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24、ハルカ・・これ何?

ハルカは ほぼ強制的にフルベーユ商会の商館まで連行された。

自動防衛システムたる守護精霊が動かないのなら 害意は無いのだろう。


叱られるのが怖いフレネットが 助けてとばかりにハルカを家に誘うので余計に逃げられなかった。


そして、もう一つ。


「私の家にはお風呂が有るのよ。お爺ちゃんの趣味なんだけど、とっても気持ちいいわよ」


「おー」


風呂で乗せられたのが運の尽きであった。

エサで釣り上げられた哀れな(ハルカ)は用意が出来るまで 取りあえず客間で休ませてもらう。



『風呂デスカ・・ピア様ニハ必要アリマセンシ、服ノヨウニ見エテイルノモ体ノ一部ナノデ脱グ事モシマセン』


「じゃあ、どうしよう。食事の時間まで待っててもらうのも可愛そうな気がする」


「ハルカ、どうしたにゃ。普通に話してるが」


「身体強化をすると少しの間だけ普通に話せるんだ。アゴがもう少し強くなれば話せるようになる証拠かな」


ミルチルに身体強化の魔法を掛けてもらった時に気が付いた事だ。それならば 継続して魔法を使えば良さそうなものだが 強化していても肉体が付いていけない。

具体的にはアゴが疲れて動けなくなる。



『ピア様ハ食事モ必要アリマセンノデ、ムシロ眠ラレタ方ガ最適カト思ワレマス』


「1人で寝せておくのか・・守りも堅いし大丈夫だけど」


『ピア様ノ寝床ハ ハルカ ノ中ニナリマス。魔力ニ包マレテ糧トサレマスノデ』


「へー。それはどうすれは良いんだ?」


『召喚ヲ解除スルヨウニ念ジレバ シカルベキ場所ニ落チ着カレマショウ』


「本当に消えたにゃ。ハルカの側に居ると 新しい知識を次々知る事が出来て幸せにゃ」


ハルカは何気なく情報交換しているだけなのだが その情報自体がこの世界に於いてとんでもない新発見ばかりなのだ。


特にノロを驚かせたのは 精霊樹とは本当に精霊が宿り森を守っている姿という事実だ。

タマゴが木の中に有ったのは 古参の強い精霊の魔力に包まれる事で強く育てる為である。


そんな精霊の習性を 何故あの貴族が知っていたのかは謎であるが 一般的には誰も知らないはずの知識だった。



「ハルカ様、お風呂の用意が整いましたので ご案内いたします」


「ネコも・・いいの?」


「はい、許可は得ているとのことです」


今はフィルファナとは別のメイドさんが案内してくれている。

このメイドさんも一曲在りそうな危険な雰囲気を感じる。

子供のフレネットが少しくらいの事で動じないのは沢山の特別な人間に揉まれているからだろうか?。



「待ってたわ。早く入りましょう」


「えっ!」


脱衣場にはフレネットとフィルファナが待っていた。全裸で。


「えと、今日は・・やめる」


「もぅ 何 恥ずかしがってるの。色々有ったし汚れてるよ」


「お嬢様の恩人のお背中を流すのも仕事でございます」


「まって・・やめぇ」


単に恥ずかしがっていると思う二人は 喜々としてハルカをひん剥いた。



「えっ!」


「あら・・まぁ♡」


「だから・・止めろと・・」


心がオッサンだろうと、遊び慣れていようと、恥ずかしい時は恥ずかしいものだ。


意識しなければ 子供であるし 大した事でも無いのだが 変に前世の道徳観念が有るため意識してしまう。


そんなハルカの葛藤をフレネットの言葉は消し去ってくれる。


「ハルカ・・これ何?。ひょっとして病気なの?」


「知らない・・の?」


フレネットは本来の好奇心旺盛な性格も相まって ハルカの男の子をガン見している。今にも触ってきそうな雰囲気である。フィルファナに視線を向けると 複雑な顔で苦笑いしている。当然だが彼女は知っている、だからこそ対処にも困っている。


