18 1秒間の勝負
シンヤがついに仕掛けた。
彼ら凶暴な知性体は、欲望そのもので動く存在。
知識を奪うこと、精神を喰うこと、それ以外に興味などない。
だからこそ、餌はシンヤの思考そのもの。
シンヤは二隻の防御バリアを改造し、多次元フィールドを網として構築した。
1光年規模の巨大な捕獲空間。
中央に立つのは、宇宙服一つのシンヤ。
「ここに来るには、奴らも個体にならなきゃならない。
個になった瞬間、それが勝負だ。」
AIたちは二隻の同期を完全に自動化し、フィールドの動作は完璧。
仲間は唇を噛み、シンヤを見守るしかなかった。
気配ではない。
宇宙のひずみそのものがシンヤを見つけた。
シンヤの思考が放つ甘い光に誘われるように、闇が凝縮し、一つの個体へとまとまっていく。
彼らは知らない。
3次元では、その力が制限されることを。
知識としては知っていても、使える訓練をしていないことを。
ただ欲望だけで動く幼稚な怪物。
知識の塊ではあっても、戦士ではない。
宇宙全体が呼吸を止めた。
シンヤの脳と心は、生まれてからずっと鍛えられてきた。
この次元にいながら、同時に多次元の力を扱う特訓。
いわばひよっこ殺しの奥義を習得した師範代のようなもの。
対して相手は、ただの赤子。
知識は山ほどあっても、使い方を知らない。
だから、シンヤは勝てた。
その1秒だけは。
「いくぞ!」
シンヤの思考が、光の津波となって相手の精神を焼き切った。
瞬間、宇宙の深部が爆ぜる。
吸収され続けてきた膨大な精神エネルギーが解放され、連鎖的に広がってゆく。
隊員全員が感じた。
「……彼らが、帰っていく」
この宇宙ではない、遥かな元の宇宙へ。
奪われた意識、喰われた知性が解放され、光となって帰還していく。
もしシンヤが敗れていたなら
彼の精神はフィールド内で無限地獄のように味われ続ける運命だった。
勝負は完全な博打だった。
仲間たちは震えた。
「……本当に、勝ったんだよな。シンヤ……?」




