彼と私とAIの彼
私には幼馴染がいる。
優しくて、可愛くて、いつも私の話を聞いてくれる人。
そんな幼馴染と付き合い始めたのは桜並木を歩いてる時に、彼から告白されたのがきっかけだった。
告白された時のことは今でも脳裏に焼き付いて離れない。
柔らかな春の日差し、小川の柔らかな水音、子供たちの笑い声。
一際大きな風が吹き上がった瞬間、桜の花びらが舞い上がってお互いが無言になった後。
「君の話をこの先もずっと…聞いていたいと思ってる」
そう言って真剣な眼差しで私を見つめてた君の頬は桜の花びらよりも濃い色をしていたんだよ。
でも、きっと、その時の私の頬も同じように色付いていたんだろうね。
そんな彼と付き合った日々は毎日が幸せで、結婚しようと彼にプロポーズされた時なんて、私は今、この瞬間、世界で一番の幸せ者なんじゃないかって心底思ったんだよ。
「ねぇ、今日のご飯どう?」
「うん、すごくおいしいね!君の作るご飯は品数も多くて栄養がよく考えられてるって思うよ!」
「ねぇ、今日のご飯どう?」
「うん、すごくいいと思う!彩も良い、君って本当に料理ができる女性って感じがするね!」
「ねぇ、今日のご飯どう?」
「うん、すごくいいと思う!君って他人のことを考えながら何かをする事に向いてると思う!」
「ねぇ、今日のご飯どう?」
「…」
「ねぇ、今日のご飯どう?」
「…」
暗い部屋、窓の外からは暖かな家庭の匂い。
どこからか何かを叩く音がする。
「大丈夫ですか!?」
彼の声がする?
なんだかすごく眠たい。
ねぇ、今日のご飯どうかな?美味しそうかな?
私の手からスマホが滑り落ちる。
いけない…スマホ、コレがないと彼と話せない。
あれ?なんでだっけ?
いつからだっけ?
そういえばね、私、みじん切り、上手になったんだよ、前みたいに繋がってて笑われる様なこともきっとないよ?
味噌漉し買ったんだ、お玉の上で溶かすの苦手だったじゃない?私ってさ…
一人で電球変えることができるんだよ、そんなことできるって知ったらびっくりするんだろうね?
ねぇ、なんで帰ってこなくなっちゃったの?
私のこと、嫌になっちゃったの?
どこか遠くで何かが大きい音を立てた気がするけど、もう眠たいから寝ちゃおう。
私の目の前で彼の笑ってる写真が倒れる。
それと同時に白檀の香りが部屋に溢れる。
彼の顔…見えなくなっちゃったよ…。
やっぱり寝ちゃおう、だって、寝て起きたら君が帰ってくるかもしれないもんね?
「わ、わぁ!救急車!警察!呼んで!早く!」
「キャァー!」
「な、なんだこれ!」
「うわああああああ!」
柔らかい春の木漏れ日の中、私はやっと、彼に会うことができたよ。
白檀の香り、私は好きです




