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プロローグ
2022年8月、東京。
慎也はいつもよりも長い残業に一人苛立っていた。
慎也以外の人間はもうとっくに帰っており、慎也が点けている一台のパソコンが
ぼんやりと既に暗くなった社内を照らしているだけだった。
――……今年、日本は完全な未来都市化に成功した。
本州・九州・四国・沖縄・北海道と順に開発工事を終わらせ、
ほとんどの動力を電気に変えた。
開発案が出た当初はやはり反対派も多かったらしく、
度々ニュース上でデモ活動も取り上げられていた。
その反対を押し切って、日本は今年、完全なる未来都市へと進化した。
前までは真っ暗だった街も、もう夜だというのに
今では眩しいほどに明るかった。
きっと、今この日本で暗いのは社内と自分自身の心くらいなのかな、と
慎也は思う。
結局、その日は午前2時半まで残業は終わらず
慎也は午前5時頃になりようやく、ベッドの上へ
重い体を寝かせることが出来たのだった。
体を横たわらせながらもまたあの日のことを思い出す。
そうして毎日涙を流しては、守れなかった約束に後悔し、眠りについた。