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その後 1、 恋するハルト

久しぶりに見てみたら 完結した後で沢山の方が見に来てくれたようで

大変に驚きました。そして、ありがとうございます。

感謝を込めて続編を二回に分けてお届けします。

ゴッ☆


「てっ!」


「ボーッとしてたら危ないじゃない。しっかりしてよ ハルト」


「杖で殴るなよ。それ やたらと痛いんだぞ」


王都フェルムスティアから海に向かう街道は魔物が徘徊する広大な森を突っ切っているが不思議と道には魔物が近寄ってこない。

その為 本来は森の奥でしか手に入らない貴重な薬草などが 駆け出しの冒険者でも見つかる可能性が有った。


当然 多くの人々が森に入る事となるのだが 見つかったのは薬草だけでは無い。

いわゆるダンジョンと言われる不思議な大洞窟が発見されたのである。

内部には危険な魔物も居るが そこから得られる素材は貴重なものであり、運が良ければ一攫千金も夢ではない。

ダンジョンは他にも国内に何箇所か存在が確認されているが、都から比較的近くに見つかった事で その経済効果は計り知れず、冒険者に夢と危険を与える誘蛾灯となっている。


そして シェアラの子孫であるハルトのパーティも同じく この不思議な洞窟の中を探索していた。

獣人でアタッカーのハルト、人族で魔術師と回復役をこなす優秀な後方支援の紅一点 レアリリス、そして褐色の肌で盾役の2メートルを超える大男 ハック。

この三人がハルトのパーティである。


「今のハルトの顔は だらしなくて気持ち悪いわよ」


「何だよ・・んな事言われたって、自分の顔なんて見たこと無いからワカンネーよ」


「女の子を見る時のゴブリンみたい」


「なんだとー」


「ぷっ、まぁ、気持ちは分かるけど・・、

こんな気の抜けた所をオヤジたちに見られたら地獄の特訓のやり直しさせられるぜ」


「うっ、それは・・」


幼馴染でもある3人は優秀な冒険者である親を見て育ち、当然のように冒険者になり 当然のようにパーティを組んでいた。祖父母から読み書きは勿論、剣術や体術まで仕込まれて育った3人は その気になれば様々な人生の選択肢も有ったのだが、そんなものは彼らの眼中に無かった。

特にレアリリスなどは保有魔力も高く 今直ぐにでも宮廷魔術師に成れるほどの逸材で有るが、彼女もそんなエリートコースを選ばなかった。


「その角を曲がった先に反応が三つ、たぶんオークだわ」


「「おう」」


既に阿吽の呼吸で連携が取れている3人は、まず盾役のハックが飛び出し魔物の注意を一身に引き付ける。

その一瞬でハルトは死角をついた低い姿勢で魔物に近づき 足を切り裂くことで動きを封じ 勝負が付いてしまう。

本来はレアリリスが支援魔法や攻撃魔法を使うのだが、オーク程度が相手ならそれも必要では無かった。


ハルトは13歳、レアリリスとハックも14歳と まだ子供と言える年齢でありながら破格の戦闘力をもっている。

ただし、今日のハルトは いつものような鋭い動きが感じられない。


「ハルト・・いい加減に頭の中から愛しの妖精ちゃんを切り離して 探索に集中してくれないかしら?」


「なっ、リリス。おまえ何を・・」


「妄想は宿に帰ってからにしなさいって言ってるのよ」


口喧嘩しながらでも倒したオークから魔石を抜き取る作業を止めない所はさすがである。


「妄想なんかしてねーよ。現に今だってそこに彼女が見え・・・えっ?」


「「えっ!」」


ハルトが指差す先には先日のコッケー襲来の時、飛竜に乗っていた黒髪の少女が微笑んでいた。


幻覚?

レアリリスとハックは同じ疑問を持った。

(相手が妖精ならどこに居ても不思議では無いが、だからこそ何故こんな場所に居るのか?本物なのか?)

2人は最大級の警戒をして武器に手をかけた。


少女は見た目通りの子供の仕草で手を振り

「こちらに来い」と合図をしている。

それを見たハルトは まるでセイレーンに誘われる水夫のように 何のためらいも無く彼女の方に走り出す。


「もぅ、あのバカぁ」


ちょうどオークから魔石の回収が終わった事もあって2人もハルトの後を追いかけていく。

レアリリスは走りながら自分たちに身体強化の魔法を施す。そうでもしないと 本気で走るハルトには到底追いつけないからだ。ハックはしんがりを務め 後方を警戒しながら後を追っていく。


(おかしいわね・・こんだけ走ってるのに魔物とのエンカウントが一度も無いわ)


