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第18話 ミルクが出ません。助けてカイ!

悠乃ゆのからの強烈な平手打ちを食らった俺は、ヒリヒリする頬を押さえながら、フェンたちと共に村への道を急いでいた。  悠乃はまだ俺を警戒し、少し離れた位置を歩いている。


「……ほんまに、この男で大丈夫なんか?」


悠乃がフェンに耳打ちする。


「大丈夫よ悠乃ちゃん。主様はちょっと……その、女性の体に興味津々なだけで、腕は確かなの」 「ふーん……。ま、フェンちゃんがそこまで言うなら……」



村まであと少しというところまで来た時だった。


「――ッ! 主様、あそこ!」


フェンが鋭く声を上げ、前方を指差した。  村の入り口付近の茂みに、何かが潜んでいた。


「誰だ!」


俺が声をかけると、その「影」は驚いたように跳ね上がり、脱兎のごとく村の中へと逃げ込んでいった。


「待て!」


俺たちは走り出した。  だが、その影は速かった。  一瞬だけ見えた後ろ姿は、黒っぽいボロ布を纏っているようだったが……速すぎて、よくわからなかった。  毛皮があるのかないのか、大きいのか小さいのかすら判別できない。  ただ、何とも言えない不気味な気配だけを残して、影はサイロの陰へと消えてしまった。


「逃げられたか……」 「今の、何だったんでしょう?」


フェンが鼻をひくつかせるが、正体は不明のままだ。  得体の知れない不安を感じつつも、俺たちは『ホルスタインの村』へと歩を進める。



―ここでおれは以前、銀狼の村で見た『スカル』と同じようなものを目にする。さらにここでは美しい銀狼の女性の横顔の様なものがプリントされた…旗も目にする。


「なあ、なんでこんな牛人族の村にこんな他種族の旗があるんだ?」


「ああ、これはですね、要は牛人族の村を攻撃した場合、銀狼村、族長『ガルム』が許さない。という無言のプレッシャーの様なものだと思ってください。」


なるほど。旗があるだけで敵種族を牽制できるということは、やはり、族長はただものではなかったということか。まあフェンとルナがあの強さだしな。



そして俺たちはとうとう…ホルスタイン村の中へと足を踏み入れる


そこは、想像通りの――いや、想像以上の「楽園パラダイス」だった。  牧歌的な風景の中に、豊満な果実を携えた牛耳の美女たちが溢れている。


「ああっ! フェンちゃんにルナちゃんじゃない!?」 「うっそー! 来てくれたのー!?」




挿絵(By みてみん)






俺たちの姿を見つけるなり、牛娘たちが駆け寄ってきた。  その光景たるや、まさに暴力的だ。  悠乃と同じオーバーオール(中は素肌)の娘。  短いホットパンツに、前で結んだだけのチェック柄シャツの娘。  そして極めつけは――牛舎から出てきた、おっとり系のお姉さんだ。


彼女が着ているのは、俺が夢にまで見た『牛柄マイクロビキニ』そのものだった。  白と黒のまだら模様。面積は極小。  歩くたびに、重量感たっぷりの双丘が、たゆん、たゆんと重々しく揺れている。  物理演算エンジンの限界に挑むかのような、圧倒的な質量と揺れ。




挿絵(By みてみん)




俺は昇天しかけた。ここが天国か。


「ムーちゃん! 久しぶりだねっ!」


フェンが尻尾をブンブン振って、マイクロビキニのお姉さん――ムーちゃんに飛びついた。


「わぁ~、フェンちゃん! 元気だった~?」


むぎゅぅぅぅっ。  フェンのスレンダー巨乳と、ムーちゃんの巨乳が正面から激突する。  柔らかいもの同士が押し合い、変形し、一つに溶け合うような圧巻の光景。しかし…フェンも負けてないな…サイズ感でいったら5分5分じゃないか?


