禁書
この魔法の国には1冊の禁断の書がある。その書を開くとこの世界が終わってしまうといわれている。
この世界は最高だ。偉大な魔法使いの私は大活躍をしている。空を飛び、火炎を操りゾンビ軍団を退け、吹雪を呼び巨大なゴーレムを封じ、閃光の矢で邪悪な魔竜を塵に変える。邪悪な魔竜を倒した後は、各国の王子達からの求婚がひっきりなしだ。人は私を「至高の魔女」と呼ぶ。
今、私の目の前に禁断の書がある。この本を開けばこの世界が終わるという。世界が終わるなんて。この私、「至高の魔女」の力があればそんな事が起こるはずがない。
私は、好奇心と慢心から本を開く。分厚い本は細かい文字でびっしりと埋め尽くされている。高位の学者でも一読するのに数年はかかるだろう。私は呪文を唱えた。
「イク ブレッターレ イン ビューヘァン」
本の内容が瞬く間に私の頭に流れ込む。
本には、以下の文があった。
「空中飛行には土地所有者の許可が必要です」
「許可のない死体の焼却は禁止されています」
「魔法生命体の冷蔵保存には許可が必要です」
「竜は絶滅危惧種として保護されています」
「不特定多数の異性との交際は罰せられます」
「立ち読み禁止」
世界から魔法の力が失われていくのを感じた。
その禁書の名は「ルールブック」