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27、心 休まらない日

「・・・・・・・・」じーーーっ


「知らない・・幼女だ・・」


ハルカが目覚めると本気で知らない天井が見えた。


そして、上から覗き込んでいる 知らない子供と目が合う。

子供は驚いた後、ニパッと笑顔になり 何処かへ駆けて行った。


忙しい子供である。




「良かった。気が付かれましたか」


「なぜ・・フェレット?」


「ここは私の家です。ゆっくりしていてください」


冒険者ギルドマスターの家らしい。

フェレットの足元には先ほどの幼女がまとわり付いている。


「ああ、この子は私の娘でララムといいます。仲良くして下さいね」


ハルカの視線に気が付いたフェレットが紹介すると 恥ずかしそうに隠れてしまった。


しかし、娘?。言われて見ればフェレットは30近くに見える。

子供の1人や2人居ても何も不思議では無い。


そう言えば、ピアはどうしただろう。そうハルカが意識すると、自分の中で眠っているのが確認できた。


ネコのノロはハルカの足元で丸くなっている。


「フェレットの子・・コフェレット・・」


「ララムだよぅ」


ボフッとベッドの上にダイブする。退屈していたようだ。

ノロが飛び上がり ついで ハルカに気が付いて安心している。


「ハルカ・・。よろしくね」


「うん。よろしく、ハルカおねーちゃん」にこっ


おねーちゃん と呼ばれて 子供を騙している様な罪悪感。

そして、4歳くらいの幼女よりも滑舌が回らない 自分が悲しいハルカだった。




フェルムスティアの都は徐々に落ち着きを取り戻し、変らない日常を繰り返そうとしていた。

人々が落ち着き平成を取り戻してくると、その話題は当然のように 軍隊蜂襲来の時の不思議な出来事の話になっていった。


あの時、殆どの人の目は蜂の大群に向いていたが 恐怖で目を逸らした者達もいた。その中で 城壁に目を向けた者達は 自慢でもするかのように証言した。


「あの大爆発の少し前に、壁の上で キラキラと光った子供が踊っていた」


意外と多くの者達が その姿を目撃し 全員が同じ証言をしたため 無視できないものと成っていた。やがて話題は徐々に一人歩きをはじめ気が付くと一つの結論に達する。


「フェルムスティアは光の妖精に守護されている」


人の噂が一番のマスコミである世界において この結論が最も人々を安心させ 想像を絶する体験を受け入れさせる理由付けとなった。


「やれやれ、私ごときが悩む必要が無かったですね」


フェレットは人々の噂をまじえて 最終的な原因は不明として報告することとなる。

そして 視界を覆うほどの巨大な炎と 一度に半分になった湖の話は 長く都の語り草となっていく。




ドドドドドッ


「ハルカちゃん!」


他人の家を怒涛の勢いで駆けぬけるのは フルベーユ商会のお嬢さまフレネット。


気を利かせたギルドマスターが 「心配しているだろう」と連絡を入れていたのだ。


「どうして急に居なくなるのよ。心配したじゃない」


「・・・・だれ?」


ララムは驚いてハルカの後ろに隠れてしまう。

自分の家に 突然 知らない子供が乱入して来たのだから当然だ。

むしろ 泣き出さないだけでも 度胸が有ると言えるだろう。


「おはよう・・フレネット」


「もうお昼だもん。こんな時間までベッドで何してるのよ」


「ん・・遊んでた」


子供で無ければ 盛大に誤解を生みそうな会話であるが 勿論 色っぽい話ではない。

危険なため 外に出られず 暇を持て余したララムは必然的にハルカを遊び相手に指名する。

しかし ハルカは元々がオッサンで 子供の遊び相手などした事も無い。

加えて言うなら ロリコンでも無いので子供には関わりたくないくらいだ。


困ったハルカが亜空間倉庫をあさると 子供の頃 神社の縁日で手に入れた ヨーヨーや だるま倒し、おはじき などの懐かしいオモチャが有った。

ヨーヨーも 木製の古風な作りだったので問題なかろうと 幼女あいてに偉そうに遊び方を披露していた。大人げないとも言えるが それ位のほうが子供は目を輝かす。


