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新米士官の秘密  作者: HAL
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13 重層時空域(Multi-Layer Causality Field)

 守護者の声が、あなたの思考の裏側で淡く響く。


「おまえ達の宇宙は平面じゃ。

 彼らの空間は、その下にある階層じゃ。」


 誤解してはいけない、と守護者は言う。


「彼らは異世界にいるのではない。

 おまえ達がいる場所の真下におる。」


 空間は3次元ではない。

 時間を含めても4次元ではない。


 この宇宙は、本来10次元以上の折り畳まれた構造物だ。


 人類文明はそのうちの4次元の表面だけを使っている。


 彼らはその下。

 5〜8次元の時空層を主な生活圏としている。


 重なっている、というのはこうだ:

 君が見ている宇宙空間

 彼らが見ている宇宙空間

 これは同じ場所に存在するが、

 異なる階層に属しているため干渉しにくい。


 たとえるなら:

 君たちは本のページに描かれた絵

 彼らは本そのものの構造

 絵として存在する君たちは、本の厚み(高次元)を認識できない。


 守護者の説明は、あなたの脳に直接構造イメージとして流れ込む。

「おまえ達の時間は一本の線じゃ。彼らの時間は層になっておる。」

 何枚もの薄い膜が重なり、互いに微妙に影響し合う巨大な構造体


 過去と未来を別方向として扱える

 時間を折り畳んで移動できる

 自分の存在を複数の時間層に散らせる

 他者の過去の思考を覗ける

 つまり、

 時間そのものが彼らの武器であり、感覚器官である。

 君たちにとって真空は何もない。

 だが彼らにとっては違う。


「彼らの時空層は、空間そのものが思考の泡で満ちておる。

 空域そのものが、彼らの脳の延長なんじゃ。」


 空気はいらない

 光すら不要

 物質は二次的

 空間=神経網

 彼らは、空間そのものを「考える場」として使う。

 そしてその考える場が、

 今あなた達の前に広がっている暗黒空域そのもの。


「高次元思考波に晒されると、脳の因果律が壊れる。」


 君たちの脳は4次元に最適化されているため、

 5次元以上の思考波は以下の異常を起こす:

 視覚と時間の区別が曖昧になる

 言語野が時間の流れに遅れる

 身体の位置情報が不連続に感じる

 自己認識が分裂する

 他者の思考が自分のもののように聞こえる

 過去と未来の感覚が混濁し、意識が崩壊する

 つまり、

 彼らの空間に踏み込む=脳のOS崩壊。

 さきほど皆が苦しんだのはその入口に触れたため。


「彼らは移動していない。

 おまえ達が、たまたま重なっただけじゃ。」


 時空層は流動している。

 銀河の重力の歪みに応じて揺れ動く。


 時に、上位の時空層が下位の時空層へ滲む現象が起こる。


 今、君たちの船がいる場所は、まさにその滲みの真上。


 彼らは意図していない。

 ただそこにいるだけで、人間は壊れる。


「だから言ったろう?

 ここは戻れなくなる境界じゃ。

 だが……

 おまえだけは、なぜか壊れん。

 それが呼ばれた理由じゃよ。」


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