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第九話 長老の依頼(4)

次の日、俺たちは訓練場に来ていた。

長老からもらった鋼の剣は背中に背負うようにしていた。

本当はチャドさんのように腰に刺すのが良かったのだが、鞘の形の都合上、背負うことになってしまったのだ。

「さて、全員いるな?」

ラミアさんが俺たちの前に立って言った。

横一列で俺たちは整列していた。

「今日はこの村の東側を主に警備するぞ。一昨日、東の方でキャンプの跡が全部で5つ見つかった。見つけ次第、捕獲し、北のベルナの町に集合だ。」

『はい。』

全員の声が揃う。

「では、団長、ナオヤのペアから出発してくれ。東の南よりの方角にあったキャンプを目指してもらう。」

俺たちはラミアさんに地図を渡され、訓練場の近くの集落の唯一の入り口に向かった。

団長、俺、と言っていたがもちろんスグハも一緒だ。

門は集落の西側に面していて、俺たちはそこからぐるりと反時計回りで東側に向かった。


しばらく進んだ後、チャドさんが急に立ち止まった。

そして呪文の詠唱を始めた。

探知魔法サーチ

すると、チャドさんを中心に青色の魔法陣が展開された。

そしてそれはどんどん広がっていき、円周が見えなくなってしばらくしたところで、ふっと消えた。

「…ここから少し南に人型の反応があった。…行くぞ。」

「はい。」

俺たちはまた歩き出した。

「チャド、何人くらいいそう?」

スグハが俺の頭の上で言った。

「…おそらく6人。…他の武器はわからないが、魔法使いが1人いそうだ。」

「わかった。」

チャドさんは少しスピードを速めた。

「…集落の方に移動している。…後300メートルくらい先だ。」

俺たちは急いで反応があったところまで向かった。

辿り着くと、そこには薄汚い格好をした男が4人と、奴隷のようなボロボロの格好をした猫耳族の少女2人が連れ立って歩いていた。

まだ奴らの体力バーは現れていない。

「…間違いないな。」

「奴隷狩りの連中ね。武器は…全員血まみれのライトアックスね。」

「…スグハは魔剣士で敵の気を引いてくれ。…魔法使いの男が索敵の魔法を使っている。…あまり広くはないようだが。」

チャドさんが言うと、スグハは頷いて青い光に包まれた。

『スキル・人化』

そして俺と同じくらいのサイズになって、背中には青色の大きな剣を背負っていた。

「スグハ?」

「これが、あたしの人化のスキルだよ。称号を変えることができるスキルでもあるの。それじゃ、行ってくる。」

驚いて声をかけると、スグハはざっくりと説明して、男たちの前に飛び出した。

「ああ?」

突然飛び出してきたスグハに困惑気味に声を上げる男。

「あんだ?嬢ちゃん、冒険者か?種族はわからねえが…。」

男はスグハに声をかける。

「その子たちはどうしたの?」

スグハは聞いたことのないような冷たい声で言った。

「おっと、こいつらは見ての通り奴隷さ。エルフの方が金になるんだが、途中で見つけてな。」

男たちは猫耳の少女たちに視線を向けた。

少女たちは怯えてガタガタ震えていた。

「ところで嬢ちゃん、種族はなんだ?」

真っ黒いローブのようなものを着た卑屈な顔の男が、スグハの髪に触れようとした。

「…魔法使いの警戒が解けてきた。…行くぞ。」

「はい。」

俺たちは男たちの背後から飛び出し、近くにいた男を剣で叩いた。

剣で叩く寸前、男たちの頭上に緑色の体力バーが現れた。

この剣、切れ味よりも打撃の方が向いているようで、攻撃が当たった男は失神して倒れた。

体力バーは半分以上減り、黄色のバーに切り替わった。

次にスグハの髪に触れようとして、俺たちが飛び出してきたのを呆然としていた魔法使いらしき男を叩いた。

今度は体力バーをあまり減らさずに気絶させることができた。

チャドさんはすでに他の2人を倒していて、猫耳の少女たちを解放していた。

「あ、ありがとうございます…。」

「…家まで自分たちで帰れそうか?」

チャドさんはまだ怯えている2人の頭を撫でながら言った。

すると2人は頭を横に振って言った。

「私たちの村、ずっと前になくなっちゃった。」

「…そうか。…ナオヤ、スグハ、この2人をベルナの町まで連れて行くぞ。」

「はい。」

「おっけー。」

俺は地面に転がっている男たちを見て言った。

「こいつらはどうしますか?」

「…殺せ。」

「…。」

「…長老の命令だ。…その場で殺せ。」

チャドさんは静かに言った。

「俺は、人を殺したりはできません。」

長老から話を聞いた時はなんとも思わなかったのに、いざ目の前で殺せと言われると、拒絶反応が起きた。

俺がしばらく黙っていると、チャドさんがついに口を開いた。

「…そうか。」

そう言ってチャドさんは俺に太い縄を渡してきた。

「…君はやはりエルフなのだな。」

「どういうことですか?」

「…正直言うと、俺は君のことを疑っていた。…時々、猿耳族のような発言をしたりしていたからな。…エルフは命を重んじる種族だ。…だから肉を食べない。…もちろん、自分たちの命が危ない時には生き物を殺すこともあるが。…長老は君たちを試そうとしたんだ。」

