第19話:汗のにおいとカイの解
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翌朝。
村はパニックに包まれていた。
前日に俺が解毒したはずの牛娘たちが、再び胸を押さえて苦しんでいたからだ。
「うぅ……また出んくなった……」
「張って苦しいよぉ……」
広場は呻き声で溢れている。
とりあえず、俺は再び全員に `Cure_Status` コマンドを適用し、一時的に毒を取り除いた。
再び歓声が上がるが、その空気は重い。
「カイ……。これは、どういうことなんじゃ?」
悠乃が不安げに俺を見る。
昨晩、完全に治した。なのに、全員が再発した。
これは「一度きりの事故」ではない。
現在進行形で、この村全体を蝕んでいる「継続的な攻撃」だ。
「……原因を探るぞ」
俺はフェン、ルナ、そして案内役の悠乃を連れて、村の捜索を開始した。
◇
まず疑ったのは、やはり「食事」だ。
毒を盛るなら、食べ物に混ぜるのが定石だからだ。
「給仕係のところへ行くぞ」
俺たちは厨房へと突撃した。
だが、給仕の女性たちをスキャンしても、怪しいステータス異常や所持品は見当たらない。彼女たち自身も毒に苦しんでいた被害者だ。
「……シロか」
だが、今のままでは村人たちは不安で食事も喉を通らないだろう。
ならば、俺の手で「絶対安全な食事」を提供するしかない。それも、俺の権限を使った強引な方法で。
「よし。今夜の飯は俺が用意する。厨房を借りるぞ」
俺は腕まくりをして、大鍋の前に立った。
中には、村人たちが作ったシチューが入っている。だが、俺はそれを煮込むような真似はしない。
そんなアナログな作業は、管理者の仕事ではないからだ。
俺は鍋に向かって右手をかざし、システムウィンドウを展開した。
`Target_Container : [ Large_Pot ]Process : [ Delete_Contents ] >> [ Create_Object : Legendary_Stew ]Add_Effect : [ Virus_Protection (Ver.2.0) ]`
「……実行(Enter)」
カチッ。
俺が指を鳴らした瞬間、鍋の中身が一瞬で光の粒子となって消滅し、次の瞬間には黄金色に輝く「別物」へと置換された。
立ち上る湯気だけでMPが回復しそうな、神々しい香りが厨房に充満する。
これは料理ではない。「データの強制上書き(パッチ適用)」だ。
「できたぞ。『管理者特製・完全無欠シチュー(セキュリティパッチ付き)』だ」
◇
広場にて。
村人たち全員にシチューが行き渡る。
「う、うまいっ!!」
一口食べた瞬間、村人たちの体がカッと発光した。
緑色のシステム光が、全身の血管を駆け巡る。
「なんだこれ!? 体が軽い!」
「腰痛が治った!」
「肌荒れが一瞬で消えたわ!」
毒の除去どころか、日頃のマイナーな不調まで一掃され、村人たちのテンションは最高潮に達した。
「すごいわ主様! みんなピカピカです!」
「ふん……。まあ、味も悪くないしね」
フェンとルナも満足そうだ。
俺は鍋を見つめながら、心の中で独白した。
(……これで全員のシステム脆弱性を塞ぎ、最新のセキュリティパッチを当てた。経口摂取(ポート80)による毒なら、これで完全にブロックできるはずだ)
だが、油断はできない。
俺は悠乃に向き直った。
「悠乃、悪いが手伝ってくれ。念のため、村の水源や倉庫も見て回りたい」
「おう! 任しとき! カイの手伝いなら喜んでやるけぇ!」
悠乃は張り切って腕まくりをした。
オーバーオールの隙間から見える豊満な果実が、やる気に満ちて、たぷん、と揺れている。
◇
それから数時間。
俺と悠乃は、村中を駆けずり回って調査を続けた。
井戸の底、貯蔵庫の裏、家畜の餌場。
悠乃は文句ひとつ言わず、汗だくになりながら狭い隙間に入ったり、重い荷物を動かしたりと大活躍してくれた。
「はぁ、はぁ……。異常なし、じゃね……」
調査が終わる頃には、悠乃は全身汗びっしょりだった。
これが、とてつもなく目に毒だった。
デニム生地のオーバーオールが汗を吸って重くなり、彼女の肌にねっとりと張り付いている。
その隙間から覗く脇腹や、豊かな胸の膨らみは、汗のヴェールで濡れて艶めかしく光っていた。
動くたびに、むわっと立ち上る濃厚な匂い。
若い女性の汗の匂いと、牛人族特有の甘いミルクの香りが混ざり合った、脳髄を痺れさせるようなフェロモンだ。
「あつぅ……。中までぐっしょりじゃわ……」
悠乃がパタパタとオーバーオールの前当てを仰ぐ。
そのたびに、隙間からピンク色の乳輪がチラリズムして、俺の視線を釘付けにする。
「お疲れ、悠乃。……すごく頑張ったな」
「へへ……。役に立ててよかったわ」
悠乃は額の汗を拭い、とろんとした目で大きくあくびをした。
「……あー、眠い。もう限界じゃわ……」
「風呂に入ってから寝たほうがいいんじゃないか? 汗、すごいぞ」
「ううん……もう無理……。風呂まで歩く体力もない……」
悠乃はふらふらと俺の部屋へ入ってくると、そのままフェンとルナが寝ているベッドの端にドサリと倒れ込んだ。
「むにゃ……」
彼女はオーバーオールを半分脱ぎかけの状態で、意識を手放した。
汗ばんだ肢体が、シーツに沈み込む。
その無防備さと、労働の後の野性的な色香。
まあ、今日くらいはいいだろう。
(これで明日の朝、誰も発症しなければ勝利だ)
俺もまた、心地よい疲労感と共に眠りについた。
◇ ◇ ◇
――翌朝。
俺の希望的観測は、無慈悲にも打ち砕かれた。
「うぅぅ……苦しい……」
「ま、また止まったぁ……」
外から聞こえる悲鳴。
俺が飛び起きると、窓の外には再び胸を押さえてうずくまる村娘たちの姿があった。
全員だ。
昨夜、俺の特製シチュー(毒耐性パッチ付き)を食べた全員が、またしても『POISON』状態に陥っている。
「バカな……。経口ルートは完全に塞いだはずだぞ……」
俺は愕然とした。
セキュリティは完璧だったはずだ。なのに、どこから侵入された?
