第3話 拾ったワンコが規格外の豊満ボディだった件について
「あ、あの……主様? どうなさいましたか?」
目の前の美少女が、小首をかしげて俺の顔を覗き込んでくる。 俺は正直、言葉を失っていた。
銀糸のように煌めくロングヘアー。 感情に合わせてピコピコと動く、愛らしい獣耳。 お尻の方では、フサフサの尻尾が千切れんばかりに左右に振られている。
だが、俺の視線はどうしても『そこ』に吸い寄せられてしまう。
「……でかい」
思わず本音が漏れた。 彼女が動くたび、胸元のマイクロビキニが悲鳴を上げているのだ。 まるで完熟した果実のように、たわわに実った二つの膨らみ。 俺に抱きついているせいで、その圧倒的な質量が俺の腕にむぎゅぅ、と押し付けられている。 柔らかい。とてつもなく柔らかい。 暴力的なまでの弾力と重量感が、脳の処理速度を奪っていく。
「えへへ、主様の匂い、安心します……♡」
彼女は無防備に身体を擦り付けてくる。 そのたびに、豊満な果実がぽよん、ぷるん、と生き物のように揺れ動く。 神獣フェンリル? いや、これはもう凶器だろ。男の理性を破壊する特級呪物だ。
「と、とりあえず離れようか! あと服! それ際どすぎるから!」
俺は慌てて彼女を引き剥がそうとするが、神獣の筋力に勝てるはずもなく、逆に深く抱きしめられる形になってしまった。顔が谷間に埋まる。窒息する。甘い匂いがする。
「その……名前はないのか?」 「フェンです!! よろしくお願いします!!」
フェンは嬉しさのあまり、さらに強く俺を抱きしめた。 むにゅんッ。 再び俺の顔面が、幸福な弾力に包まれる。 ……うん、追放されてよかった。心からそう思った。
◇
「さて、と。いつまでも野宿ってわけにもいかないな」
フェン(巨乳)をなんとか落ち着かせた俺は、生活拠点を確保することにした。 普通の冒険者なら洞窟を探したり、テントを張ったりするところだが、管理者権限を持つ俺にはその必要がない。
俺は適当な開けた場所を指定し、空中にキーボードを展開した。
『 コマンド入力:Create_Object [ House_L_Size ] 』 『 オプション:[ 風呂トイレ完備 ] [ ふかふかベッド ] [ 防音・結界付き ] 』
ターンッ! 俺がエンターキーを叩いた瞬間、ズズズ……と地面が鳴動し、瞬く間に立派な二階建てのログハウスが出現した。
「す、すごいです主様! 魔法ですか!?」 「まあ、似たようなもんだよ」
魔法というよりは、建築データを座標に貼り付けただけだ。 ついでに、ログハウスの周囲に『接近禁止エリア(Ban_Area)』を設定しておく。これで魔物は一切近づけない。
「さあ、入ろうかフェン。今日からここが俺たちの家だ」 「はいっ! ……あの、主様。ベッドは一つですか?」 「ん? ああ、とりあえず一つ出したけど」 「では、お供しますね♡ 寒いといけませんので、私が湯たんぽ代わりになります!」
フェンが頬を染めて、またしても強烈な質量を腕に押し付けてくる。 この「デバッグモード」、夜の方も体力無限設定にしておかないと身が持たないかもしれない。
◇ ◇ ◇
一方その頃。 俺たちが快適なスローライフを始めたとは露知らず、森の入り口付近では、勇者アレクたちが阿鼻叫喚の地獄絵図の中にいた。
「くそっ、なんだコイツら! 硬すぎるぞ!」
勇者アレクが剣を振るうが、下級モンスターであるゴブリンの皮膚に弾かれ、火花が散る。
「おい、魔法使い! 援護しろ!」 「やってるわよ! でも、全然当たらないの! ターゲットが固定できない!」
これまで彼らが連戦連勝できていたのは、全てカイが裏で『敵の防御力低下』と『味方の命中率補正』を掛けていたからだ。 それを知らない彼らは、自分たちの実力が通用しない現実にパニックを起こしていた。
「ポーション! 回復薬を出せ!」 「も、もうありません! さっき使い切りました!」 「はあ!? なんでドロップしないんだよ! いつもなら雑魚を倒せば山ほど出るだろうが!」
アイテムドロップ率100%確定チート。それもまた、カイの仕業だったのだ。 当然、彼がいなくなった今、ドロップ率は通常(激渋)に戻っている。
「ぎゃあああ! 噛まれたぁぁ!」 「撤退だ! 一度引くぞ! クソッ、なんでこんなことに……!」
泥だらけになりながら逃げ惑う勇者たち。 その無様な姿を、遠く離れたログハウスから、俺はコーヒー片手に優雅に眺めるのだった。




