐ッタ湖ニナッテシマウ・・クチオシヤ』


そんな呪いの呪詛を吐きそうな精霊のもとに配下の妖精たちが報告に来た。{・・・・・・}


『人ガ近ヅイテ来テオルトナ。・・アレハ!、アノ時ノ ニックキ人ノ子。何用デ来ルカハ知ラヌガ、・・汚レタ水ニ引キズリ込ンデクレヨウカ』


清き湖の精霊さんは だんだん黒くなってきたようだ。




ハルカは目立たぬように 小さな明かりだけで足元を照らし 湖に近寄っていた。


しかし、近寄ると何か臭い。手で触ると水がドロドロしている。

これでは さすがに行水などできない。

それは困る。他の水場は ずっと遠くの川しか思いつかない。


ハルカは 欲求不満を打ち消すために魔力を集めだした。覚えて間もない浄化の魔法を使うためだ。だが 湖が大きくて 使うべき魔力の加減が分からない。


「夜中だし・・誰も見て無いから・・まぁいいか」と適当に魔法を構築していく。

やがて、ハルカの周りはキラキラと光りだし、膨大な魔力が魔法へと昇華して湖を満たしていった。


魔法は上手くいったらしい。そう・・ものすごく上手くできた。

先ほどまでの臭いも無く サラサラの水に大満足だ。これで目的が果たせるだろう。

ハルカは いそいそと服を脱ぎ水へと入っていく。


腰まで水に入り体を洗っていると 突然ハルカの周りの水面が 大粒の雨でも降っているように ピコピコ飛び上がりだした。


「・・んー・・何これ?」


『水ノ妖精ドモガ喜ンデオルノジャ。・・先ホドノ魔法ハ見事ジャ。今ハ以前ヨリモ清キ水ニナッテオル』


ハルカの前に 人の形をした水が浮き出て話しかけてきた。

また女が来た・・・ハルカは警戒した。


精霊には実体が存在しない。ナノデ 存在を示すために水で仮の姿を作り出した。

勿論 少し前までブーブー文句を言っていた湖の精霊である。


「妖精・・?見えない・・」


『見エヌ方ガ良イカモ知レヌ。ソナタノ周リニハ 普段カラ多クノ妖精ドモガ纏ワリ付イテオルカラノ、煩クテ大変ナ事ニナルゾ』


「・・なるほど」


『湖ノ水ヲ勝手ニ使ッタ事ハ忘レヨウ。ソノ上デ、一ツ頼ミガアル・・』


「・・ん?・・」


人型の水が近寄ってくる。

恐れないように配慮したのか 今はハルカの身長と同じくらいの子供の姿だ。

敵意が無いのはハルカにも分かるので 今は警戒はしていない。



『ソナタノ魔力ハ清ク、深ク、濃密デ甘イ。ワラワニソレヲ分ケテオクレ。

サスレバ、雨ヲ降ラセテ湖ノ水量ヲ元ニ戻シテ見セヨウゾ』


「ん・・何か知らないけど、いいよ」


『オオ、スマヌノ』

 

「どう・・やるの?」


『水デソナタヲ包ミ込ムカラ ソノ時少シバカリ魔力ヲ放出シテオクレ』


そっと 子供が抱き合うように精霊はハルカを包み込む。


その後、30分も掛からずに 都の上空には雨雲が渦を巻き 夏の巨大な入道雲のようになっていく。


優しい降り方ではあるが 大粒の雨が朝まで降り続き、次の朝には都の門を開いた衛兵が豊かな水量に戻った湖を見る事となる。



蜂の騒ぎが収まり、次の日ともなれば 昨日一日の損失分を埋めようと人々は精力的に動き出す。


都にはそんな人々が往来する広場が 数箇所存在している。

広場にはそれぞれに特徴があり 屋台などの出店も変ってくるので楽しめる場所だ。


朝早く 出店も開いていない広場のベンチにハルカとノロはいた。


ハルカはいい加減、他人に振り回されるのが煩わしくなっていた。

とは言っても他人の家に寝泊まりしていてはプライベートな時間など難しいのは当たり前だ。

今までは流されていたが今晩からは 自分で宿に泊まる事を心に誓うハルカだ。


今頃フェレットの家では幼女たちが「ハルカが居なくなった」と騒いでいるだろうが 知った事では無い。知り合ったばかりの子供に行動を左右されるいわれは無いのだ。



思えば この都に来てやっと一人で気楽にしている。


ハルカの手元には青く美しい杖がある。

重くも無く、寸法も今のハルカの身長には丁度良かった。

性能としてはノロがくれた国宝の杖が上なので 特大の魔法を使う時はそちら方が良い。しかし 普段 持ち歩くには この青い杖が最適となるだろう。



湖の精霊が上機嫌になり 湖の底にある神殿に奉納されていた杖をくれたのだ。

その神殿で祭られてるのが あの精霊なので問題は無いらしい。

勿論 単なる杖ではない。しっかり精霊の祝福などが付与された一品だ。

ともあれ、杖を装備した事で ハルカもやっと魔法使いらしくなってきた。



今居る広場は上流階級の高級な建物が並ぶ区域に近く 治安も良いので 変な人間にからまれる事もない。


朝ごはん代わりに 以前 屋台で買い溜めしていた物を食べている。

ネコと一緒にごはん・・年寄りくさいが ほのぼのと和む一時だ。



そんなハルカたちの側を通りかかった一人のメイドが立ち止まる。

一瞬、フィルファナかと思いギョッとしたが 知らない少女だ。


「ルカ・・さま」


「ほぇ?」


はっ、と我に返ったメイド少女は 涙を浮かべてハルカを胸に抱きしめていた。

それは転移でも使ったのかと思うほど素早く ほとんどタックルである。



「ああっ、またお会い出来るなんて、何とすばらしい」


「また・・ショタ?・・」


昨晩の襲撃ですっかり女性を警戒しているハルカは 逃れようと必死でジタバタする。しかし有ろう事か、少女は軽々とハルカを抱え上げ走り出してしまった。


慌てたノロは 何とかハルカにすがり付く。


害意が全く無いため 守護精霊の安全装置も働かず拘束されてしまった。


幸せな時間を壊された哀れなハルカは そのまま一際豪華な建物が立ち並ぶ地域へと拉致されていった。



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