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天才マニピュレーターの逆転殺  作者: アトラ


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逆転の一手

 バルガとの戦いから数週間が過ぎた。


 その間に、幻影会(レムナント)について軽く調べて見たが、足取りは掴めなかった。


 念の為、メアリアにも情報共有を促してみたが、何も知らないらしい。


 バルガは自らの情報をペラペラと開示してくれたが、組織自体は口が堅いようだ。


 まあ、幻影会(レムナント)に関しては後回しで良い。


 今の俺には、他にやらなきゃいけない事が沢山ある。


 全ては逆転による栄養素を収集する為に……。


 「ようこそ、我がアジトへ」


 一定のテンポで奏でられる足音が聞こえたと同時に、俺は訪問者のメアリアに声をかける。


 「よくこんな短期間で作り上げたな」


 メアリアは周りをぐるりと見回しながら、そう呟いた。


 「お前が一番分かってるはずだ。想像の力をもってすれば、このくらい容易いと」


 「全体像の事ではない。装飾の話だ。強い想像力が無ければ、こんな入り組んだ装飾を作り出すのは不可能に近い」


 「褒め言葉と受け取って良いのか?」


 「褒めては無い。関心しただけだ」


 メアリアは色々と気難しい人間だ。


 彼女と会話を交わす度に、大きな障壁が目の前に立ち塞がる。


 彼女に隠された真実を解かない限り、この障壁を壊すことはできないだろう。


 俺がいつか必ず真実を解き明かしてみせる。ただの興味本位だ。


 「じゃあ、ルームツアーと行こうか」


 「必要ない。先に全部見てきたからな」


 俺が地下深くに作り上げたアジトはかなり広い。


 普通に見回るだけでも、1時間はかかる見込みだ。


 しかし、彼女に嘘の気配は感じられない。


 今からでも嘘発見器を作り出して、検証するという手もあるが、そこまでする必要性はないだろう。


 「なら、手合わせ願おう」


 「なんだと?」


 「前に言っただろ。俺の付き人になれって。付き人がそう簡単に死なれたら困るんだよ」


 「お前の付き人になる気はない。それに私は戦いに興味は無い」


 「本当に戦いに対して興味が無いのなら、あの時バルガにトドメをさそうとしなかったはずだ。自分でもそう思わないのかメアリア」


 「あの時は体が勝手に動いただけだ。お前の能力でな」


 「俺は何もしていない。メアリア自身で考えた行動だ」


 「くっ……」


 メアリアはそっぽを向いて、唇を噛み締める。


 「どうする? やるのか?」


 「わかった……だが、条件がある。私が勝ったら、お前に渡した力を返してもらう」


 「俺が勝ったらどうする」


 「お前の付き人になる。それで良いな?」


 「もちろん」


 メアリアがずっと俺に固執する理由が今になってよくわかった。


 どうやら、彼女は俺の能力を取り戻そうとしているらしい。


 「それで、試合会場はどこだ?」


 「何も無い広い空間があっただろ。そこで戦う」


 「分かった。さっさと移動しよう」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 このアジトは、ただ生活をする為だけに作り上げたものでは無い。


 能力の研究、作戦会議、物資の保管など……用途は様々だ。


 今回は日頃から能力の研究に使っている、何も無い箱型の真っ白な空間を使用する。


 この空間が技によって崩壊することは無い。


 なぜなら、壁が全ての攻撃を吸収するように出来ているからだ。


 どういう仕組みかは自分でもよく分からない。


 一つ言えるのは、想像力は無限の可能性が秘められていると言うことだけである。


 「勝利条件はどうする? メアリア」


 「相手に負けを認めさせたら勝ち。それで良い?」


 「うん、それで行こう」


 俺は石から加工した三つのビー玉をメアリアに手渡した後、メアリアの肩に触れ、想像力の源を半分分け与える。


 「これで戦えという訳か」


 「想像力を自分に付与するのは禁止。よって、お互いに所持しているその三つの駒をどのように使うのかで勝敗が決まる。故に、想像力だけでなく、判断力も求められる」


 「なるほど、ルールは把握した。じゃあ試合開始」


 刹那――メアリアの手先から黒い帯のようなものが飛んできて、俺の身体を巻き付ける。


 咄嗟に足掻いて見せるが、キツく縛られた帯が破れることはない。


 俺の駒は、ズボンのポケットに入っている。


 1ミリでも触れさえすれば、想像力で何とか出来るのだが、腕と体が密着して、ポケットに手を突っ込むことさえ封じられている。


 自身に想像力を付与出来ないというルールを作ったのが、仇となってしまったようだ。


 「おい、卑怯だぞ!」


 「いつ始めるかなんてルールは無かった。だから、私がさっき作っただけの話」


 「油断した俺が悪いとでも言いたいのか?」


 「当然でしょ、敵に卑怯とかそういう概念なんてないから」


 メアリアはそう言って俺のポケットから、ビー玉を全て奪い取る。


 「確かにお前の言う通りだ。けど、俺は死ぬまで負けを認めない。さあ、どうする」


 「そっちがその気なら、残念だけど息の根を止めるしか無さそうだね」


 メアリアはビー玉を一つ摘んだ次の瞬間だった。


 「っ……頭が……」


 メアリアは足をふらつかせながら、その場に倒れ込む。


 すると、俺の身体に巻き付かれた帯が緩み、動けるようになった。


 「俺の勝ちだメアリア。負けを認めればその術は解いてやる」


 「……認める! 私の負けだ!」


 「あれ、もう少し躊躇すると思ってたんだけど……」


 「早く解け!」


 「はいよ」


 触れると目眩がするという想像――念の為、ビー玉に細工をしておいた甲斐があったようだ。













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