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プロローグ
チェンジリング――それは妖精の悪戯とされ、
人間の子どもや魂をそっと攫い、
代わりに別の存在を置いていく現象を指す。
置かれる存在は妖精の子どもだったり、
別の人間の子どもだったりとさまざまだ。
本来そこにいるはずの存在が、ある日突然、
見知らぬ世界へと放り出され、
その代わりに“別のもの”が
最初からそこにいたかのように置き換えられる。
家族を含め周囲の人々は気づかぬまま、
どこか微妙に“違う”誰かと暮らし始めるのだ。
そして今回も、
そんな妖精の悪戯がまた一つ起こった
――はずだった。
だが、なぜか今回は一風変わった事態となったのである。
普段は幼子の交換が行われるはずなのに、
何かがとんでもなく罷り間違って、
成熟したおっさん同士が交換されてしまった。
妖精の気まぐれにもほどがある。
もし妖精界に管理委員会なるものが存在するなら、間違いなく怒鳴り込み必至の案件だろう。
少子高齢化が影響したのか?
それとも人間社会のポリコレ思想が妖精社会にまで波及し、「子どもだけ対象は差別」とでもなったのか?
あるいは妖精界にも働き方改革の波が押し寄せ、「残業禁止」で焦った担当妖精が取り違えたのか――。
理由は、誰にもわからない。
何はともあれ、
こうして世界の片隅で
“おっさんチェンジリング”という前代未聞の事件が静かに幕を開けたのである。




