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第30話:うんちくんの帰還 スライム娘の予感

ホルスタインの村を後にした俺たちは、悠乃を加えた四人パーティで街道を進み、銀狼族の里へと帰還した。

 道中、悠乃の「ステータス増強ミルク」の検証(という名のつまみ食い)を何度か挟んだおかげで、足取りは軽く、予定よりも早く里に到着することができた。


里の入り口には、懐かしい顔ぶれが待っていた。


「おかえりなさい、みんな!」


出迎えてくれたのは、マイクロビキニの銀狼さんたちに、フェンとルナの母親であるセリアさんと、族長のガルムさん。

 そして、フェンの背中からひょっこりと顔を出した、末っ子のミナだ。


「あ! 帰ってきたー!」


ミナがパタパタと尻尾を振って駆け寄ってくる。

 天使だ。この里の癒やし枠だ。

 俺は笑顔で手を振った。


「ただいま、ミナ。いい子にして――」


「久しぶりー! うんちくーん!」


「……その呼び方、やめてくれないかなぁ!?」


俺の笑顔がピキリと固まった。

 うんちくん。

 ルナが俺のことを「肛門から出る茶色いものの擬人化」というあまりにもひどい紹介をしたせいでミナちゃんはおれのことを「うんちくん」と呼ぶようになってしまった。もしかしたら未来永劫「うんちくん」としてミナちゃんの中で生き続けることになるのかもしれない。

 英雄の呼び名としてはあまりに酷い。


「もう、ミナったら。カイ様は里の恩人ですよ?」


セリアさんが苦笑しながら窘めるが、ミナは「えへへー」と無邪気に笑っている。

 くそっ、可愛いから許すしかないのが悔しい。


うんちくんの負け!


「ミナちゃぁ~ん♡ いい子にしてまちたかぁ~? おねえちゃん、あいたかったでちゅよ~♡」



挿絵(By みてみん)





「!?」


突然、隣から甘ったるい声が聞こえた。

 見ると、普段はツンケンしているルナが、デレデレの顔でミナを抱きしめ、赤ちゃん言葉で話しかけている。

 そういえばこいつ、ミナちゃんの前ではこうだったな。キャラ崩壊も甚だしい。これがシスコンの末路か。


「よしよし、ミナちゃん。こっちにもおいでー。」「フェンちゃんのふわふわー!」「ふふ…ん…私からはお乳はでませんよー?」


フェンはフェンで、慈愛に満ちた聖母のような顔でミナを抱きしめ、頭を撫でている。

 銀狼三姉妹の尊い光景。

 そこに、悠乃も加わった。


「あらら、ミナちゃん。また可愛くなったんちゃう?」

「あ、おっぱいのおねえちゃんだー!」


ミナは悠乃の豊満な胸にダイブすると、ゴロゴロと喉を鳴らし、その場にごろんと仰向けになった。

 無防備にお腹を見せ、手足をくねらせる。完全に「撫でて」のポーズだ。


「なでてー!」

「はいはい、よしよし~」

「ここか? ここが気持ちええんか?」


フェン、ルナ、悠乃の三人がかりで、ミナのお腹をワシャワシャと撫で回す。

 ミナは「キャッキャッ」と嬉しそうに笑い声を上げる。

 平和だ。

 世界がこんな平和な時間だけで満たされればいいのに。






俺はその光景を目を細めて眺めながら、心の中で「うんちくん」という呼び名の改名運動をいつか起こそうと誓うのだった。




挿絵(By みてみん)




その後、俺たちは族長の屋敷へと移動し、今回の遠征の報告会を行った。

 リビングの長テーブルには、フェン、ルナ、悠乃、俺、そして族長のガルムさんとセリアさんが座っている。


「……なるほど。ミルクが出ない原因は『毒』で、それを操っていたのが『管理者』と呼ばれる敵だったと」


俺の説明を聞き終えたガルム族長が、厳しい表情で腕を組んだ。

 俺は頷いた。


「はい。ベルモットと名乗る女でした。俺と同じく、この世界のシステムを書き換える能力を持っていました。……奴は自害しましたが、背後には『黒い獣』という存在がいるようです」


「黒い獣……」


ガルム族長の目が鋭くなる。フェンのかつての傷の原因であり、この世界に影を落とす元凶。

 空気が重くなる。


「それと……もう一つ報告があります。ホルスタインの村の族長たちが誘拐されていた件ですが」


俺は言い淀んだ。

 あの洞窟での地獄絵図を思い出したからだ。


「監禁場所は洞窟で……そこには大量のスライムがいました。スライムたちは……その、特殊な粘液で衣服を溶かし……ナギさんやミミちゃんを……あられもない姿にして拘束していました」


「なんと……! 許せぬ所業だ」


ガルム族長が拳を握る。

 俺は水を一口飲み、吐き気を抑えながら続けた。


「そして……牛人族の族長さんも、同様に……。スライムまみれになって……『あああああ! そこはダメぇぇぇ!』とか叫んでいて……。正直、見ているこっちが精神的ダメージを受けました」


「…………」


全員が沈黙した。

 筋骨隆々のミノタウロス族長が、ローションまみれで喘ぐ姿。

 想像したくない。


ふと、俺の視線がガルム族長に向く。

 彼もまた、ダンディで屈強なナイスミドルだ。

 もし、彼がスライムに襲われたら……?


