最初の最初
初めて書きます。
正直うまく書けている自信はありません。
だけど、自分が読んでみたいと思えるようなものが書けたら、いいと思っています。
少しだけ、お付き合いください。
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「右!!」
不意に鋭い突風が目に見えない鋭さを伴って、木々を軒並み薙ぎ倒しながら向かってきた。
そろそろ襲ってくるだろうとあたりを付けていた晴香は、この突風が瞬時に魔法系スキルによるものだとわかった。
少なくとも相殺できるであろう安全マージンをとって、同系統の中級スキルを唱える。
「‘ハイエアロ!!’」
晴香がスキルを叫びながら風の塊を晴香の手の中に集め、前方にその破壊力を放出していく。
手のひらにポッと浮いたその塊は、その手から放たれた瞬間に晴香の意志によって形作られた風の刃に変化していき、その強い力を撒き散らしながらこちらに向かって来る魔法スキルを切り裂いていく。
その際に晴香のスキルでも木々が薙ぎ倒されたが、些細なことである。
正直今はそんなことにかまっている場合ではない。
「目標が来たよ。数は3。くるよ。」
「了解。俺は右からいくぞ。」
言葉少なく打ち合わせ、俺は前を睨みつける。
なぎ倒された木々の間から、倒れた木を上手く使い隠れながらこちらに向かってくる緑色の物体が時折見える。
俺はそれを眼の端に捉えながら腰にある剣を引き抜き、剣にスキルを這わせながら敵の次の動きに備える。
「‘ガイアソード!’」
俺は初級の魔法剣スキルを唱え、とりあえずの準備を終える。
今回は周りに木々もあり土系統のスキルを使う。
いつもは火や風の系統を好んで使うのだが今回は土を使うことにした。
火の魔法剣スキルは生木でも燃やしてしまうため木に囲まれているこの場所では危険が多いし、風は鋭さはあるが木ごと薙ぎ払えるような威力はない。
ここはどう考えても威力が一番高い土が最適だ。
それにプラスしていつもなら身体強化スキルを唱えるところであるが、今回の相手には素の状態のままで十分対応できるはずだ。
さて、さっきから視界に入っている緑色の物体は今回の目標であるハイゴブリンだ。
身長は小学校低学年生程しかないが、腕や足などの太さはボディービルダー程あり、かなり歪な体つきをしている。
そのうえ何も考えていなそうな顔をしているが知能も高く、複数いる場合にはなかなかの連携もしてくる。
大体の魔獣や魔物は仲間との連携など関係なしに襲ってくる事から考えると、なかなか手強い敵ではあるであろう。
様子をみているとゴブリン達は陣形を整えつつ俺達の前に姿を現した。
まだ倒れていない木を挟んだ後ろに大きめの盾を持ったハイゴブリンが前衛として立ちふさがり、その斜め後ろで少し欠けたブロードソードを持ったハイゴブリンが晴香の隙を窺っている。
しかし一番警戒しなければならないのが、一番後方で杖を片手によくわからない言語をぶつぶつ呟いているハイゴブリンだ。
通称マジックゴブリン、略してマジゴブ。
さっきの突風もおそらくこいつのエアロ系統のスキルだろう。
このマジックゴブリンは、かなり高いレベルの魔法系スキルを使いこなせるのが特徴だ。
使えるのと使いこなせるのでは大きな違いがある。
他にも多くの魔物や魔獣が魔法系スキルを使うことができるが、その多くは単調で考えなしで威力もそうあるものではない。
しかしマジゴブは威力もさるところながらその魔法スキルをその場面に合わせた変化させ、もっとも有効な使い方をし、仲間の援護や補助もしてくる厄介な敵だ。
ハイゴブリンの盗伐の難易度が高いのは、連携力とそれに絡むこのマジックゴブリンの能力のせいである。
俺よりも晴香が強敵と判断した前衛ハイゴブリン二匹は俺を注意しつつも、晴香への注意へ時折意識を持っていかれる。その隙を逃すほど俺は甘くない。
俺は盾を持ったハイゴブリンの目線が晴香に向いた瞬間に目線の反対方向の側面から、ガイアソードのおかげで切れ味の上がりなおかつ魔王でも叩き斬れるような剣で切りつける。
ブチュッという鈍い音が鳴り、盾を持ったハイゴブリンは叫んだり呻いたりすることなくあっさりと盾ごと斜めから両断された。
俺はそのあともガイアソードの効果が切れないうちにブロードソードを持ったハイゴブリンに向かう。
盾を持った仲間がいる方向から敵が襲ってくるなど想像もしていなかったのか、汚い顔面を驚愕によって余計醜悪にしたハイゴブリンはあっけなく足を切り飛ばされ、体勢を崩された後に首が胴体からお別れをした。
倒れて行きながらも二つの断面から皮膚と同じような色をした血が噴き出し、俺に振りかかる。
「‘ファイヤ!!’」
後方から晴香のスキルを叫ぶ声が聞こえ、火の帯がマジゴブを通過して上半身が灰になる。
うめき声も上げられず、上半身が灰になったマジゴブを横目に、俺は大きく息を吐き出す。
今回もまた、生き残れた。
たとえどんなに強くなろうとこの感情はいつも強く、どんなときでも一番自分の中に残る気がする。
正直俺たちにとってハイゴブリン位なら100ダースいたって勝てるであろうが、それでも恐ろしいものは恐ろしいのだ。
日本に生まれて山に囲まれた場所で育ち、都会育ちの人よりは自然に親しみを感じているが、平和な世の中でこんな生き死を左右する事態はあり得ない。
想像つくわけがない。
こんな殺伐とした生活が始まって一ヶ月。
生々しくもあまり現実感の無いこのバカらしい世界に俺と晴香がいる理由を説明するには、一ヶ月前に遡る必要があるだろう。
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