第8話 狩猟と同胞の証 ※挿絵追加 ミナちゃん
フェンに銀狼の村を案内される。
フェンは長の娘なので通りすがる人皆がお辞儀をし、フェンの帰還を喜ぶ…
しかし…
「本当にみんな薄着だな…」 「何じろじろ見てんのよ変態!」「仕方ないだろ!俺だって男だ!」
通りすがる人々みんなフェンとは違う、しかし薄いことには変わりはなく、どれも頼りない服を身に着けている。。
お尻の割れ目の部分だけになぜか布部分がない「オープンクロッチショーツ」や首輪からストラップ谷間を通過し、パンツとつながってるようなものもある。
一人の銀狼の女性が話しかけてくる
「あらーフェン様にルナ様!このかわいい男の子は誰ですか?!」
「この方は私のご主人様!カイ様です!」「ふん…」「へえ…」
その銀郎の女性はショートボブの銀髪の女性で、下はフェンと同じ黒のティーバックだが、大きな胸の上にはなんと下着はなく、ニップレスのみとなっている。
そんな彼女が前かがみになってカイの前に立つ。頭を撫でる。
「今度よかったらうちに来て…ね?」
その双丘を支えるものは何もなく、カイの前で波打つように揺れている。これで触ったら多分怒られるのか…?どうなんだ…?
(えっっっっっっっっっろ)
このままだと暴発する。しかも村のど真ん中で。
…
「……それで、ここが我が家です!」
ルナの殺気混じりの視線に耐えながら案内されたのは、里の中でも一際大きな石造りの屋敷だった。 どうやらフェンの実家は、この里の族長(長老)の家系らしい。ほかの家々は木造の家だけばかりだったのでこの石造りの家は荘厳な威圧感を放っている、村のリーダーの家って感じがする。
「ただいま戻りました! 父上、母上!」
フェンが元気よく扉を開ける。 出迎えたのは、これまた威厳たっぷりの巨漢――銀髪に筋骨隆々の肉体を持つ、渋いナイスミドルな獣人男性と、優しげな母親。
「かわいい子ですね!」「ははは…どうも」
母親は「セリア」と名乗る。
しかし母親はこの村のほかの獣人同様やはり薄着である。
流石フェンの母親といたところか。豊満な体の上に薄い水玉模様のセクシーなランジェリーを着ているだけで、大事なところしか隠れていない。当り前のように黒のTバックを履き、三人の子を産んだとは思えないプロポーションをしている。
「結局おれは天井を見ることでしか回避できないのか…」何処を見ても刺激的である。うれしい…でも股間が痛い…
「おお、フェンか! 無事でよかった……!」 「心配したのですよ。よく帰ってきてくれました」
感動の再会もそこそこに、フェンは俺の腕を引いて前に出した。
「父上、こちらが私の命の恩人であり、未来の旦那様のカイ様です!」 「……ほう」
父親――族長のガルムが、鋭い眼光で俺を値踏みする。 気圧されそうになるが、俺はあくまで堂々と振る舞った。管理者権限を持つ者として、ナメられるわけにはいかない。
「初めまして。カイ・ウォーカーです。フェンさんには道中、お世話になりました」
俺はフェンが傷だらけであったところを助けたことを説明する
「……うむ。娘を救ってくれたこと、感謝する。人間がこの里に足を踏み入れるのは本来許されぬが、フェンの『つがい』と言うなら話は別だ」
意外と話の分かる父親で助かった。 と、その時だった。
「あ! フェンねえちゃんだ!」
奥の部屋から、トテトテと小さな足音が近づいてきた。 現れたのは、あどけない顔立ちの銀髪幼女。 頭には小さな三角耳。お尻からは、綿菓子のようにフワフワした尻尾が生えている。 フェンの妹、三女のミナだ。
「ミナ! いい子にしてたか?」 「うん! いいこにしてたよ!」
ミナがフェンに飛びつく。その愛らしさは、まさに天使。 だが、俺が何より感動したのは、その服装だった。
「……ス、スカートだ……!」
思わず声が漏れた。 ミナが身に着けているのは、刺繍の入った可愛らしい民族衣装風のブラウスに、足首まである『ロングスカート』だったのだ。
