16 侵攻の前兆:宇宙が震えた日
帰還して3日後。
艦は補給と損傷チェックのため、周辺宙域で静止していた。
だが、その穏やかさは突然破られた。
最初に異変を感知したのはハルだった。
「警告後方宙域に時空の収縮波を確認。自然現象ではありません。」
ブリッジのスクリーンに映る宇宙の黒が、少しずつ、盛り上がるように歪んでいく。
その様子は、まるで
巨大な何かが、別の次元から押し出されてきているような
そんな、不吉な動きだった。
シズ少尉が息をのむ。
「……まさか、あいつら?」
俺は無言でうなずいた。
ブリッジ全体に、唐突にざざっという感覚が流れた。
音じゃない。
脳に直接、砂をこすり付けられるような**思考のざらつき**が走る。
乗員たちが一斉に頭を押さえた。
「やめろ……これは、あの時の……!」
そのノイズの本質は、ただひとつ。
弱者を探すための思考走査
あの凶暴な知性体が、こちらの次元を触っている。
「……信じられません……思考圧が、こちらの次元の外側から……
シンヤ、これは……本当に……来ます」
声が震えていた。
時空の歪みが一気に加速した。
画面にひび割れのような光が走る。
それは、宇宙そのものが割れているような錯覚を与える。
「来るぞッ!」
俺が叫んだ瞬間、空間が破れた。
音のない、巨大な破砕音が脳に響く。
そこから現れたのは……
黒でも白でもない。
輪郭すら安定しない。
触手のように揺れ、次の瞬間には霧のように消える。
存在という概念そのものが、こちらの物理法則を守っていない
シズ少尉が言葉を失う。
「あれが……知性体……?」
俺は、自分の喉が乾くのを感じた。
それでも、意識が触れただけで心が崩れそうになる。
そして、その怪物はこちらを見た。
目はない。
だが、確実に認識された。
その瞬間。
俺だけに、別の声が降ってきた。
シンヤ。聞こえるか。
奴らが動き始めた。
お前の選択が、宇宙を変えた。
人間のまま、どう戦うか。
見せてもらおう。
声はそこまでだった。
凶暴な知性体は、いよいよこちらの次元へ侵入を開始した。
偵察個体が現れたということは、次は本隊が来る
そしてその目的はただ一つ。
喰うため、知識を。意志を。文明すらも。