ハルカにとっても悲鳴を上げて騒がれるのも困るが これはこれで対応に苦慮する。


「フレネット様、これは病気ではありませんよ。ハルカ様が男の子であるという印です。反対に女の子は何も付いていませんが 別のものがあります。

そして私のように大人に成ると胸が出てくるのです」


フィルファナはこの期を利用して フレネットに簡単な性教育をする気らしい。

というか簡単でなくては困る。


「そうなの・・知らなかった」


「ふふっ。良いのですよ。今はそれだけ分かっていれば。

他の事は必要になったら教えて差し上げますからね」


「そうね。寒いし、早く入りましょう」


「う、・・うん」


変に思われないなら ハルカもそれに合わせて流す事にした。


だが、侍女フィルファナの言葉は そんな心の平安を吹っ飛ばす。



「ハルカ様は・・そういう趣味なのですね」ぼそっ


「ちがう・・」


必死に否定するハルカを見るフィルファナは心底楽しそうだ。

小悪魔な性格をしているのだろう。フレネットが恐れる理由が分かる気がする。


風呂は日本式とは少し違っている。

湯舟を満たすほどのお湯を用意するのは大変なのだろう。

洗い場で体を洗うのがメインで 足湯で温まるタイプのお風呂だ。

それでも お湯をあびて汚れを流せるというのは 拭くだけとは全く違うものだ。




*****************




その頃 領主邸ではギルドマスターによる事件の経過報告がなされていた。


ギルドは領主の配下では無いが 事が都全てに関わるだけに 些細な立場の問題では無くなっていた。


「なるほど・・深刻な事態であるな」


「幸いと申しましょうか、日が落ちる時間帯でありましたため 今直ぐ押し寄せては来ません。あの魔物は何故か夜には動かないと記録されております」


「ささやかな時間ではあるがな。夜に身動きが取りにくいのは我々も同じだ、とりあえず 地下の避難部屋が有る者には一日入ってもらい 連絡を待って出るように伝えねばなるまい。しかし 貧しい者達は逃げるより道は無いか・・」


「はい。残念ながら・・。 都市の機能自体にも甚大な被害が出ると思われます」


巨大な蜂が押し寄せれば 建物などインフラに与える被害も深刻になる。蜂は狂乱状態と同じで攻撃場所すべてに被害が出る。無論 動く生き物など食い尽くされる。

蜂が立ち去ったとしても 後には彼らの死骸が散乱し 撤去するだけで大変な労力を使うだろう。最悪の場合 人が生き延びたとしても都市は再建不可能になりかねない。



「件の男爵は 私の名前で国の全てに手配をしておく。見つけ次第 殺害も許可せねばなるまい」


「亡命を受け入れた相手に仇を成すとは・・魔物以下の男です」


「今後は亡命許可も相手を見て考えねばなるまいな。魔法王国の貴族には自分中心の我が侭な者が多いらしい。肝に銘じて置くとしよう」


「それでは 私は早速 成すべき仕事にかかるとします。

パニックにならない様 避難誘導するのは骨が折れますので」


「うむ。頼んだぞ。こちらは地下を持つ者達に通達するとしよう。今夜は寝られんな・・」


ギルドマスターは地位に媚びる事は一切せず 最低限の礼節を済ませると足早に館を後にした。


領主もそのような男だからこそ信頼し 普段は一切関わる事も無い。


「お父さま・・。今のお話は・・」


「なんだ ララレィリア 聞いてたのか。いかんぞ 盗み聞きは」


「ごめんなさい。お父さま、無茶はしないでくださいね」


「ああ 勿論だ。用事が終わったら皆と一緒に地下に入るさ。ララは落ち着いてるけど 恐くは無いのかい?」


「だって きっと妖精のルカが守ってくれるもの。恐いなんて無いよ」


「ははは、すっかりララの守護妖精にされてしまったね」


こんな時は自分も妖精に頼んでみたい気分になる。


領主フランベルト・ルク・フェルムスティアは娘に複雑な笑顔を見せるのだった。



**********************



その頃 妖精にされてしまったハルカは・・・


「きゃはは、・・くすぐった・・・やめ・・」


微妙な地獄を味わっていた。


事の発端は 風呂に入るということで、うっかり 何時もの銭湯セットを取り出してしまった事にある。

たまに銭湯にも行っていたので 亜空間倉庫に常に入れていたのだ。

石鹸、シャンプー、あかすり、フェイスタオルなど 珍しくもないものだ。


ただし 異世界では違った。


「こ、これは何ですか?。ハルカ様」


「ん?・・石鹸」


「信じられない。うちのより上等な石鹸。しかも 良い匂いする」


「こちらのキレイな入れ物に入っている水?は何でございますか?」


「・・シャンプー」


「しゃんぷう・・とは いったい」


「えと・・髪の毛を洗う・・石鹸」


「「へぇーー、」」


この時になって 取り出してしまった自分の迂闊さに気が付いたハルカだが もはや後の祭りである。


「こちらの気持ちの良い肌触りの布は 何に使うのでございますか?」


「なにって・・体を洗うのに・・使う」


ハルカは躊躇い無く手ぬぐいをお湯で濡らし 石鹸を泡立てていく。

女性二人はそれを見て愕然とする。


何故なら 見た事も無い一級品の布を使い捨てのように手荒に扱っている と見えるからだ。


タオル生地のように糸がプクプクと迫り出して柔らかい手触りを与えるなど 手作りではとんでもない技術が必要となるだろう。ほとんど不可能に近いと言える。

文明のギャップによる衝撃など 無頓着なハルカが気付くはずもなく 何時ものように体を洗い出す。


精神的に疲れるので早く済ませて休みたかったのだ。


「は は ハルカ様、それは私の役目です」


あわてたフィルファナがハルカからタオルを奪って仕事をしようとする。

当然ハルカは抵抗するが 悲しいかな子供の力では負けてしまう。

モコモコとあわ立つ手ぬぐいに感激したフィルファナはハルカの全身を洗い出した。


子供の頃は感覚が敏感なのか 他人に触られると とにかく くすぐったいものだ。

笑い転げてジタバタしていると、有ろう事かフレネットまで参戦し 面白がって素手でハルカを洗い出した。


特に一部分を念入りに。


セクハラと くすぐりの刑という拷問を受けたハルカが疲れ果て 部屋に帰ってノビていたのは無理も無い事だった。





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