チャドさんがそう言うと、スグハも頷いて言った。

「長老は最初、ナオヤたちを信用していなかったのよ。人間族は命を粗末に扱う種族だから。そんな人たちと一緒に行動していたあなたもね。そこで、あなたたちが命を奪う存在なのか、命を救う存在なのか、試すことにしたの。ま、あたしは最初からナオヤを信じていたけどね!」

スグハも縄を受け取って男たちを縛り上げ始めた。

「ナオヤは罪人とはいえ、命を奪わなかった。」

「…すまなかった。…だが、これで俺たちも君たちを信用できる。」

「…!ありがとうございます。俺は命を粗末に扱ったりしませんから。他の3人も。」

俺が言うと、チャドさんはふっと笑った。

「…そうだな。…自分の命が危ない時には自分の命を優先しろよ。…さて、こいつらをベルナの町まで連れて行くぞ。」

俺たちは4人を縛った。

「どうやって運びます?」

「…起きろ。」

チャドさんは4人の頭を順に踏みつけ、強引に起こした。

「…立て。」

男たちは反抗してその場にどっかりと座り込んだ。

するとチャドさんはスラリと腰に刺していた刀を抜いて頭に黄色のバンダナを巻いた男の首に当てた。

「…立て。…歩け。」

チャドさんは凄んで言った。

あっさりと怖気付いたのか、男たちは両腕をぐるぐる巻きにされているため立ちにくそうに立ち上がり、チャドさんの後ろについて行った。

ちなみに俺は奴らが持っていたリュックなどの荷物を持つことになった。

スグハは人化したまま、猫耳の2人と一緒にゆっくりと俺たちの後をついてきた。


「…もうすぐベルナの町に着くぞ。」

チャドさんが言うと、俺の視界の左端に体力バーと魔力バーが現れ、ガサガサと茂みから何かが飛び出してきた。

「なんだ?」

飛び出してきたのは赤茶色の肌をした小さな人型の生き物だった。

「…ゴブリンだな。」

ゴブリンは棍棒を持って俺たちを濁った瞳で俺たちを見つめていた。

「…不要な殺しはしない。」

チャドさんはそう言って棍棒を振り翳したゴブリンの脳天に峰打ちを喰らわせた。

「チャドさん、その武器って…。」

俺がさっきから気になっていたチャドさんの武器について聞くと、

「…これはこの国からはるか東にあるというヒモトクニという国から伝わった、日本刀という剣だ。」

と、日本刀を鞘にしまいながら言った。

ヒモトクニ…日本国…か。

以前にも俺たちと同じように日本から転移した人がいたのか?

