03
ブックマークをもらってる!
やる気がでます。ありがとうございます。
その勢いで描き上げた03。
新キャラ登場。
「だぁぁぁかぁぁぁらぁぁぁ!」
質素な役所にケイトの声が響き渡る。
「言ってるでしょ?これからの時代はスパイの時代なの。分かる?」
「ですから、そういうのは然るべき機関を通してですね」
「あなたホントに頭堅いわね。話も聞かずに門前払いってどういう了見なのよ」
私たちがここに来たのは、言うまでもなくこの事業の売り込みのためだ。
一時間前、私たちは事業の宣伝方法について話し合っていた。
「まず、わたし達の活動を知ってもらう必要があるわよね。どうする?宣伝広告でも出そうかしら。スパイの力を貸します、って」
「普通の人はスパイを必要とはしませんよ」
「あ、そうだよね」
「まず、国の機関に売り込む必要がありますね」
「なら今日が良いわ」
食い気味にケイトは言う。
「どうしてです」
「今日はこの街、サウサンプトンに都市部のお偉いさんが来るのよ。彼は蒸気戦車の前線配備を推し進めたイギリスの英雄よ。新しくて革命的なものが好きなの。きっとこの事業を気にいると思うわ」
「彼はどこに」
「サウサンプトン司令部に彼が来るはずよ」
サウサンプトンに司令部。そのことについては聞かなくても説明してくれた。
「イギリスが強い国になってから、司令部の数は大幅に増えたわ。サウサンプトンどころか、今やほとんどの港の近くに司令部があるの」
つまり、イギリスは海岸線の警備を強化した訳だ。軍事的に強い国になるということは、それだけ敵も増える。スパイの密入国を防ぐというのが目的だと私は推測する。
「しかし、彼がそれだけの英雄なら、それなりの護衛はいるのでしょう」
私は疑問をぶつけてみる。それだけ護衛されている人物に、聞きなれない事業の提案をするのは少し無理がある。
「いるでしょうね。彼の物言いは敵を作りやすいと思うから。何度か暗殺されかけたって。まあ、それでも彼は護衛を鬱陶しがってるらしいけど」
どうも彼は、新政策を推し進める上で「昔の文化なんぞ糞食らえだ」と演説で言い放ったらしく、賛否両論あったらしい。そのせいで一部から反感を買っているということだ。
「彼の興味を引ければ……。人物像を組み立ててみたのですが、恐らく騒ぎが起きれば寄ってくると思うんです」
「それなら任せて」
そういうとケイトは飛び出して行った。
そして、今に至る。
大声で叫ぶケイトに駆け寄り、止めさせる。
「ケイトさん。さすがに方法があるでしょう」
「何よ。わたしはこのカタブツに腹が立って、こうやってねぇ!」
「ですから、然るべき機関を……」
「うるさい!」
ケイトは一蹴する。この女性は売り込む気があるのだろうか。
「ふむ、何やら騒がしいな。どうしたね」
「少将!」
受付の青年の顔が明るくなる。奥の扉から、パイプを持ち、立派な口髭の長身な男が現れた。
「この方々が何やら商売の話を……。私は然るべき機関を通してくださいと申しているのですが……。」
「機械のようなマニュアル道理の対応ではいけないな。何のための人間だ。もっと柔軟に対応したまえよ、君」
男はわたし達に向き直り、
「我々の機関のものが失礼した。申し訳ない」
「あなたは」
「申し遅れた。我輩はアーサー・フォークス。少将だ。商売の話、と聞いたが簡潔に内容をご説明願えるかね」
この男が蒸気戦車を配備した人物。イギリスを変えた立役者。
その問いについてはケイトに説明させるわけにはいかない。
「民間の、スパイ派遣会社です」
「ふむ、興味がある。詳しく話をお聞かせ願いたい」
私はフォークスの眼光が鋭くなったのを感じた。