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ダブルス  作者: aruko
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二話 ~消えた当たり前~



「んん。ん?おかしいな。ベッドに陽があたることなんて・・。え、どこ。」


顔に眩しい陽を浴びて起きた俺は、まったくもってわけがわからなかった。

理由は至極簡単。


今いる部屋に一切見覚えがなかったからだ。

木目の鮮やかな木造の部屋で窓が一つ。

ベッドとテーブル、椅子以外には何もなく、物もテーブルに色の悪い林檎と梨が入ったバスケットがあるのみ。


どこかの山に建てられていそうな小屋みたいな感じだ。

唯一、見覚えがあるのは同じ布団で寝ている晴香のだらけた寝顔だけである。


晴香よ、涎は垂らさない方がいいと思うぞ。


「おい。おい晴香。」


「なにぃ。もうどうしたの?」


「違う違う。マジちょっと起きろって。」


「うーん。わかったよう。おは・・・。ここどこ?」


「わかんね。俺もさっき起きたとこ。」


「・・誘拐とか拉致じゃないよね?でも縛られたりしてないしなぁ。」


「うーん。まあ、とりあえず落ち着いて状況を確認してみるか。」


「そうするしかないかな。ん?このメニューってなに?」


「メニュー?なにそれ?」


「あそこの・・。あれ動いた。なんか右上にずっと書いてあるんだよね。」


「え?あ、ホントだ。なんだこれ。メニュー。ってうお!!」


「どうしたの?!え?」


「なんだこれ。」


俺の目の前にはノート大くらいの画面らしきものが出現していた。

まるでタッチパネル式のパソコンの画面で見るようなもののようで、突然目の前に出てきた。

薄く淡い光で包まれているそれは側面から見たらものすごく薄く、まるで投射機で白い布に映像を写したかのようだ。

そこには「アイテム」「ステータス」「スキル」「スキルノート」「錬成」といった項目があり、右上には俺の名前である「仁」と書いてある。


「なんかメニューっていったら出たぞ!」


「メニュー。あ。」


「どうした?」


「な、何でもないよ。ホントだね!!私も出た!!」


・・晴香も混乱してるのかな。

まあいい、とりあえずためしにタッチパネルの要領で「ステータス」を押してみるか。


~~

職業:剣聖L150、槍使いL74、魔法剣士L60、忍者L58、聖拳士L51

合計L:393

SP:393/393

HP:10 MP:10

A:10  D:11

MA:10 MD:10

武器:なし

防具:スウェット

~~


と出てきた。・・・なにこれ。


「なにかのゲームかな?」


画面を見た晴香がそういうのも無理はない。

正直俺もそう思った。


「防具がスウェットってことは俺のことか?ってかステータス!レベルの割に低くないか?10って。」


「うーん。私も出してみるね。」


~~

職業:魔道士L111、神官L83、狩人L102

合計L:296

SP:296/296

HP:10 MP:10

A:10  D:11

MA:10 MD:10

武器:なし

防具:パジャマ

~~


「レベルは違うけど、ステータス一緒だね。」


「同じだな。どういうことだ?」


「うーん、何だろうね。とりあえず他のも見てみる?」


「そうだな。とりあえずスキルを・・何にもかいてないな。」


「私も。何も書いてないね。」


「ほかのも見てみようぜ。」


アイテムはお互いになにもないし、練成にも何も書いていなかった。


ただ、スキルノートには職業項目があり、試しに仁の項目の「剣聖」を選択すると「剣技L1」や「身体強化L1」などの項目がありその隣には「必要SP1」などのことが示されていた。