「気が付いたか?リリス。さっきから足元に沢山の魔石が落ちてるぜ。大きいのだけ拾ってきたが もう腰の袋が一杯になった。この回廊の魔物は殲滅させられてるらしい」


「まさか、それって・・」


「あぁ、桁違いの強い魔物が徘徊しているか、それとも あの子が殲滅したか・・だな」


「後者に一票入れたいわね・・あっ、大きいの見つけた♡」


高速で走りながらも喜々として魔石を拾うあたりは彼女らしい。

3人は かなりの距離を走りぬけ、何度か階段も下りていた。

レアリリスが地図作成の魔法を使ってなければ 道に迷っていただろう。

地図の無い迷宮の中を走って行くなど自殺行為である。

それが親にバレたハルトが地獄の冒険者特訓を受けたのは後のお話。


地図が15階を示す場所でハルト達は立ち止まっていた。


「「「・・・・・・・・・・・」」」


「ねぇ・・これって」


「ああ、たぶんな」


目の前には 薄く光を帯びている大きな箱が鎮座している。


「これが宝箱なのね・・大きい。山盛りの金貨だったらいいね」


レアリリスの目はお金マークが張り付いているように輝いている。それはハルトもハックも同じようなもので、この瞬間にあこがれて冒険者をしているようなものだ。

ハックが自慢の力でフタを上げると・・


「「「えっ?」」」


山盛りの金貨・・どころか何も無かった。

いや、


箱の底に何か落ちている。


「これって・・ポーションか?、やけにチッコイけど。

それと こっちは小さな袋?。財布にするには大きいし、何か入れるには小さいし 微妙な大きさだな。大きな宝箱なのに中身はショボイお宝だ」


「ばっ、ばばばかーっ。あんた達、それが何か分からないの?」


「どうしたんだ?リリス」


「その袋、アイテム袋よ。しかも鑑定には最高品質って出てるわ。国宝級のお宝なのよーーー」


「「!。 マジ?」」


「そのポーションも とんでもない物よ。


『精霊の秘薬』って・・物語に出てくるアレなの」


「「なにーーーっ」」


普通に市販されているポーションが持ち歩くのが煩わしくなる大きさと重さなのに比べて、出てきた物は片手で握って隠れるほど小さくて軽い。ところがその効き目は 市販のソレに比べものにならないほど高く、万病の薬とさえ言われていた。当然 売ろうとしても値段など付けられず、手にした者達は誰にも知られないように秘匿することを強いられている。そんな とんでもない小瓶が三本も入っていた。

箱一杯の金貨など問題にならない激レアのお宝だった。


「袋はハックが持ち歩いて死守してちょうだい。ハルトだと落としそうだし、私だといきなり力ずくで襲われたら奪われてしまうから。勿論 アイテム袋なのは絶対に秘密よ」


「お、おぅ。わかった」


「ポーションは丁度良いから一本ずつ持ち歩きましょう。命に危険が有ったら迷わずに使うのよ」


「・・・リリスよぅ」


「何?ハック。不満なの」


「いや、不満と言うかな、・・・。

この前の『妖精の菓子』を手に入れた時も思ったんだが、コレ売れば一生遊んで暮らせるぞ」


「嫌よ。そんなお宝だからこそ自分で使うんじゃないの。特に、あの美味しいお菓子は絶対に誰にも上げないわ。何で わざわざ美味しい物をお金に代えて その後ずーーっとマズイ物を食べるのよ。あれは私の為に有るのよ」


貧乏性な と言うより冒険者らしい考え方のハックと違い リリスはお姫様のように高貴な嗜好をしていた。


ハックは「宝箱そのものも高価に違い無い」と思い 動かそうとするが、迷宮に張り付いているのか全く動くことは無かった。


「ハルトもそれで良いわよね。・・・ハルト?」


ハルトの見つめる先には 宝物以上に惹かれる存在が手を振っていた。どうやら妖精は彼らを宝箱へ導いた訳では無いらしい。

今度は2人も文句を言わずハルトの後を付いていく。

心の何処かに「次のお宝♡」という想いが有るのは否定できない。




「えっ、これって?」


「どういう事だ? こんな場所に」


またもや3人は立ち尽くしていた。

あの妖精が彼らを呼び寄せたのは この為だろう。

目の前に10歳前後であろう少女が倒れていた。

宝箱とは別の意味で激レアな存在ではある。

少女は一応の装備は身に付けているが、どう見ても こんな深い場所まで来る様な姿ではない。

装備の下などヒラヒラのドレスなのだ。


「大丈夫よ、気を失っているだけだわ」


「どうする・・って 言うまでも無いか」


「ハック、この子を背負ってくれ。魔物が出て来ても 高さが有れば この子がケガをする確率が低くなる」


「いいぜ。ハルトも調子を取り戻したようだしな。護衛たのむぜ」


「魔力ギリギリの所まで転移ゲートを開くわ。後は任せたわよハルト」


「ん、わかった」


リリスは特殊な転移の魔法を使う。

光と影の狭間を利用するそれは 彼女の魔力をもってしても1日に一度しか使えないコストの高い魔法であった。


ゲートを抜けると迷宮の入り口を示す光が見えていた。

このあたりに居る魔物は弱いので心配は無い。

ただし、洞窟の外には多くの気配がする。

魔物の気配では無い。



だからこそ油断ができない。


一番危ない敵は人間なのだ。


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