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第55話:物理無効に氷結耐性だってー!?



ウラスレートの街を出て、俺たちはスライム村を目指して街道を進んでいた。

 天気は快晴。絶好の旅日和――のはずなのだが、パーティの空気は少しピリついている。


原因は、ルナだ。

 ルナが歩きながら、隣を歩くスーを殺意マシマシの目つきで睨みつけているのだ。


「……」

「ひぃッ……あの、ルナさん……?」

「あんたが夢で言ったこと、忘れてないわよ!」


ルナがガルルと唸る。

 スーは涙目で俺の後ろに隠れた。


「り、理不尽すぎませんか!? 私、夢の中で何をしたんですか!?」

「『貧乳は下着つけなくていいから合理的〜』とか言ってたのよ! あの勝ち誇った顔、一生忘れないんだから!」

「言ってませんよぉぉぉ!」





挿絵(By みてみん)






……何が起こったのかは知らないが…

 今日の夢は、多分ルナの貧乳に関することだったんだろ…そしてそれはリアルな夢だったのだろう。


胸の格差社会については触れてはいけない。触らぬ神に祟りなし。俺は口笛を吹きながら適当に鼻をほじった。


そんな賑やかすぎる一行を眺めながら、フェンがふと疑問を口にした。


「ところで主様。なぜ今回は『転移』を使われないのですか?」



挿絵(By みてみん)



フェンの言う通りだ。

 俺の管理者権限を使えば、座標指定で一瞬で移動できる。わざわざ徒歩で移動する必要はない。

 だが、俺には俺なりの考えがあった。


「理由はいくつかある。一つは、以前行った牛人族の村や銀狼の里と同じく、スライム村にも結界が張られている可能性があることだ。結界があると、転移が弾かれたり、予期せぬ場所に飛ばされるリスクがある」


俺は指を立てて説明を続ける。


「二つ目は、前にも話したが、座標の問題だ。俺たちはスライム村に行ったことがない。地図上の位置はわかっても、現地の詳細な『空間座標』が不明確だ。もし座標が少しでもズレて、岩盤の中や壁の中に転移したらどうなると思う?」

「……即死の可能性がある。これはスーの時と同じですね。」

「ああ。俺たちは死んではいけない。だから、何があるか確定させた安全な状態でしか、ワープコマンドは使わないと決めている。まあだから帰りは簡単だ。」


アレクの時は…まあ察してくれ。死んでもよろしかったんです…あんな奴…


 ……まあ、これは半分建前だ。前にもさらっと説明はしたしな

 俺は空を見上げ、少しカッコつけた顔で三つ目の理由を付け加えた。


「それに……なんとなくだが、道中にこそ運命を変えるような出会いがあるような気がしてな。旅の醍醐味ってやつだ」


俺が言うと、悠乃が「ほーじゃのう」とニヤニヤしながら口を挟んできた。


「確かに、出会いは大事じゃ。……こいつ、ウチといきなり出会った時、挨拶代わりに乳触ろうとしてきよったからな」

「ぶっ!?」


いきなりの爆弾発言に、俺はむせた。


「いやちがっ! まあそうだけど、あれは検査だったんだよ!乳が出ないって言ってたから……」


まあ実際は触るチャンスだとは思ってた。

「そうよ! カイってば、私の体もずーっとジロジロ見てたわ!」


ルナが追撃してくる。

 さらに、フェンまで妖艶に微笑みながら乗っかってきた。


「ふふふ……主様って、確かに私の体を隅々まで見てましたね……♡ 視線だけで妊娠するかと思いました」

「いや、それはお前達が悪いだろ!」


俺は声を大にして反論した。


「そんな布面積の少ないバンドゥビキニとか、黒のマイクロビキニとか着てたら、男なら誰だって見ちゃうだろ! 機能性とか言ってるけど、あれ絶対誘ってるからな!?」

「そうですね……僕の時も『僕っ娘だー!うれしいいいいいいい!』って言いながら、すごい勢いでジロジロ見てましたし……」


スーがジト目で参戦してくる。


「しかたねーだろ! お前のはテクスチャのバグで全裸に見えたんだし! 不可抗力だ不可抗力!」


まったく、どいつもこいつも俺を色魔扱いしやがって。

 健全な男子の反応としては正常だろ。ただでさえみんな魅力的なんだから。



そんな馬鹿話をしながら進むうちに、森の植生が変わってきた。

 湿気が多くなり、地面がぬかるんでくる。スライム村が近い証拠だ。


俺は表情を引き締め、スーに向き直った。


「さて、ここからは真面目な話だ。スー、スライム族の特性と弱点を教えてくれ。もし戦闘になった場合、知っておかないとマズい」

「はい。まず、スライム族に『物理攻撃』は無効です。打撃や斬撃は、体をすり抜けるか弾力で無効化されます」


やっぱりか。牛人族の時と同じだな。

 ルナのような物理特化のアタッカーには相性が最悪だ。


「あと、『氷結魔法』に対しても強い耐性があります。凍っても死ぬわけではなく、動きが鈍くなる程度です。さらに『水魔法』は吸収して回復してしまいます」


フェンの氷結魔法も決定打には欠ける、ということか。これも同じだ。


「弱点はありますか?」

「『炎』です。熱には弱く、引火しやすいです。」


なるほど。炎か。

 俺はコンソールを展開し、フェンとルナを見た。


「戦闘能力が高いスライムが相手だと、今のパーティ構成じゃ相性が悪い。ルナの物理も、フェンの氷も通りにくいからな。俺にも弱点はあるし………だから、今のうちに対策パッチを作っておく」


俺は高速でコードを記述する。


俺はまず、ルナが腰に下げていたブーメランを手に取った。


[Command: Edit_Property (Target: Luna_Boomerang)][Add_Enchant: Fire_Element (Condition: User_Hand == Left)]


ブーメランの表面に、赤い幾何学模様のコードが一瞬浮かび上がり、消える。


「ルナ、これにお前専用のセキュリティを組んでおいた。『左手』で投げたり、持っている間だけ、刃に高熱の炎エンチャントが付与される」

「へぇ! あたしでも魔法剣みたいなことができるのね!」

「ああ。普段は物理攻撃だと思って油断した相手を、左手からの投擲で焼くことができる」


次に、俺は何もない空間から、刀身が透明な美しい長剣を生成した。フェンは武器を持っていないからな。


[Command: Create_Weapon (Type: LongSword, Name: Dual_Edge)][Condition: Switch_Element (Right=Ice, Left=Fire)]


「フェン、これはお前用だ。お前の得意な氷結魔法に合わせてあるが、『左手』で持った時だけ属性が『炎』に切り替わるように設定した」

「なるほど……。氷使いだと思って侮った相手に、不意打ちで炎を浴びせるわけですね」

「そういうことだ。相手を騙して、優位に立つ。これが『攻略法デバッグ』だ」


二人は頼もしそうに新しい武器を構えた。

 悠乃とスーは戦闘向きではないので、後方支援に徹してもらう。


「よし、準備完了だ。行くぞ」


俺たちは武器を手に、湿地帯の奥に見えてきた集落――スライム村へと足を踏み入れた。


だが。

 村に入った瞬間、俺たちは異様な光景を目にすることになる。

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