試しに仁の項目の剣技L1を選択すると文字が金色に輝いた。どうやら、SPというものを消費してスキルを取得することができるみたいだ。

やり直しも効くようで最善のスキル設定をできるようだ。


「てかさ、この項目仁のやってたストレートストーリーのスキルプレートに似てない?」


確かに似ている。

「剣聖」とか「魔法剣士」とか、職業に書かれているやつは全てストレートストーリーの職業と符合する。

剣技L1ってたしか剣士の初期のスキルにあったはずだ。

でも、ストレートストーリーは一人のキャラに一つの職業だった。

スキルノートを見るに、俺も晴香も複数の職業を持っているみたいなのは違うところだろう。


「なんか似ているよな。そっちのスキルノートは、どう?」


「ファイヤとかアイスとか色々あるよ。ファイヤ押したらハイファイヤっていう項目でてきたし。なにこれ。ていうか、ストレートストーリーそのままじゃない?」


「だよな。剣技L1押したら剣技L2出てきたし。たしかにスキルプレートそのままだよな。」


「ごめん、混乱してきた。つまり私たちは視界の右上にメニューって書いてあって、メニューって言ったらタッチパネルらしきものがでてきて、それを開いたら「ストレートストーリー」そのままなスキルノートという項目と同じ職業が書いてあったと。あってるよね?」


「たぶん。あってるはず。てか、わけわからん。起きたら知らない所にいるし、変なタッチパネルみたいなのが出てくるし。なんだよこれ。」


「人生でこんなにわけがわからないの初めて。こんなに落ち着いている自分が逆にびっくりだよ。」


「ていうか、メニューの話になって話が切れてたけど、まずここどこ?」


「ううん。どこだろ?」


メニューを閉じ(メニュー。といったら閉じた)最初の疑問に戻る。

しかしながら、周りを見てもさっき見た殺風景な部屋の様子しかなく、よくわからないよな。


「窓から見た感じ外は森みたいだな。他に窓から見てわかることはないなぁ。」


バンッ!!


「やあ、起きたのかい。僕はベン。昨日はもう寝ていたみたいだから僕も勝手に隣のベッドで寝させてもらったよ。それにしてもいいなー。僕もパートナーが欲しいよ。一人旅は寂しいからね。」


金髪のひょろひょろした男がドアから入ってきて、いきなりそう告げた。

外人ではないらしいが、中性的な顔立ちをしたその男はへらへらした作り笑いを浮かべていて、なんとも胡散臭い。

俺と晴香はいきなりのことにフリーズし、俺より先に復活した晴香が恥ずかしげもなく叫んだ。


「ええぇ?!あなた誰よ?!寝させてもらったって、勝手に隣で寝るとかダメでしょ!!」


「ん?一声かけずに寝たのは申し訳ないけどさ。ここは旅人用に派遣会社が建てた小屋だから、宿泊は自由でしょ?そんなに怒らなくてもいいんじゃない?」


「旅人用に?派遣会社?」


「そうだよ。君たちも何かの依頼でここに来たんだろ?・・ていうか君たち荷物は?武器も持たずに何故こんなところに?」


ベンと名乗った金髪君は、訝しげな表情でそう聞いてきたが、俺達はそれどころではない。


「依頼?武器?・・ベンさんでいいのかな?まず教えて欲しいことがあるんだけど、ここどこ?」


「へ?ここどこって変な質問するね。ここはオイル領のイルドの森だろ?何いってんの?」


「(知らない地名だ)そ、そうだったね。まだ少し寝ぼけていたようだよ。」


「変な人だな。まあいいや。僕はもう出るから。またいつか。」


そういってベンさん(年齢的に君か?)は、肩から掛けられる位の大きさのカバンと剣を持ち、さっさと小屋から出て行った。

・・・って剣??


「・・なあ晴香。彼、剣持ってたよな?」


「・・うん。」


「・・たしか日本には銃刀法という法律があったよな。」


「・・うん。」


マジでこれはどういうことだろう。

しかも彼は逆に俺達が武器を持っていないことに驚いていたようだった。

嘘をついている様子もないし、そんなことを見ず知らずの人間にしても彼に何の得もないのは明らかだ。


つまり剣を持っていることが普通で、外には剣が必要な危険があるということか?

てことは・・・えええ??!!