呼吸か? 視線か? それとも未知の魔法か?
その時。
隣で寝ていた悠乃が、むくりと身を起こした。
「んぁ~……。よう寝たぁ……」
悠乃は大きく伸びをした。
汗で張り付いていたオーバーオールの肩紐がずり落ち、露わになった豊かな胸がボヨンと弾むように揺れる。
健康的で、張り詰めた皮膚の下に、たっぷりと液体を蓄えた重量感。
「……ん?」
悠乃が自分の胸元を見た。
そして、無防備にあくびをしながら、重たそうに胸を持ち上げた。
「ん~、なんか朝から胸が張るわぁ……」
彼女が何気なく胸を寄せた、その瞬間。
ビュッ!!
勢いよく、新鮮なミルクがほとばしった。
それは一筋や二筋ではない。
滴り続ける悠乃のミルクが彼女の下腹部へと流れ落ちる。そのミルクはまるでとどまることを知らない。
「「「あっ」」」
俺とフェン、そしてルナの目が点になった。
出た。
村中が毒に侵され、ミルク枯渇に喘いでいるこの地獄絵図の中で。
悠乃だけが、まるで誰かにのんでほしいと言わんばかりに元気に、ドバドバとミルクを噴出させている。
「わ、わわっ!? なんじゃこりゃ! 止まらん! 勝手に出るぅぅ!」
「もったいない!」
フェンが即座に反応した。
野性の本能か、それとも単なる食い意地か。彼女は悠乃の胸元に飛びつき、噴出する射出口に直接口をつけた。
「んぐっ、んぐっ……! ……!ちょっとしょっぱいね…悠乃ちゃん♡」
喉を鳴らして飲む音が生々しく響く。その後まだ飲み足りないのか、舌で先端を往復している。
「ず、ずるいわ姉様! 私だって!…甘くて…ふわふわ…」
ルナも反対側から食らいつく。
二人の美少女が、悠乃の豊満なメロンに吸い付き、溢れ出る恵みを貪る。
悠乃は「ひゃうっ、くすぐったい!」と声を上げるが、ミルクの勢いは止まらない。顔にかかり、首筋を伝い、オーバーオールを白濁させていく。二人は柔らかい胸に顔をうずめて、終いには悠乃を押し倒してしまった。
俺はそのシュールかつ背徳的な光景を真剣に右脳で眺めながら、左脳で高速の思考を巡らせていた。
ただ興奮しているわけではない。
この光景には、事件を解く「鍵」がある。
(なぜだ? なぜ悠乃だけが無事なんだ?)
昨日の行動を振り返る。
食事は? 全員同じシチューを食べた。悠乃も食べた。
水は? 同じ井戸水を飲んだ。
そんなことよりおれも混ざりたいな…。
空気は? 同じ場所で寝起きした。
……待てよ。
一つだけ、決定的な「違い」がある。
昨日の夜。
他の村人たちは、シチューを食べた後、「一日の汗を流すために」村の共同浴場へ行ったはずだ。牛人族は綺麗好きだと言っていたからな。
だが、悠乃は俺の手伝いでクタクタになり、「風呂に入らずに」そのまま寝てしまった。
汗だくのまま、汚れを落とさずに。
つまり。
毒の侵入経路は「口(ポート80)」じゃない。
シチュー(ファイアウォール)をすり抜けた理由はそこだ。
(……決まりだ)
俺の中で、パズルのピースがカチリと音を立ててハマった。
戦慄と共に、俺は確信を得た。
(食事じゃない。飲み水でもない。……皮膚(ポート443)からの裏口侵入だ)
俺の視線は、窓の外――湯気を立てている村の『共同浴場』へと向けられた。
あの湯気の中に、犯人が、あるいは「毒の発生源」が潜んでいる。
「ルナちゃん…フェンちゃん…もうお乳無くなっちゃうってぇ…♡」
「いつまでやってんだよ!」
(続く)
おまけ
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