表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才マニピュレーターの逆転殺  作者: アトラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/3

想像とあずきバー

 転生してから、11年の月日が流れた。


 前世では『天坂礼あまさかれい』として活動していたが、もうその名は無い。


『リヴ・シャンデリア』――それが俺の新しい名だ。


 今は母親の『レフト・シャンデリア』、父親の『ライト・シャンデリア』と共に平凡な暮らしを送っている。


 だが、それはあくまで表での話。裏では、前世と同じように修行を積み重ねていた。


 この世界のありとあらゆる知識を詰め込み、身体能力を向上させる。


 効率を考えれば、結局これが最適解なのだ。


 とはいえ、修行ばかりしていると栄養素が疎かになる。


 栄養素を摂取しないと死ぬ訳では無いが、精神的にも身体的にも悪い影響が生じているのは、過去の経験からして間違いない。


 だからこそ、修行の合間に廃村へ出向き、定期的に湧いてくる狼のような動物を殺し続けているのだが、貰える栄養素は日に日に減っていく。


 そもそも、一体につき貰える栄養素が極端に少なすぎる。


 ――感情があり、言葉を発することのできる格のある人物。


 より多くの栄養素を得るためには、そんな強者を探し出し、逆転し無ければならない。


 かといって、今そんなやつに出くわせば、フルボッコにされるだけだ。


 何か力が欲しい。


 修行で手に入らないような未知の力が……。


「ちょっくら見に来てみたら、まさかこんな所にガキがいるとはなあ。驚いたぜ」


 背後から嫌な足音が聞こえる。


 振り向いてみれば、大柄の男が堂々と近づいできていた。


「残念だけど君に構っている暇はないんだ。今日の目的は果たしたし、さっさと帰らせてもらうよ」


「おっと、この俺様がそう簡単に逃がすとでも?」


 男がそう言った次の瞬間、俺の周囲を囲むように狼の群れが現れた。


 俺が栄養素の糧にしていたあの動物と容姿が一致している。


 そこら辺に住み着いている動物だとばかり思い込んでいたが、まさかこの男が生み出していたものだとは思わなかった。


「アルブリム、リタ、パーブル、ノック、ライガ、ヴァルフ、ナハル、グレイブ、スファン、ルーマニア、アガス、フォル、トッポ…………」


 何かの呪文でも詠唱し始めたのだろうか。


 いや、違う。視線と指を指している方向からして、時計回りに狼一匹一匹の名前を呼んでいるだけだ。


 恐らく、順番が男に戻ってくれば一斉に狼が襲っているのだろう。


 そうなる前に、ここから逆転する方法を考えるしかない。


 まず、この狼は一見強そうに見えて、とてつもなく弱い。


 どこか適当に殴ったり蹴れば、一発で成仏するくらい弱い。


 しかし、いくら弱い生き物でも、群れを成せば大きな驚異へと生まれ変わる。


 ならば、狼の名前を一匹ずつ呼んでいる男を直接叩くしか無いのだが、勝ち目は無いだろう。


 筋肉量も体格も俺の上位互換なのだから。


 さて、どうしたものか……。


 空を飛んで逃げる?


 そんなことは出来ない無い。


「……ナイトファウルよ。そのガキを喰らい尽くし、養分にするのだ!」


 ――終わった。


 狼が一斉に駆け、負けを確信したその時、俺の目の前に何かが現れた。


「お前は……」


 特徴的な黒い服には見覚えがある。転生した際、俺を覗いていた少女だ。


 きっと、走馬灯でも見ているのだろう。


 刹那――少女は何も言わずに手を差し伸べる。


 俺は思考する間もなく手を掴んだ。


 すると、俺の体が少女と共に浮き始める。


「……浮いただと!?」


 地で叫ぶ男の声で俺は我に返る。


 どうやら、夢では無いらしい。


「私の力が欲しいか?」


 少女は空中で冷酷に語りかける。


「嫌と言ったら?」


「無理やりにでもお前に力を授ける。そして、私は落下して死ぬ」


「ほう。その力とやらが、人体に悪影響を及ぼすものだとしたら、君は悪魔だね」


「明確な欠点はない。強いて言うなら、この力を持った者は精神的に追い詰められる事になる」


「分かった。けど、死ぬ前にちゃんと説明書は残していけよ」


 少女は少し間を開けて話し出す。


「この力は想像力で出来ている。自分と触れた物に対して脳内で考えた想像が効果として発揮する。これで理解できたかな?」


「ああ、バッチリだ」


 その瞬間、少女は俺の手首を強く握りしめた。


 形容し難い液体のような何かが体に流れ込んでくる。


 何かが全身に回った時、浮遊効果が解け、すぐさま落下していく。


「……くっ、離せ! 死なせろ!」


「死なせてやるよ。アイツを倒した後にな!」


 俺は脳内で宙に浮く想像をし、己に付与する。


 すると、空中で留まることができた。


 やはり、少女の言っていたことは本当だったようだ。


「な、何をする気だ!」


「お前をあずきバーにしてぶっぱなすんだよ!」


 はてなマークを浮かべる少女に目もくれず、俺は『全身があずきバー並の硬さになる』という想像を腕から流し入れる。


 その後、自分にかけた浮遊を解除し、己にパワーが100倍になる想像を付与する。


 そして……。


「オラァァッ……!」


 俺は大柄の男に向かって少女を空中からぶん投げた。


 その速度は誰の目にも追うことは出来ない。


「何ィィぃぃぃぃぃぃィィ……!」


 大柄の男は少女と激突し全身から血を吹き出す。身の回りにいた狼も全て消滅してしまった。


 俺は地面に着地し、その威力を見て思った。


 これは逆転に使える……と。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