「…木刀が伝わったのと同時期にこの刀も伝わったんだ。」

木“刀“だもんな。

「…木刀を作ることはできたのだが、この日本刀だけは製造することができなかった。…そろそろ町に着くぞ。」

白い壁に赤い屋根の塔のようなものが見えてきた。

「おーい!チャドさーん!スグハー!ナオヤー!」

右側から元気な女性の声が聞こえてきた。

ミレイさんだった。

ミレイさんは手ぶらで、ススムも顔に血がほんの少し付着しているだけで手ぶらだった。

「…ミレイ、連中はいたか?」

チャドさんは手ぶらのミレイさんとススムが手ぶらなのを見て言った。

「犬耳族の2人組がいたよ。でも、奴隷狩り、というよりもただの冒険者って感じだった。」

「ススム、その血は?」

俺が聞くと、ススムは血をゴシゴシと拭って言った。

「途中でゴブリンが襲ってきてね。」

「あたしを庇ってくれたんだよ。矢があたしに向かって飛んできたんだけど、それを右手で弾いちゃったの。」

「…殺したのか?」

「いや…。」

「ススムの姿を見てすっかりびびってどっか行っちゃった。」

そりゃあ、ススムの筋肉ムキムキの姿を見たら、勝てねえわってなっちゃうよなあ。

女神様から支給された(多分)服の上からもわかるほど筋肉があるのだ。

というか、わざわざ服貰わなくても転移前に着ていた服で良かったんだが。

俺たちはそんな話をしながらベルナの町の門に辿りついた。

「止まれ。」

門に立っていた兵士の男が言った。

「見たところ、エルフの村の自衛団のようだが…。」

「…こちらの猫耳族の2人を拉致していた4人組の犯罪者を捕らえた。」

「わかった。では、身分証か何かは持っているか?」

チャドさんはズボンのポケットから少し分厚い免許証くらいのサイズのカードを出して、門番に見せた。

「ギルド会員だったのか。ランクは…263!失礼しました。どうぞ、通ってください。」

門番はチャドさんにカードを返して言った。

俺たちは門番に礼を言って門を潜った。

「…冒険者ギルドへ行くぞ。…エルサたちと合流もそこにする。」

「はい。」

俺たちは町の中心にあるという、冒険者ギルドへ向かった。


冒険者ギルドは、木造の二階建ての建物で、結構でかい。

一階には、二つのカウンターがあり、そこには受付の女性が1人ずつ立っていた。

チャドさんは入って右の会計を打っている女性に声をかけた。

「…密猟者を捕まえたぞ。」

「チャドさん!いらっしゃい。」

「お!いたいた!」

すると後ろから何やら騒がしい声が聞こえた。

そこにはランガスさん、エルサさん、ツバサ、ライト、そして禿げた頭の男3人が縄に縛られて4人の後をついてきていた。

「ランガスさんも。」

「…ランガス、こいつらの処理の手続きを頼めるか?」

チャドさんは男たちを指さして言った。

「かしこまりぃ。」

チャドさんは俺たち4人を連れて左側のカウンターへ向かった。

「…4人はギルド会員になってもらう。…身分証の代わりになるしな。」

チャドさんはそう言ってカウンターの女性に話しかけた。

「いらっしゃい、チャド。新顔かい?」

長い茶色の髪を垂らした女性が俺たちを見て言った。

「…ああ。この4人をな。」

「いろんな種族が混じってるねえ。それじゃ、この用紙に書いてあることを記入にておくれ。」

俺たちは女性から用紙をもらい、記入事項を確認した。


・名前 (ギルドネーム)

・称号 (全て記入すること)

・年齢

・スキル魔法が使用できるか

・アピールポイント


「ギルドネームってなんですか?」

俺はチャドさんに聞いた。

「…ギルド会員のメンバーとしての名前だ。…本名そのままつけてもいいぞ。…ただ、これは個人情報を守るためのものでもあるからな。」

「じゃあ、ナオヤはなおほびに決定ね。」

スグハが猫耳の2人と手を繋ぎながら勝手なことを言った。

「いやいや、ここはナオにするよ。なおほびは称号の欄に書くし。」

「そう…。」

「じゃあみんなこれから俺のことはナオと呼んでくれ。」

「へいへい。」

俺がいうと、ライトがあきれたように言った。

「…書けたか?」

しばらくしてチャドさんが言った。

「はい。」

俺たちは一度チャドさんに記入漏れがないか見てもらってから、受付の女性に用紙を渡した。

俺以外の3人は名前をそのまま登録したらしい。

「…はい。確認しました、ギルドカードを登録します。」

女性は一通り用紙を見た後、水晶のような材質の投票箱みたいなものを取り出した。

そこに俺たちの書いた用紙を入れた。

すると、箱の中で用紙が分解され、新たに少し厚めのカードが生成された。

箱はスケスケなので、中がよく見える。

「はい、どうぞ。ナオさん、ススムさん、ライトさん、ツバサさん。」

できたカードの名前を見ながら、俺たちにカードを渡してきた。

ギルドカードには下のようなことが書かれていた。


ギルドネーム ナオ

ギルドランク 1

適正クエスト 護衛

そして裏面にはパーティーと書かれた欄があり、パーティー名とメンバーを記入することができるらしい。

ギルドカードをメンバーのカードに向かってかざすと、文字が浮き上がり、メンバーとして登録されるらしい。

パーティー名は家に帰ってからじっくり決めることになった。


「ありがとうございます。」

「皆さん、スキル魔法が使えるようですので、冒険者の研修への参加はなしと、させていただきますね。」

受付の女性はにっこりと笑って言った。

「私はこのギルドの人材係を担当しています。ランク上げを申し出る際には、私に話しかけてください。」

「よろしくお願いします。えっと…。」

ライトが言い淀むと、女性はしまったというような表情をして言った。

「あ、申し遅れました。私はギルドネーム・サナと申します。隣にいるのは依頼受付係のゲルドネーム・ジュリエと申します。」

ランガスさんと取引をしていたジュリエさんは俺たちに向かってお辞儀をした。

「…早速、全員何か依頼を受けてみろ。」

チャドさんはそう言ってジュリエさんのカウンターの隣の壁にかかっている看板に向かって俺たちを促した。

「…看板の左下の推奨レベルを確認して受注してみろ。」

俺は手近にあったクエストを3つ手に取って見てみた。


・ゴブリン討伐

討伐の証拠としてゴブリンの魔石を持ってくること。

推奨レベル4


・薬草採取

エルドラシル薬草をギルドから支給する皮袋一杯に詰めて持ってくること。

推奨レベル1


・バーンスタイン家の令嬢の馬車の護衛

バーンスタイン家の令嬢、サテラ・バーンスタインが王都の学院へバーンスタイン領から馬車で移動する際、護衛をする。報酬は依頼達成の後、バーンスタイン家当主から支払われる。

