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第41話:ドキドキ!全裸スネークミッション

――早朝、未明。  東の空が白み始めた頃。  城塞都市ウラスレートの巨大な城門前。


(カイ視点:ログハウス内モニタールーム)


「通信チェック。……感度は良好だ。聞こえるか、スー」


俺は空中に展開した複数のモニターを見つめながら、念話(ウィスパー機能)を送った。  画面には、門の影に潜む全裸のスライム娘が映し出されている。  隣ではフェン、ルナ、悠乃も固唾を飲んで画面を見守っていた。


『は、はいっ……聞こえます、カイさん……!』


スーの震える声が返ってくる。


「いいか、今のウラスレートは早朝だ。人通りは少ないが、ゼロじゃない。誰かに見つかれば即通報、伝説の『全裸変態女』として指名手配だ」


『い、言わないでくださいぃぃ……!』


「泣くな。俺たちがついている。……行くぞ、オペレーション・ネイキッド・モーニング、開始だ!」



(スー視点:ウラスレート城門)


僕は心臓が口から飛び出しそうだった。  朝の冷たい空気が、衣服のない肌を直接撫でていく。  乳首が外気に触れてツンと尖ってしまうのが分かって、顔から火が出そうだ。


目の前には、門番の詰め所。  椅子に座った衛兵が、槍を抱えたまま居眠りをしている。


「(ひぃぃ……起きないで……起きないでぇ……)」


僕は抜き足差し足で、衛兵の横を通り抜けようとした。  一歩、また一歩。  彼との距離、わずか1メートル。  その時。


「グガァッ!!」


衛兵が盛大ないびきをかいた。


「ひゃっ!?」


僕は驚いて飛び上がった。  その衝撃で、重力に従順な僕の胸が、たぷんっ、と大きく上下に揺れた。  白い肌が波打ち、柔らかな音が響く(気がした)。


「(ううぅ……ゆ、揺れた……恥ずかしい……)」


僕は涙目で胸を押さえ、なんとか門を通過した。



(カイ視点)


「……ふむ」 「どうしたのカイ?」 「いや、今の『揺れ』のフレームレートを確認した。素晴らしい物理演算だ。スーの胸はフェンたちほど大きくはないが、その分、弾力と形状維持率が高い。……今の『たぷん』だけで白米三杯はいける」 「真面目なトーンで最低な分析しないでください」


フェンが呆れたように言った。  だが、第一関門は突破だ。


「スー、大通りに出るぞ。……む、警戒せよ! 前方からランナー接近!」



(スー視点:大通り)


カイさんの警告に、僕はビクリと足を止めた。  朝もやの向こうから、健康的なスポーツウェアを着たお姉さんが、ポニーテールを揺らして走ってくる!


「ひっ!」


僕は慌てて、街路樹の横に積まれた木箱の陰に滑り込んだ。  冷たい木の感触が、素肌のお腹や太ももに押し付けられる。  これなら見えないはず……!


「(と、通り過ぎて……お願い……!)」


僕は木箱に裸の身体をぴたりと張り付かせ、小さくなって祈った。  足音が近づいてくる。  タッタッタッ……。  そして――僕の真横で止まった。


「ふぅー……ここらでちょっと休憩っと」


お姉さんが、あろうことか僕が隠れている木箱に足を乗せ、アキレス腱を伸ばし始めてしまった!


「(ええぇぇぇ!? なんでここで!? ウラスレート広いよね!?)」


息ができない。  距離はわずか30センチ。  お姉さんの荒い息遣いと、健康的な汗の匂いが漂ってくる。  対する僕は全裸でうずくまり、恐怖で震えている。


極限の緊張。  そのストレスに、スライムの体が反応してしまった。  僕の肌から、じわりと青い粘液スライム・スウェットが分泌され、太ももを伝って地面に垂れ落ちる。


ポタッ……ポタッ……。


「ん?」


お姉さんがストレッチを止め、地面を見た。


「なにこれ? なんか青いのが垂れてる……?」


お姉さんがしゃがみ込む。  視線が、液体の発生源――つまり木箱の裏へとゆっくり移動してくる!


『スー! 見つかるぞ! 上だ! 木に登れ!』


カイさんの指示が飛ぶ。  上!? そんなことしたら――いや、やるしかない!