「こりゃまいった。迂闊に外に出れなくなった。」


「え?なんで?」


「さっきの彼の言動的にいって、外には武器を持たないと危険な何かがあるみたいだ。クソッ。彼からもっと情報が得られれば良かったんだが。」


「え?え?なにそれ?どういうこと?え?」


「とりあえず落ち着け。晴香。大丈夫だから。」


一体何が大丈夫なのか自分でもさっぱりだが、晴香が混乱しては何かと困る。

少し抜けているところもあるが、なんだかんだいって晴香は頼りになる。

正直こんなにも混乱している様子を見るのは初めてだ。

とりあえず一旦、晴香が落ち着くのを待つか。


「大丈夫?・・そう、大丈夫だよね。ありがとう。」


「おう。じゃあまあ、今わかっていることをひとまず確認しようぜ。」


今わかっていることは、ここはオイル領のイルドの森というところで外は武器がないと危ない。

地名からいってここは多分日本ではないだろう。

あと、この小屋は派遣会社というところが建てたらしい。

メニューというとゲームのウィンドウみたいなものが現れる。

メニューにはいろいろな項目がある。

・・・ということくらいだろう。


「うーん。だとしたら今調べられるのはメニュー位かな?他のは調べようがないよね。」


「そうだな。メニュー。・・お!なんかステータスが上がってる!」


「え!・・ホントだ。全体的に上がってるね!なんでだろう?」


「・・・多分スキルノートの剣術L1を取ったからだ。次に出た剣術L2を取ったらまた上がったから間違いない。・・・晴香。これはホントにバカみたいな想像かもしれないけど、ここはゲームの中かゲームみたいな場所なんじゃないか?」


正直今のところの状況的にはその可能性は低くない。

普通に剣を持っている人。

メニューなんていう画面。

地名。

さっき会ったベンさんの言動。

正直ドッキリとかじゃない限り十中八九この推測は合っているだろう。

そしてこんな大掛かりなドッキリを仕掛けてくるような心当たりは俺にはない。


「・・・やっぱり今のところはその可能性が高いかもね。」


晴香もおっとりしているがバカではない。

現状をみてその可能性が高いのはわかったようだ。


「とりあえず。今のところはスキルを取ってステータスを上げといた方が無難だな。このステータスが本当に身体能力を上げてくれることを祈ろう。」


「・・・仁。この世界は私たちの知らない世界で間違いないみたいだよ。」


「はぁ?晴香何言って・・。それなに?」


「ファイヤだってさ。さっき取ったスキル。言ってみたら出たんだ。」


・・正直これが一番驚いたかもしれない。

晴香の右手の上には火の玉がフワフワ浮いていた。

赤く燃える火の中に青い部分があり、明らかにガスコンロとかでみる『火』そのものみたいだ。


「・・晴香。それ熱くないの?」


「不思議と熱くないのよね。てか、これどうしよう。消し方わからないんだけど。」


「マジか!うーん。とりあえず外に投げるのが無難か?晴香できるか?」


「やってみるね。」


そんなかわいく『やってみるね。』とか言ってるけど、それ威力未知数なんだからそんな軽くいうドカーーン・・・この威力あり得なくね?直径2M位のクレーターできたけどあり得なくね?


「・・・ははぁ。ごめん。こんな威力出るなんて思わなくて・・。あのぉ、本当にごめんね?」


「・・オッケェェイ。とりあえず現実逃避は後にしよう。何この威力。あははは。とりあえず普通に考えて初期ステータスでこの威力なら自衛には問題ないはず。ってか、この威力で魔法使って生き残れないなら俺達は生きていけないから、大丈夫。あはははは。」


「・・・お願い仁。壊れないで。マジお願い。とりあえず武器がない以上、魔法が私たちの生命線だよね。どんな敵が出るかわからないけど、この威力ならきっと生き残れるはずだよね。」


「・・・ホントに日本じゃないんだな。戦争のない平和な日本に生まれた俺達が剣とか魔法とか。あはははは。こんな皮肉はないよな。あはははは。」


「仁、戻ってきて。ホントに勝手にスキル使ってごめんなさい。大丈夫??」


大丈夫なわけあるかぁぁぁああ!!





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