表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/38

第2話 毒キノコのプロパティを書き換えて、ついでに神獣を拾いました

『レベルが 150 に上昇しました』


 脳内に響いたアナウンスに、俺は呆然と立ち尽くしていた。  さっきまで俺を食い殺そうとしていたベヒーモスは、影も形もない。


「……本当に、消えちまったのか?」


 恐る恐る、自分の手のひらを見る。  意識を集中すると、再び視界に半透明のウィンドウが展開された。


『 ユーザー:カイ・ウォーカー 』 『 権限レベル:管理者(Administrator) 』 『 現在のモード:デバッグ(Debug) 』


 どうやら夢じゃないらしい。  俺は、この世界のあらゆる事象を編集・操作できる「管理者権限」を手に入れてしまったようだ。  要するに、今の俺はゲームの開発者(運営)みたいなもの……ってことか?


「……ぐぅ」


 思考を巡らせていると、腹が鳴った。  そういえば、朝から何も食べていない。  勇者パーティを追い出され、この魔の森に放り込まれて数時間。緊張が解けた途端、猛烈な空腹感が襲ってきた。


「何か食うものは……」


 周囲を見渡すが、あるのは鬱蒼とした木々と、根元に生えた毒々しい紫色のキノコだけ。  見るからにヤバい。ドクロマークの模様がついている。


「これ、食ったら死ぬよな……」


 普通ならスルーだ。だが、今の俺には「アレ」が見えている。  キノコを凝視すると、詳細情報プロパティがポップアップしたのだ。


『 アイテム名:デッドリーポイズンマッシュ 』 『 レア度:C 』 『 効果:即死毒(摂取後3秒で心停止) 』 『 味:泥雑巾 』


「やっぱり即死毒じゃないか! しかも味、最悪かよ」


 だが、俺の視界にはその横に、小さな『編集(Edit)』ボタンが表示されていた。  ……これ、いけるのか?


 俺は空中のボタンをタップした。  すると、キーボードのようなインターフェースが現れ、文字の書き換えが可能になる。


「えーと、『効果』の『即死毒』を削除して……『体力回復・大』に変更。で、『味』を……」


 俺は少し迷ってから、欲望のままに入力した。


『 味:最高級A5ランク和牛ステーキ(焼き加減:ミディアムレア) 』


「よし、決定(Enter)!」


『ピロン♪ オブジェクト情報を更新しました』


 見た目は相変わらず毒々しい紫色のキノコだ。  だが、システムを信じろ。俺は意を決して、キノコを齧った。


「――ッ!?」


 口の中に広がったのは、泥の味でも毒の苦味でもない。  溢れ出す肉汁。芳醇な脂の甘み。香ばしい炭火の香り。


「うっま!! なんだこれ、完全に高級ステーキだ!」


 俺は夢中でキノコを平らげた。  食べ終わる頃には、満腹感と共に体力が全快していた。


「すげぇ……。これなら、この森でも余裕で生きていけるぞ」


 水が欲しければ泥水を「ミネラルウォーター」に書き換えればいいし、家が欲しければ木の枝を「ログハウス」に書き換えればいい。  もはやサバイバルですらない。ただの接待キャンプだ。


 そんな風に、俺が万能感に浸っていた時だった。


「クゥ……ン……」


 茂みの奥から、弱々しい鳴き声が聞こえた。  近づいてみると、そこには一匹の小さな銀色の狼が倒れていた。  脇腹に深い傷を負い、血を流している。まだ子供だろうか。


「ひどい怪我だ……」


 ステータスを確認する。


『 個体名:フェンリル(幼体) 』 『 状態:瀕死(残りHP:3 / 50,000) 』 『 備考:古代神獣の末裔 』


「フェ、フェンリル!?」


 伝説級の魔物じゃないか。  本来なら人間が遭遇したら即死する相手だ。だが、今のこいつはただの死にかけのワンコにしか見えない。  つぶらな瞳が、助けを求めるように俺を見つめている。


