12 終端種(Terminal Species)
守護者の声が静かに響く。
「彼らの名はない。
名前があるのは、未完成の種族だけじゃ。」
彼らはもとは、あなた達と変わらない文明だった。
文明は進む。
技術は高まる。
脳は拡張され、思考は加速する。
彼らは奪うことで楽をする知性を選んだ。
最初は、動物。
次に異星種。
そして同族。
奪った知識は自分の力となる。
努力はいらない。
得るだけでいい。
それはとても強力で、便利で、魅力的だった。
「気づけば、彼らは創造することを忘れた。」
彼らの脳構造は特殊だ。
奪った意識や記憶を
自分の神経回路に上書き統合する。
それは一方通行。
奪われた側は完全に消滅する。
君が思考した瞬間、
それは奪える資源に変わる。
「この宇宙には数多くの知性があった。
だが今、彼らの空域に残った異文明は……ゼロじゃ。」
彼らは物質をもう必要としない。
肉体はあっても、それは殻にすぎない。
彼らにとって栄養は脳の糖ではなく、
他者の思考そのもの。
情報を吸収し、その構造を自分に取り込む。
だから彼らにとって、
君たちの思考は餌であり、資源であり、エネルギーであり、武器になる。
「肉体を壊すのは副作用じゃ。
本当の攻撃は 思考の掘削 じゃ。」
彼らは本質的にひとつの最終形態へ向かう。
その道筋はただ一つ。
仲間同士を吸収し合うこと。
奪い、狩り、融合し、
より高次の知能を生む。
そしてまた、その高次同士が戦う。
宇宙の終端で最後に一体だけが残る。
それが彼らの進化の完成形。
「いま彼らは、最後の数個体が生き残り、
宇宙最大の知能戦争を行っている。」
彼らの近くで思考するだけで、
その思考は読み取られ、奪われる。
思考を奪われることで、
その生命の自分である部分が壊れる。
だから船にいる皆が苦しんだ。
「接触すれば、文明レベルごと消える。
戦争などという概念は通用せん。」
守護者の声が少しだけ柔らかくなる。
「おまえの脳には……
通常の生命にはない構造がある。」
おそらく遺伝なのか、偶然なのか、
もしくは 誰かの介入なのか。