僕は無我夢中で、背後の街路樹に飛びついた。  スライム特有の粘着力を全開にし、幹に手足を吸い付かせ、音もなくスルスルと登る。  お姉さんが木箱の裏を覗き込んだ瞬間、僕は頭上の枝の裏側に張り付いていた。


「あれ? 気のせいか……。なんだ、樹液か」


お姉さんは不思議そうに首を傾げ、また走り去っていった。


「はぁ……はぁ……よ、よかった……」




挿絵(By みてみん)






僕は安堵のため息をついた。  でも……今の体勢、死ぬほど恥ずかしい。  枝の裏側に張り付いているせいで、僕の体は下向きになっている。  重力に引かれて、胸とお尻がぷらんと垂れ下がり、無防備に揺れているのだ。  もし誰かが見上げたら、僕の全てが丸見えの絶景スポットだ。



(カイ視点)


「……ごめん」 「どうしたんじゃカイ、鼻血が出とるぞ」 「いや、モニターのアングルが神すぎてな……」


画面には、下からのアングルで捉えられたスーの肢体が映し出されていた。  重力に従って雫のように形を変える美しい果実。  そして、無防備に晒された秘所。  枝にしがみつく必死な表情と、だらりと垂れ下がる肉感の対比。芸術点が高い。


「スー、次へ進め。路地裏を使え」



(スー視点:路地裏)


僕は木から降りて、薄暗い路地裏を進んでいた。  ここなら人はいないはず……。


「むむっ……!」


曲がり角で、突然誰かと鉢合わせそうになった。  黒いフードを目深に被り、水晶玉を持った老婆。  ……占い師だ。しかしなぜか目を鉢巻のようなもので隠している。


「(ひっ……!)」


僕は慌てて壁に張り付き、息を殺して隠れた。  大丈夫。姿は見えていないはず。  修行の一環なのか、おばあちゃんは今見えていないはず。謎の鉢巻きのせいⅾ


だが、老婆は僕のいる方向をじっと見つめ、鼻をひくつかせた。


「……臭う……臭うぞ……」


老婆の目が、虚空を見つめて怪しく光る。


「ここにあるはずのない……『ドスケベピンク色』のオーラを感じる……!」


「(ええぇぇ!? な、なにその最低なオーラ!?)」


見えていないはずなのに、老婆が杖をつきながら、ジリジリと近づいてくる。


「見える……私には見えるぞ……。生まれたままの姿で、恥じらいながらも、どこか見られることに興奮している娘の姿が……!」


「(興奮してないですぅぅぅ!!)」


なんで当たるの!? このお婆ちゃん何者!?  僕は後ずさるが、路地は狭い。逃げ場がない!


「ほれ、そこじゃろ? こっちへ来なさい……ふふふ……若くてピチピチした気配じゃ……」


老婆が杖を振り回しながら迫ってくる。その杖の先が、僕の鼻先数センチをかすめる!


『スー! 逃げろ! 物理的に行け!』 『でも行き止まりです!』 『壁だ! 天井を伝って頭上を超えろ! お前ならできる!』


カイさんの無茶な指示。  でも、捕まったら変態占い師の餌食だ!


僕はスライムの粘着力を全開にして、垂直な壁を駆け上がった。  そのまま天井(建物の張り出し部分)に張り付き、逆さまになって移動する。  まるでスパイ映画のワンシーンみたいに。


僕は老婆の頭上を、逆さまの状態で通過する。


「む? 消えたか……?」


老婆は僕のいた場所で立ち止まり、キョロキョロと辺りを見回した。  そして、ふと上を見上げる。


「……まさかな。天井に全裸の娘が張り付いているなどという、エロ漫画のような展開があるわけが――」


その瞬間。  恐怖と緊張で緩んだ僕の体から、一滴の愛液(スライム粘液)が、ポタリと落ちた。


ペチャッ。


老婆の額に、青い雫が直撃する。


「ぬぉ!? ……こ、これは……聖水!? いや、愛液の波動を感じる……!」


老婆が混乱して踊りだした隙に、僕は必死でその場を離脱した。



僕は路地を抜け、広場に出た。  ぜぇ……はぁ……。  怖かった……。あのお婆ちゃん、絶対ラスボスより強い……。


でも、あと少し。お姉ちゃんの店はもうすぐそこ――。


「ワンッ!」


「えっ?」


広場の中央。  そこに、一人の男性が立っていた。  大型犬を連れた、早朝の犬の散歩だ。


距離は10メートル。  遮蔽物なし。  隠れる場所なし。  犬が僕を見て、尻尾を振っている。  飼い主の男性が、ゆっくりとこちらを振り向こうとしている。


「(あ……)」


終わった。  隠れる場所なんて、どこにも――


「(い、いや……ある!)」


僕の目に入ったのは、広場に置かれた「あるもの」だけだった。


(続く)

挿絵(By みてみん)

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