怒り狂って不満をぶつけに来たフレネットも オモチャの数々を見てあっさりと遊びの軍門に下っていた。

護衛で付いてきた侍女のフィルファナは 子供らしいその姿を微笑ましい気持ちで見ていた。


ハルカ自身の年齢が10歳前後なので 別に不自然ではないのだが 子供との時間ばかり増えている事に言い知れない不満を抱く。


早く日本に居たときの他人に左右されない気楽な生活がしたいのだった。


「ハルカちゃん、朝も食べて無いし お腹減ったでしょう。お昼の用意が出来ましたよ。皆さんもどうぞ」


いかにも母親という優しい声で呼びに来たのは フェレットの妻 ララリアさん。

氷のような男に何故?と思わせるくらい おっとりとして それでいて美人である。

日本でこれほどのリア充なら 各所から爆発の呪いが降り注ぐ事だろう。




**************




ハルカがひと時の安息を得ている頃、苦境に立たされている者もいた。


『我ガ管理スル湖ヲ荒ラストハ、良イ度胸ノ人間モ居タモノヨノゥ。水ノ妖精ドモモ機嫌ガ悪クテノゥ。ハテ、ドウシテクレヨウカノゥ』


『アノ者ハ別ニ湖ヲ荒ラス目的デ魔法ヲ使ッタノデハ無イゾ。ソレニ 町ノ人間ドモガ死ニ絶エレバ 別ノ不都合モ有ロウ』


『ツモリガ無クトモ荒レタモノハ変ラヌ。水ガ減ラサレタ上ニ、魔物ノ焼ケタ灰ガ大量ニ降リ注ギオッタ。コノママデハ水ガ腐ッテシマウデハナイカ』


ピアの守りに付いている精霊は 朝の一件で湖を守る精霊に糾弾されていた。



*************************



平和な昼食が終わる頃 女性陣が大喜びしていた。

ハルカの中で爆睡し 満腹になったピアが顕現してきたのだ。


フレネットとフィルファナの2人は既に見知っていたが ララムはピアがハルカと契約した妖精だと聞くと 目を輝かせた。ピアの着ている服のデザインも彼女達の琴線に触れ 大人気となった。


勿論 妖精では無いのだが、まさか本当の事も言えないのでノロが誤魔化したのである。


いい加減 子供の相手にウンザリして逃げたいハルカだが 自身も子供扱いされている為「外は危険だから」と出してもらえなかった。トホホである。


この世界 子供どうしで遊ぶ機会が意外と少ないらしく 思いがけず子供が集まった事で フレネット8歳、ララム4歳の2人は大満足で遊びまくった。


巻き込まれたハルカはヘトヘトになり ピアも最初は遊んでいたが 今はハルカの中に避難している。小さな子供が全力で遊ぶときのエネルギーは凄いのだ。



そして、夕方になると別の騒ぎに変化していた。


「ハルカはうちのお客さんなのーっ。一緒に行くの」


「やーっ。ハルカいっちゃやーっ」


子供に有りがちなオモチャ?の取り合いに移行していた。


何処で人生を間違えたんだ、と真剣に考え出したハルカである。




「それでは、私は一度もどって 旦那様と奥様にお知らせしてまいります。

お泊りがフェレット様のお屋敷であれば 問題無く許可されるものと思われます」


結局、折衷案として フレネットも泊り込む形となった。

フェレットは事後処理で忙しく ギルドにつめていたので寂しいララムは大喜びだ。



ハルカの心労はまだまだ続く。


フェレットの家にも風呂が有ったのだ。

しかも 商館よりも広い風呂で 哀れにもハルカはまたセクハラを受けることとなる。

特に 男の子が欲しかったララムの母親 ララリアの喜びはすさまじく ハルカは最早 人形のように無抵抗となっていた。

すっかり開き直ったハルカは 夜の繁華街に遊びに来たと強引に思う事にした。

そう考えれば 美人との入浴はなかなか悪くないセッティングである。


ララリアも 侍女のフィルファナも若く美しい女性で スタイルも申し分ない。

何の反応も無い自分の体が残念だが 「ロリが居るので どのみち不埒な事は何も出来ないし 」と諦める事にした。


悪い事ばかりでは無かった。

ハルカが男子と分かったお陰で 「一緒に寝る」と

ゴネた幼女2人とは別の部屋にしてもらえた。


この日、ハルカの心が安らいだのは一人ベッドに入ってからであった。





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