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三題噺もどき4

華金

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななひゃくきゅう。

 




 今日も、日課の散歩に行こうと。

 フロントから出て、気持ち晴れている空を見上げる。

 半分ほどに削れてしまった月は、それはそれでオムライスのようでおいしそうだ。

 ちなみに今日の昼食はパスタだった。

「……ふぁ」

 しかし今日は、やけに眠い。

 睡眠はしっかりとっているはずなのだけど、仕事中も少々集中に欠けた。

 それでもどうにかできる仕事はやったので問題はないのだけど。

 その眠気覚ましもかねて、今日の散歩は少し遠くまで歩いてみるか。



「……」

 と、そう思って歩いていたのはよかったのだけど。

 この辺りは住宅街ではあるのだが、少し外れると大通りに出る。

 とはいっても、都会に比べたら大した賑わいもない、比較的静かな通りなのだけど。

「……」

 たまには、その静かな大通りでも歩いてみようかと思ったのがよくなかったのか。

 なんというか……すでに道路は赤信号が点滅するだけになっている。車通りは多少あるが、走っているのは見た限りタクシーや大型トラックくらいだ。

 時計の針はきっと真上を通り過ぎているだろう。

「……」

 住宅街から大通りに出る、狭い道から見えた景色に、思わず唖然とした。

 深夜の何時かもわからないようなこんな時間に。

 歩道に、いくつかの塊があった。

 それがどうしたと言う感じだが……。

 それぞれは小さな集団ではあるが、それが点々とあってはすべて同じ一つの大きな塊に見える。

 人間が集まっていること自体はどうでもいい。まぁ、別に何もしてこなければ。

「……」

 しかしそのどれもが、どうにも賑やかで喧しいというか……。

 集団の中でも数人、大人しい人間もいるようだが、ほとんどが騒ぎたてていて耳が痛い。

 明らかに酔っぱらいの集まりにしか見えない。

「……」

 こんな時間にどうして、人間がこんなに出歩いているんだろうか。

 この通りに、これだけの人が居るのは初めて見たのだが……まぁ、滅多に来ることがないから仕方ないのだけど。いつも行くスーパーはこことは反対側にある。

 せめてあちら側に行けばよかった……。

「……」

 そういえばここは、飲み屋が数件立ち並んでいるのだった。

 そして、こういう生活をしていると忘れるが、今日は週末である。

 華金というのだったか……?今はもう言わないだろうか。知ったことではないが。

「……」

 なぜ風船が浮かんでいるんだ?余興か何かでもしたのか?

 何をそんなに大声で騒ぎ立てている?暴漢か何かにでも襲われたのか?

 そこで転がっているやつは何だ……寝てるのか?

「……」

「……」

「……」

 戻るか。

 すこし人間観察もかねて、行ってみたい気持ちはなくはないが。

 それ以上に喧しくて聞いていられない。この時代に似つかわしくない言葉が聞こえるが。

 花見をしている人間や、祭りを楽しむ人間は、別段見ていても苦にはならないのだけど。

 こういう集団は、私は苦手なようだ……あと普通に酒臭い。ここまで匂いがする。

「……」

 帰って、猫に癒されでもしていないとやってられない。




「おかえ……飲んできたんですか?」

「そんなわけがないだろう……」

「何をそんなに疲れてるんですか……」

「あとで聞くから、とりあえず猫をくれ」

「……嫌ですけど」










 お題:風船・猫・時計

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