(……『ぬわぁぁぁ! や、やめろ貴様ら! そこはワシの敏感な……んほォォォォッ!!』)


「おヴぇッ……!」


俺は口元を押さえてえずいた。

 いかん。想像しただけで胃液が逆流してきた。

 この里の威厳ある族長に限って、そんな醜態を晒すはずがない。もっとこう、男らしく耐えるはずだ。いや、耐えてても嫌だわ。誰得なんだよ。


「カイ殿? 顔色が悪いが……」

「い、いえ。なんでもありません。……ただの想像妊娠……いや、想像被害です」


俺は頭を振って邪念を追い払った。

 すると、ガルム族長が真剣な顔で口を開いた。


「しかし……妙だな」

「え?」

「スライムたちの挙動だ。我ら魔物は、人間とは違う。種族間の争いはあるが、同胞である『魔物』の長に対して、そこまで尊厳を踏みにじるような真似をするだろうか?」


ガルム族長の指摘に、俺はハッとした。

 確かに。

 スライムは低級魔物だが、その族長の顔くらいは知っているはずだ。交流があるならなおさら。

 牛人族の族長といえば、かなりの実力者だ。それを捕食するならともかく、衣服を溶かして辱めるなんていう「高度な嫌がらせ」をするとは思えない。


「あれは……ベルモットが操っていたからでは?」

「それもあるだろう。だが、ベルモットが死んだ後も、スライムたちは村娘を襲い続けていたと言ったな? まるで『そうするように』プログラムされているかのように。もしくは悪意を持ってやったのかもしれん」


ガルム族長は顎に手を当てて考え込んだ。


「スライム側にも、何か異変が起きているのかもしれん。本来、彼らは森の掃除屋として、もっと大人しい種族のはずなのだが……」


言われてみればそうだ。

 あの洞窟のスライムも、村に持ち込まれたスライムも、異常なまでに「衣服溶解」と「性的いたずら」に特化していた。

 あれは自然発生した変異種というより、誰かが意図的に作り出した生物兵器(エロ特化型)のような……。


「カイ殿。……すまないが、また『お使い』を頼めるだろうか?」

「はい、なんでしょう」

「『スライムの村』へ行って、様子を見てきてほしいのだ」


スライムの村。

 その響きに、俺の脳内で新たな可能性がスパークした。


(スライムの村……つまり、スライム娘(擬人化)がいる可能性が高い!)

(透き通る肌! 変幻自在のボディ! 物理無効のぷるぷる感!)


さっきのおっさんスライムのトラウマが一瞬で消え去り、代わりに桃色の未来予想図が展開される。


「分かりました。原因究明のため、行ってきます」


俺は食い気味に即答した。

 ガルム族長は「うむ、助かる」と頷き、それから少し声を低くして言った。


「ああ、あと……カイ殿。一つ忠告がある」

「はい?」


族長が地図を広げ、ルートを指差す。


「ここからスライムの村までは、そこそこの距離がある。そして、その道中には……『人間たちの町』があるのだ」


「人間……」


その言葉に、フェンとルナの耳が少し垂れた。

 この世界において、人間と獣人(亜人)の関係は良好ではない。

 むしろ、差別や迫害の対象となっている場合が多い。


「寄ろうと思えば寄れる場所だが……くれぐれも、獣人族のみんなを中に入れることは止めてくれ。トラブルの元だ」


族長の目は真剣だった。


「物資の補給などで立ち寄る必要があるなら、カイ殿一人で行くか……あるいは、彼女たちが『人間』に見えるような変装をさせることだ。……いいな?」


重い忠告だった。

 俺にとっては同族でも、彼女たちにとっては「敵地」になり得る場所。

 俺は気を引き締め直し、深く頷いた。


「承知しました。彼女たちには、指一本触れさせません」


こうして俺たちは、新たな目的地『スライムの村』を目指し、そしてその途中にある『人間の町』という危険地帯へと足を踏み入れることになった。

 そこには、モンスターとの戦いとは違う、別の厄介事が待っている予感がしていた。




◇◇◇



…………………………ガルム視点


皆が寝静まった後、ガルムは一人で草地の中の墓地にいた。


ここには過去に亡くなった英霊たちが静かに横一列になって眠っている。

一人ひとりの英霊たちの積み重ねがガルムの遺伝子プロパティを「伝説」へと昇華させた。


一人一人に花を手向ける。もう肉体はない。この世界には存在しない。傷を重ねてどこかで、戦いとは無縁な世界で穏やかに生きていてほしい、と願いながら墓に向かって祈る。


「…銀月の古王たちよ…」


歴代の神獣の血を継ぎ、死んだ者たちは「銀月の古王」の一員に属する。死んだ後だからって関係ない。これほどまでに名誉なことは存在しない。


その中でも特に名を馳せた、不動の歴代最強の銀狼がいた


星の流れを詠み、この世界のどこかにあったはずのマグマ地帯を氷河に変え、流れ出る涙で死んだ者に息吹を吹き込んだ…


「星詠みの遠吠、『天狼』のカムイ」


私はカムイのような立派な長として生きていけているのだろうか。ありがたいことに今は均衡が取れた世界だ。各勢力はそれぞれ同じような国力を持っている。だがもし、どこかが…一個抜きんでるような力を手にした場合…


均衡が崩れる。戦乱の世になるのかもしれない。


そうならないことをまたどこかの神に祈りながら墓地をあとにしようとした…


違和感


カムイの墓の周辺だけ草の成長速度が違うような気がする。本当に些細な変化だが…


カムイには悪いと思いながらも、ガルムはカムイの墓を素手で掘り起こした。



「…無い…!?」




本来白骨化したカムイの姿があるはずだった。



これが意味することは…




(続く)




おまけ

挿絵(By みてみん)

マイクロビキニだとセンシティブ判定でBanになりそうなので、オーバーオール着せたりしてます


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