「よかった……。この里の全年齢がマイクロビキニだったらどうしようかと……」
俺は胸を撫で下ろした。 さすがに5歳児まであの格好だったら、俺の理性が(倫理的な意味で)システムエラーを起こすところだった。健全なスカート姿に、実家のような安心感を覚える。
と、俺が安堵していると。
「きゃぁぁぁぁっ♡ ミナちゃぁぁぁん!!」
※大人の事情によりルナは服を着ています
突如、奇声が響いた。 振り返ると、さっきまで俺に「人間死すべし」の視線を送っていた次女ルナが、顔面をデレデレに崩壊させていた。
「どうしたのミナちゃん! 今日も世界一可愛いわねぇ~! ルナお姉ちゃんですよ~、こっち来まちゅか~?」
さっきのクールな殺し屋モードはどこへ行った。 ルナはだらしなく頬を緩め、ミナを抱きしめてスリスリと頬擦りをしている。
「あはは、ルナねえちゃんくすぐったいー」 「んふふ~、ミナちゃんの匂いは最高ねぇ。それに比べて……」
ルナがふと顔を上げ、俺を見た瞬間、その表情が『般若』のように凍りついた。
「……チッ。なんでそこにいるのよ!異臭男」「帰れ!便所に!」 「なんでそこまで言われなくちゃならんのだ!」
ミナに向ける聖母のような笑顔から、俺に向ける汚物を見る目への切り替えが早すぎる。 これがツンデレ(妹限定デレ)か。
「あのね、ルナねえちゃん。このおにいちゃん、だれ?」 「この人はねえ、おしりから出る茶色い物質の擬人化でちゅよー、うんちくんって呼んであげて」 「うんちくん!こんにちわ!」「変なこと教えるなよ!」
フェンが慌てて訂正に入る。 やれやれ、この家のヒエラルキーにおいて、俺の地位を確立するのは骨が折れそうだ。
◇
お茶(と言っても、森の薬草を煮出したワイルドな味だが)を飲みながら、族長ガルムと話をする。
「しかし、人間というのは不思議な生き物だな。フェンのような『子供』と変わらぬ見た目で、もう成人とは」
ガルムが興味深そうに俺を見る。
「え? フェンってまだ子供扱いなんですか? 18歳ですよね?」 「うむ。我ら銀狼族は長命種だからな。300年は生きる。18など、人間で言えばまだ小学生のようなものだ」 「小学生……」
俺は隣に座るフェンを見た。 身長170センチ超。豊満すぎるバスト。際どすぎるマイクロビキニ。 これで小学生扱いなのか、この種族。発育の定義がバグっている。
「心外です父上! 私はもう立派なレディです! 主様との夜の営みだって、覚悟はできています!」 「ぶふぉっ!?」
フェンの爆弾発言に、俺はお茶を吹き出した。
「な、何を言ってるの姉様! はしたない!」 「事実だもの! ね、主様?」 「あー、うん。とりあえずその話は置いといて……」
これ以上、ルナの殺気を浴びるのはごめんだ。 俺は話題を変えることにした。
「そういえば、夕食の食材がまだでしたよね。俺が獲ってきますよ」
歓迎してくれた礼に、一働きしようという魂胆だ。
「ほう、人間がこの森で狩りか?」
ガルムが眉を上げる。 そこに、ルナが食い気味に割り込んできた。
「いいじゃない父上。やらせてみましょうよ」
ルナは挑発的な笑みを浮かべ、巨大なブーメランを背負った。
「口だけ達者なヒモ男なのか、姉様が認めるだけの力があるのか。……私が『試験官』をしてあげるわ」
◇ ◇ ◇
というわけで。 俺、フェン、ルナ、そして見届け役の父ガルムの四人で、里の外へ狩りに出ることになった。 ミナは母さんと留守番だ。
「狙うは『グランド・ボア』。この森のヌシとも呼ばれる巨大猪よ」
森の奥深く。 ルナが足跡を指差しながら説明する。
「皮は鋼鉄より硬く、突進は城壁をも砕く。私たちの武器でも傷をつけるのがやっとの相手だわ。……あんたに倒せる?」
「まあ、やってみるよ」 「ハンッ。死んで泣きついても助けないから」
