第二話 過去
「君は、誰だ……っ!?」
恐ろしいものでも見たかのように、慎也の顔は強張る。
彼女の機械的な表情と音声に、慎也は感じたことのない恐怖を感じていた。
一方、そんな慎也とは裏腹に、彼女は涼しい顔をしていた。
その表情はやはり機械的に見える。
しかし表情以外は至って普通の外見で、少し幼い顔立ちに
栗色のふわっとした髪が似合っていた。
ただ少し格好が奇抜であり、カラフルなスニーカーにオーバーオール、
その上からパーカーを羽織っており、頭には大きなヘッドフォンを乗せていた。
「日本語、ですね。了解しました。私の名前はコネクト。電子製品開発部によって創り出された
人型タイムスリップ用アンドロイドです。コードネームCo。ほかにご質問はありますか、マスター」
「い、いや……」
長々と瞬時に答えられ、慎也は少したじろいでしまう。
「て、ていうか!俺は、アンドロイドなんて頼んだ覚えはない!!マスターでもないッ!!」
「……ですが、私たちアンドロイドにとって最初に話しかけてくださった方がマスターであるという
ものが決まりですので、変更はできません。どうぞ、ご命令を……」
慎也は困ったように頭を掻いた。
自分は頼んだ覚えなどまったくないのに……。
そんな思いばかりが、寝起きの頭にぐるぐると廻った。
「マスター、」
急かされるようにコネクトから話しかけられる。
命令がないことに対しての不安なのか、その表情は寂しそうにも見えた。
大きくため息をつき、コネクトに向かって命令を発した。
「タイムスリップ用とか言ったな、お前」
「はい、時間の操作ならなんとかなります」
「俺を、10年前の埼玉に連れて行け」
「……了解致しました」
何かが、変わってしまう。
慎也はそんな気さえもしていた。