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エピローグ ――謎に魅せられて、言葉を綴る

私は小さなころから、謎や不思議なことが好きでした。


UFOにUMA。幽霊に異常現象。雪男にバーミューダトライアングル。


電池もないのにゼンマイ時計がどうして動くのか不思議で、

6才の時、ドライバー片手に分解して――

家じゅうの置時計を片っ端からばらして、親に叱られたこともあります。


あの頃、世界は謎に満ちていました。

「これは何?」「どうして?」「なぜ?」

それをひとつずつ知っていくことが、楽しくて仕方がなかった。


でも、大人になり、歳を重ねるにつれて、

謎はだんだん“答えのあるもの”に変わっていきました。

学校で教わる「常識」や「公式」で、多くの不思議が説明されるようになり、

やがて、“わからないまま”のことが、少しずつ減っていったのです。


……それでも、私は謎が好きです。ミステリが大好きです。


分からないままの謎も、分かったあとの謎も、どちらも愛しい。


とくに、「わからない」が「わかった」に変わるその一瞬――

その快感こそが、ミステリという物語の核心だと思っています。


しかも、推理小説の謎を解くのに、

年齢も、資格も、専門知識も、哲学書の知見も必要ありません。


必要なのは、ほんの少しの観察力と想像力、

そして――あなた自身がもつ”知性”だけです。


推理小説は、誰もが「答えにたどり着ける可能性」を与えられている。

だからこそ、ミステリは“フェア”で、“知的”で、“美しい”のです。



私が思う理想の推理小説とは――


10人が読んで、10人がすぐに解けてしまうものはダメです。

しかし、誰ひとりとして解けないものは、もっとダメです。


10人が読んで、その中の5人が「解けた!」と叫び、残りの5人が「くやしい!」と歯噛みする。


――それが、私の理想とするミステリです。


ちゃんと「考えれば誰でもわかる」。

でも、「ほんの少し見落とすと、わからない」。


その絶妙なバランスの中にこそ、

私が追い求める“フェアプレイの美学”があるのです。






ここまで、ずいぶんと偏ったことを、偉そうに書いてきました。


このエッセイで語ってきた

トリックの精度、構造の誠実さ、読後の納得感――


私なりの「フェアな推理小説へのラブレター」でもあり、

それらはすべてが、私自身に向けたブーメランでもあります。


「じゃあ、お前はそれを書けるのか?」


……自分の中の何かが、そう怒鳴っている気がします。



だけど――

ここまで語ってしまった以上、書くしかありません。



だから、いつか。

そう、“いつか”――


まずは「自分が納得のできるミステリ」を書いてみたいと思っています。


このエッセイは、私の“好き”と“こだわり”が詰まった偏愛の記録です。

私はミステリを愛してやまない。

そのミステリをこんなふうに見ている人間もいるんだな、と笑ってもらえたら嬉しいです。


……本当に長い旅でした。

でも、あなたと一緒に“謎”の話ができて、私はとても幸せでした。


そして、いつか、どこかで。

あなたとまた、“謎を解く物語”の中で再会できたなら。


そのときは、どうか――

私の書いたトリックに、本気で挑んでみてください。


ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

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