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物語の同一性


 さて、物語の同一性について。


 多くの物語には時間の流れと、複数の登場人物が存在します。


 桃太郎では、おじいさんとおばあさんが桃を拾った時から鬼退治して桃太郎が帰ってくるまでの期間。

 じじい、ばばあ、桃太郎、犬猿雉、鬼が登場人物です。


 別に桃太郎はこんなお話でもいいんです。


『大きな桃が川を流れていたよ。


 完』


 時間も流れていないし、登場人物も存在しない。事実(一般には桃太郎はフィックションと伝えれられているので事実ではないのですが……)を述べているだけ。


 ただ、大きな桃が川を流れているだけの光景を述べただけでは、人は納得しません。

 だからどうした? で終わります。

 なので、時の流れを追加します。


 時が流れると、おばあさんが桃を発見します。桃太郎はそこから始まってもいいわけです。

 しかし、様式美というか、テンプレートというか、昔話は『昔々あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました』と事実を語るところからスタートします。


 これが物語の修飾です。修飾には2種類あって、より深い興味を惹くための修飾と、疑問を解消するための修飾とその中間のものがあると思います。


『昔々あるところに~』の一節が無いと、人はおばあさんは一人暮らしだったの? 何時の時代? と疑問を感じて不安になるでしょう。

 ですのでそれを解消するために、『昔々あるところに~』という修飾がなされているのです。


 そして桃を拾って家に帰って割ると桃太郎が生まれた。という話の流れ。

 これが無いともはや桃太郎ではありませんが、これは興味を惹くための修飾。

 物語の中で時間を経過させ、次々と興味を惹くための修飾を行うことで物語は膨らんでいきます。




 では、桃太郎という物語。これが桃太郎であるための最重要要件はなんでしょう?

 タイトルが『桃太郎』なんですから、『桃太郎』の存在ですよね?


 別に桃から生まれなくたって、おじいさんとおばあさんに拾われなくたって、鬼退治をしなくても、よいわけです。


『サラリーマン金太郎』なんて漫画がありますが、そこにまさかり担いだ金太郎は登場しません。別の金太郎が登場します。


 ごく一般的理解の桃太郎を、別の名前でタイトリングすると、


『桃から生まれておじいさんとおばあさんに拾われた俺が、キビ団子で犬猿雉を手なづけて鬼退治をする件』


 とかになります。桃太郎というお話は多くの人に知られ過ぎているので、これを一歩でも外れると『桃太郎』じゃない! とか言われます。

 でも、桃から生まれたのではなく、桃を食べて若返ったおばあさんが桃太郎を生んだなどというバリエーションもあるんですよ。


 想像してみてください。100年後の世界。

 例えば、ある絵本作家がたまたま、おばあさんが若返るバージョンの桃太郎を描いて出版したとします。

 それが爆発的にヒットします。その時代に子供だった人々は、桃から生まれたバージョンよりも、おばあさんが若返ったバージョンの桃太郎と接する機会が増えます。

 そして、その人々が大人になった時に語られるのは、そっちのバージョンの桃太郎です。


 そして時が経てば……。

 桃から生まれたバージョンは、片隅に追いやられてしまうでしょう。

 一部の人にはこういわれるはずです。

「桃から生まれたなんて桃太郎じゃない!」と。


 新バージョン(といっても本来はそっちが古かったりするのでしょうけど)の桃太郎にタイトルをつけてあげるとすると、


『桃を食べて若返ったおばあさんから生まれた俺が、キビ団子で犬猿雉を手なづけて鬼退治をする件』


 になるわけです。


 さて、そこまで行けば、おのずと答えが見えてきます。『桃太郎』の限界点。


『宇宙コロニーに住んでいた俺がガンダムに乗り込んで活躍する件』


 は、今のところ桃太郎ではありませんが、その『俺』が桃太郎であれば、これも立派な桃太郎です。


 一般的な理解であれば、その俺は『アムロ・レイ』であり、乗っているモビルスーツの名称がガンダムなので、機動戦士ガンダムという作品名だと認識されていますが。


 例えば、桃を拾ったおばあさんが、桃から生まれたとかなんだとか関係なしに、生まれた子供に『機動戦士ガンダム』と言う名前を付けたとすると、その物語は『桃太郎』ではなしに、『機動戦士ガンダム』という名称になるでしょう。


 なんだかよくわからなくなりましたが、そういうことです。

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