「……勇者パーティなら、『レア素材だ』って言ってトドメを刺すんだろうな」


 だが、俺は追放された身だ。  それに、弱っている奴を見捨てるのは寝覚めが悪い。


「安心しろ。今、治してやる」


 俺は狼に手をかざした。  ポーションはない。回復魔法も使えない。  だが、俺には管理者権限がある。


 俺はフェンリルのHPバーを指先でスライドさせ、右端まで一気に引っ張った。


『 コマンド実行:[ Full Heal ] 』


 カチッ。


 瞬間、狼の体が眩い光に包まれる。  傷口がふさがるどころか、毛並みがツヤツヤになり、生命力が満ち溢れていく。


「グルルッ、ワオォォォン!!」


 元気になったフェンリルが、嬉しそうに吠えた。  よかった、これで一安心――と思った、次の瞬間。


 光がさらに強まり、狼の輪郭が変わり始めた。  四足歩行の姿から、二本足へ。  毛皮が消え、滑らかな肌へ。


「え?」


 光が収まると、そこには――信じられない光景が広がっていた。




 四足歩行の狼の姿はない。

 代わりにそこに座っていたのは、健康的に日焼けした肌を持つ、絶世の美少女だった。





挿絵(By みてみん)




「……え?」


 俺は目を疑った。

 月光を弾くような銀色のロングヘアーに、ぴょこんと生えた獣耳。

 そして何より目を引くのは、その刺激的すぎる格好だ。


 身に着けているのは、()()()()()()()()()()()()

 極限まで布面積を削ったその衣装は、彼女の引き締まった褐色の肢体と、暴力的なまでに豊満な胸部を、隠すどころか強調していた。


 だが、完全に人型というわけではない。

 両腕の肘から先は、真っ白でフワフワな「獣の毛並み」に覆われている。

 銀髪、褐色肌、黒い水着、そして白銀のケモ腕。

 その色彩のコントラストが、彼女の野性的な美しさを際立たせていた。


 少女は長い睫毛を震わせて瞼を開くと、琥珀色の瞳で俺をじっと見上げた。


「……あー、システムさん? これはどういうバグですか?(最高ですけど)」


「その、フェン……。服はそれでいいのか? 寒くない?」


 俺が目のやり場に困りながら尋ねると、フェンは豊かな胸を張り、マイクロビキニの紐を指で弾いてみせた。


「はいっ! これくらい肌を出していないと、毛並みの感覚が鈍ってしまいますから! これが最強の『狩猟形態』なのです!」


「なるほど、機能性重視ってことか……(絶対違う気がするけど)」


「それに、主様に撫でていただく時も、布がない方が気持ちいいですし……♡」


「……あ、はい」


「我が傷を癒やし、真の力を呼び覚ましてくれたのですね……!」


 少女――フェンリルは、感極まった様子で俺に飛びついてきた。


「貴方様こそ、我がマスター! このフェンリル、魂の果てまでお仕えいたします!」


「……はい?」


 こうして俺は、最強のデバッグ能力と、伝説の神獣(美少女)を手に入れてしまったのだった。  一方その頃、俺を追放した勇者たちが、最初のザコ敵相手に全滅の危機に瀕していることなど、知る由もなかった。



おまけ

諸事情により服を着ています

挿絵(By みてみん)

宣伝です。

ビジュアルノベルゲーム断ち花 制作中

小説 神殿のスキル鑑定で「職業:ノイズ(バグ)」と出たので森に捨てられましたが、実は世界の「デバッグモード」が使える開発者権限持ちでした 制作中

小説 「実話」You◯ube広告がスキップできなくて悲しいと思ってたら突如ゴスロリ女子高生が画面から出てきて俺と戦うことになった。「マジで」 制作中です


Xアカウントはこちら!

https://x.com/LucaVerce

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