ルナは冷たく言い放つと、木の上に軽やかに飛び乗った。 フェンが心配そうに俺を見る。
「主様、大丈夫ですか? ボアは本当に強いです。私が加勢しましょうか?」 「いや、いい。たまにはカッコいいとこ見せないとな」
俺はフェンを制し、一歩前へ出た。 直後。
「ブモォォォォォッ!!!」
地響きと共に、前方の藪が弾け飛んだ。 現れたのは、軽トラックほどのサイズがある巨大な猪だ。 全身が黒光りする剛毛に覆われ、鼻先には凶悪な一本角が生えている。
「来たッ!」
ガルムが身構える。 ボアは俺を標的と定めると、凄まじい速度で突進を開始した。 ドスドスドスドスッ! 地面が揺れる。あれに直撃すれば、人間など赤い霧になって消滅するだろう。
「ほら、どうするの! 逃げるなら今のうちよ!」
頭上からルナの声が降ってくる。 だが、俺は動かない。 逃げる? 必要ない。 俺の視界には、すでにボアの頭上に真っ赤なカーソルがロックオンされているのだから。
「……食材としては、血抜きが面倒だな。システム処理でいくか」
俺は迫りくる巨獣を前に、悠然と右手をかざした。
『 Target : Grand_Boar 』 『 Command : Execute [ Instant_Butchery ] 』 (対象:グランド・ボア > コマンド実行:[ 即時解体 ] )
カチッ。 俺が指を鳴らした、その瞬間。
ズババババババァッ!!!
ボアの体が、目に見えない無数の刃に切り刻まれたかのように弾けた。 だが、血の一滴も飛び散らない。 光の粒子となったボアは、空中で再構築され――
ドスン。ドスン。カラン。
俺の足元に、綺麗に切り分けられた「ロース肉」「バラ肉」「骨(出汁用)」「毛皮(素材)」が、整然と積み上げられた。
「…………は?」
木の上にいたルナが、目を見開いたまま固まった。 ガルムも顎が外れんばかりに口を開けている。
「な、何が起きた……? 剣も抜かずに、一瞬で解体まで……!?」 「魔法? いや、詠唱もなかったわよ!?」
呆然とする二人を他所に、俺は肉の山を検分する。
「うん、いい肉質だ。これなら今夜は猪鍋(ボタン鍋)だな」 「さ、さすが主様ですぅぅぅ!! 素敵ぃぃぃ!!」
フェンだけが通常運転で、俺に抱きついてきた。 俺はフェンの頭を撫でながら、木の上で硬直しているルナを見上げた。
「どうだルナちゃん。これなら合格点か?」 「っ……! ぐぬぬ……!」
ルナは真っ赤な顔で俺を睨み、悔しそうに唸った。
「……み、認めてない! まだ認めてないんだからっ! ちょっと小細工が上手いだけじゃない!」
捨て台詞を吐いて、ルナは木々の奥へと姿を消した。 やれやれ、やっぱり一筋縄じゃいかないか。 だが、その尻尾が驚きと興味でパタパタと揺れていたのを、俺は見逃さなかった。
◇ ◇ ◇
一方その頃。 勇者パーティが拠点としている街の酒場にて。
「おい、親父。この辺りで『銀色の狼』を連れた黒髪の男を見なかったか?」
勇者アレクが、カウンターで酒を飲んでいた冒険者に声をかけた。 男は酔った目をしばたたかせ、面倒くさそうに答える。
「あぁ? 銀色の狼ぅ? ……そういや、北の山へ向かう変な二人組を見たって噂を聞いたな」 「北だと?」 「おうよ。だが止しときな。あっちには『人喰い狼の里』があるって話だ。人間が行けば、骨も残らねぇぞ」
男の忠告を聞き、アレクはニヤリと口角を吊り上げた。
「人喰い狼か。……丁度いい」
アレクはテーブルに金貨を叩きつけた。
「そいつらがカイを食い殺していればよし。もし生きていれば、その狼ごと捕獲して売り飛ばしてやる」
勇者パーティの面々は、邪悪な笑みを浮かべて立ち上がった。 彼らはまだ気づいていない。 自分たちが足を踏み入れようとしている場所が、この世界の管理者の様なスキルを持ち、神話級の神獣一家が団欒する「魔境」であるということに。