「ルナちゃんも! 大きくなったわねぇ~」 「……久しぶりね、ムー姉」


ルナは少しそっけない態度だが、その尻尾は嬉しそうにパタパタと揺れている。  ムーちゃんは「よしよし~」とルナを抱きしめ、その豊満な胸の谷間にルナの顔を埋めさせた。


「んぐっ……! く、苦しい……」 「あらあら、ごめんねぇ~」


かつてない眼福シーン。  俺が呆けてその光景を眺めていると、悠乃が冷ややかな声で言った。


「みんな、聞いてぇな。こっちの男が……」


悠乃は俺を指差し、声を潜めて言った。


「……カイっていう、ドスケベ変態治療師じゃ」


「「「えぇー……」」」


村娘たちが一斉に引いた。  さっきまでの歓迎ムードが一変、全員が自分の胸元を手で隠し、警戒心剥き出しの目で俺を見てくる。  ムーちゃんすらも、「あらやだ……」と胸を腕で守った。


「やだ、変態なの?」 「おっぱい星人ってこと?」 「近づかないでくださいね、角で突きますよ?」


辛辣すぎる。  俺は咳払いをして、前に出た。


「ごほん。……紹介に語弊があるようだが、俺はあらゆる不具合バグを直せる専門家だ。ミルクが出ないという深刻な症状も、俺なら治せる」


俺はビシッと指を鳴らした。


「論より証拠だ。ムーさん、診察させてくれないか?」 「えぇ~……。でもぉ……」 「大丈夫よ。腕だけは確かだから」


フェンのフォローもあり、ムーちゃんはおずおずと前に出た。  俺は彼女に手をかざし、システムウィンドウを展開した。  触る必要はない。データを見るだけだ。


Target: Holstein_Girl_Mu Status: POISON


(……ん? 毒(POISON)か)


ステータス異常の欄には、シンプルに『POISON』とだけ表示されている。  どこで貰った毒かは知らないが、これなら話は早い。


「ああ、これなら俺でも治せるな」


俺はさらっと言い放ち、コマンドを入力した。


Command : Cure_Status [ POISON ]


カチッ。


「……あ」


ムーちゃんが声を上げた。  その瞬間。


ビュッ――!


彼女の胸元から、真っ白なミルクが勢いよく噴き出した。


「きゃあぁっ!?」 「で、出たぁぁぁ!!」


周囲の牛娘たちが歓声を上げる。  ムーちゃんは自分の胸を抱え、涙目で喜んだ。


「すごぉい……! 詰まってたのが嘘みたいに軽くなったわ!」 「ほんまじゃ……! カイさん、あんた凄いのぉ!」 「変態だけど腕は確かなのね!」


こうしておれは至福の残業を一人ひとり行い、ミルクにまみれた体をぬぐいながら最後に悠乃の症状を治した。


一瞬で俺への評価が(変態という枕詞付きだが)爆上がりした。  俺は他の村娘たちにも次々と Cure コマンドを適用していった。  村中に歓喜の声と、ミルクの香りが満ちていく。


俺は村長と杯を交わし、周囲で楽しそうに飲み食いするフェンやルナ、そして牛娘たちを眺めた。  牛柄ビキニのベルさんが、フェンにチーズを食べさせている。  ルナはモモちゃんの膝の上に乗せられ、子供扱いされて怒っているが、尻尾は揺れている。  平和だ。  毒の原因なんて些細なことだ。俺がいれば、どんな異常も即座にデバッグできるのだから。


その夜は、牛人族特有の濃厚なチーズ料理と、復活したミルクを使ったシチューが振る舞われ、俺たちは深夜まで宴を楽しんだ。


◇ ◇ ◇


――翌朝。


俺は女性の悲鳴で叩き起こされた。


「ど、どうしよう……ッ!!」 「またよ! また止まっちゃった!」


俺は慌てて飛び起き、外へ出た。  そこには、青ざめた顔のムーちゃんたちが集まっていた。  彼女たちの胸は、昨日治療する前と同じように張り詰め、苦しげに上下している。


「カイ! どういうことなんじゃ!? 朝起きたら、また出んようになっとったんよ!」


悠乃が目に涙をためて詰め寄ってくる。  俺はすぐにウィンドウを開き、彼女たちをスキャンした。


Target: Holstein_Girl_Mu Status: POISON


(……は?)


また『POISON』になっている。  昨日の夜、確かに完治させたはずだ。ステータスは『Normal』に戻っていた。  なのに、一晩で全員がまた同じ状態異常にかかっている?


(再発? いや、食べ物か? それとも空気感染?)


俺は周囲を見渡した。  村の様子は昨日と変わらない。  だが、俺の脳裏に昨日の「影」のことが過った。  正体不明の、あの速すぎる影。


「……何かがおかしい」


単なる病気じゃない。  俺の『管理者権限デバッグ』を嘲笑うような、不可解な現象。  この楽園のような村に、得体の知れない「悪意バグ」が潜んでいる。


(続く)

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