第56話:ドスケベ・スライム村の強制交配プログラム
スライム村は、湿地帯にある巨大な岩山をいくつもくり抜いたような、洞窟住居が集まる場所だった。
村の周囲には結界が張られていたが、俺は管理者権限であっさりと解除し、中へと足を踏み入れる。
入り口には、風にたなびく大きな旗が掲げられていた。
描かれているのは、凛とした美しい銀狼の横顔。
以前、牛人族の村で見たものと同じだ。天狼ガルムの影響力が、この湿地帯の奥深くにまで及んでいることを再確認させられる。
「ようこそ! お待ちしておりましたわ!」
「人間のお客さんだー!」
「わぁ、男の人だ……久しぶり……」
村に入ると、すぐに色とりどりのスライム娘たちが出迎えてくれた。
ピンク色のロングヘアーを揺らす巨乳のスライム、しっとりとした雰囲気のお姉さんスライム、そして愛らしいロリ姿のスライムまで。
全員が半透明で艶めかしい肌をしており、歩くたびにプルンプルンと魅惑的な揺れを見せている。
(……なんだこの楽園は。警戒すべきか? いや、しかしこの光景は……)
俺は内心で警戒しつつも、四方八方から寄せられる好意の視線と、甘い匂いに包まれて、ついつい頬が緩んでしまう。
「旅の方、歓迎いたしますわ。さあ、広場にて催し物を行いましょう! 特別なおもてなしを用意しておりますの」
リーダー格と思われるお姉さんスライムが、豊満な胸をたわませながら俺の腕に抱きついてきた。
その柔らかい、人間じゃ再現できない感触に、俺の理性が少し溶ける。
「あ、ああ。案内してくれ」
俺が鼻の下をゴリラの如く伸ばしてついて行こうとすると、背後でスーが眉をひそめた。
「……変ですね」
「ん? 何がだ?」
「同族である私のことを無視して、なぜカイさんにばかりあんなに食いつくんですか?もちろん、私は皆と仲が良いいんです。スライム達の絆は強固なので…しかし今の皆は、まるで、獲物を狙うみたいにカイさんしか見ていません……」
スーの指摘はもっともだった。
普通なら、久しぶりに帰ってきた同族に声をかけるはずだ。なのに、彼女たちの目は俺しか見ていない。
「カイさん、気をつけてください。何かおかしいです」
スーが袖を引いて忠告してくる。
だが、俺の視界はすでにピンク色に染まりかけていた。
「ん〜? 細かいことは……気にするなよスー……。せっかく歓迎してくれてるんだし……」
「…」
「それにさー!俺ってさー!結構…顔もかわいいじゃん…!?そりゃ皆虜になるよぉ…」
ウヘヘ…笑いが止まらないやぁ…
「目がとろんとしてますよ! この色情魔!」
スーが呆れ声を上げるが、俺の耳には届かない。
俺たちはそのまま、村の中央広場へと誘導された。
――そして、異変は唐突に起きた。
広場に到着した瞬間、周囲の空気が一変した。
ピンク色に澱んだ、甘ったるい霧が立ち込める。
「……?」
俺が周囲を見渡すと、スライム娘たちの様子がおかしかった。
彼女たちの瞳。そのテクスチャが、バグったように書き換わっていたのだ。
全員の目が、毒々しいピンク色の『ハートマーク』になっている。
「あぁ……オス……上質なオス……♡」
「ちょうだい……頂戴よぉぉぉぉ♡」
「私たちで……搾り取ってあげるぅ♡」
ゾンビ映画のような、しかし内容は18禁のうめき声を上げながら、数十人のスライム娘たちが一斉に俺に殺到してきた。
「え、ちょ、おま――」
俺が反応するよりも早く、俺の体はスライムの肉壁に埋もれた。
「待て! 窒息す……んぐっ!? やめ、そこは尿道だぞ!?♡」
四方八方から伸びてくる粘液の触手と、柔らかな肢体。
口、鼻、耳、そしてありとあらゆる穴という穴を、スライムの体が愛撫し、侵入してくる。
抵抗しようとするが、力が入らない。
意識が急速に快楽の海へと沈んでいく。
視界の端に、赤いシステムログが表示された。
[Status: Estrous (Infinity)]
つまり…
(状態異常:発情(永続))
「あへぇ……♡」
俺は完全に白目を剥き、思考を放棄した。
「主様ッ!?」
「カイ!?」
背後でフェンとルナの悲鳴が聞こえる。
彼女たちもまた、このピンク色の霧――『強制発情媚薬ミスト』の影響を受けていた。
「はぁ……はぁ……っ! 体が……熱い……」
「くっ……何よこれ……頭が、クラクラする……」
フェンが自身の体を抱きしめ、ルナが荒い息を吐きながら膝をつく。
悠乃も顔を真っ赤にして、自身の豊満な胸を押さえていた。
「こ、これは……いけん……ウチまで……おかしくなりそうじゃ……」
「みなさん! しっかりしてください!」
スーが必死に声をかけるが、彼女自身もスライム族ゆえに影響を受けやすいのか、頬を染めて潤んだ瞳をしている。
目の前では、俺(パーティのリーダー兼最強戦力)が、スライムの山に埋もれて「んほぉぉぉ♡」と情けない声を上げている。
完全に役立たずだ。
「……ダメです。主様は、今は使い物になりません」
フェンが、熱に浮かされそうになる意識を必死に繋ぎ止め、氷の枕を4つ生成して立ち上がった。ヒロインたちの頭を冷やすために。
俺の氷枕はなかった。今は頭を冷やしても無駄だと判断したんだろう。
「私たちが……どうにかするしかありません!」
ルナも、震える足に力を込め、ブーメランを構える。
「あのアホ色情魔……! 後で覚えてなさいよ……!」
俺を飲み込んだスライムの狂乱。
正気を保っているのは、かろうじて立っている四人のヒロインたちだけだった。