推奨レベル48


「護衛のレベルは飛び抜けて高いな。」

俺がつぶやくと、ゴブリン討伐の看板をみたライトが言った。

「ゴブリン討伐は異世界転移の定番だよな。…でもまだ討伐依頼を受けるのはやめておこう。」

「そうだな。無難に薬草採取にする?」

ツバサが俺と同じような依頼の看板をみながら言った。

「でも俺ら、どれが薬草なのかわからなくないか?」

「あー、確かに。あ、でもススム君確か鑑定のスキル持ってたよね?」

「?ああ、持ってたな。」

ツバサが鍛治師の求人のポスターを見ていたススムに言った。

「ならわかるんじゃね。」

「うーん…。まあ、行けると思う。」

ススムは自信なさげに言った。

「それだったら、この野生のマジックリンゴの採取の依頼も一緒に受けるか?」

ライトが別の看板を手に取って言った。

「よし、そうするか。」

俺がいうと、ライトの横から、ヌッとエルサさんが顔を出した。

「私もついていきましょうか。」

疑問詞がねえ。

「いやいや、採取クエストだから…。」

「ライト、森舐めてたら猿耳族は死ぬよ。」

エルサさんがライトに顔をずずいと近づけて言った。

「サルの種族なのに?」

「…。とにかく、私もついていきます。」

エルサさん…最初はなんかお堅い感じの人かと思ったけど、さすがに過保護過ぎないか?

「はっはっは!エルサー、想い人が心配なのはわかるが、もう少し信頼してやったらどうだ?さっきの戦いも悪くはなかっただろう。」

取引を終えたランガスさんが俺たちの会話を聞いて言った。

「でも、ランガスさん。ライトは私よりも弱いんですよ?」

「採取クエストなんだから弱くてもいいだろ。というか、採取なんてスキル魔法を使えない人でもできるクエストだぞ?」

「エルサ、俺を信じてくれ。」

ライトが危険な戦いに挑む主人公みたいなセリフを吐いた。

すると、エルサさんは顔を赤らめて言った。

「…わかりました…。絶対に…私のところへ帰ってきて…くださいね…。」

「ああ。約束する。」

何やらよくわからん茶番をよそに、俺とツバサとススムで今後の方針を決めることにした。

「しばらくは、この採取クエストをこなして、ギルドランクを上げることに専念しようか。」

ツバサがいうと、ススムも頷いて言った。

「僕は鍛治師の勉強もしたいしね。」

「どちらにせよ、俺は討伐クエストは無理だ。」

俺が言うと、ツバサが真剣に頷いた。

「…エルフだから、か。」

「ああ。それに適正クエストも護衛だしな。」

「わかった。討伐クエストは俺たちが受けることにする。」

「すまない。」


クエストを受ける時には特に申請は必要ないらしく、俺たちはクエストの内容をメモしてギルドを出た。

「それじゃあ、次はこの子たちを施設に届けなくちゃだな。」

ランガスさんはそう言って歩き出した。

「この町の教会が運営する孤児院へ行くぞ。」

スグハと楽しそうに何かを話していた2人の表情が暗くなった。

「孤児院?」

「ああ、身寄りのない君たちを保護してもらわないとな。」

ランガスさんがワシワシと頭を撫でながら言った。

「い、いやだ。」

目が少し青みがかっている方の子が言った。

「私たち、皆さんと一緒にいたい。」

ランガスさんは困ったように言った。

「そう言われてもなあ。」

「この2人、元々孤児院出身だったらしいわ。」

スグハが言った。

「そこで、嫌な思いをしたらしいの。」

「…俺が引き取ろう。」

チャドさんが言った。

「チャド!いいのか?」

「…ああ、だが、2人が一人前になった時には、村で働くか、村を出るか、決めてもらう。」

2人の表情がパッと明るくなった。

「お姉ちゃんも一緒?」

「糸目のお兄ちゃんも?」

2人が交互に言った。

糸目って、俺のことか?

確かに目は細いが…失礼なやつらめ。

「いや、あたしたちは一緒じゃないよ。」

「そっかあ。」

「でも、青いお兄ちゃんと一緒なら嬉しい!」

チャドさんは少し驚いた顔をした。

「チャドさん?」

チャドさんは2人を抱きしめた。

「お、お兄ちゃん?」

「どうしたの?」

「…。」

「チャドとテリーは昔、妹を亡くしているんだ。」

いつの間にかラミアさんが俺たちの後ろに立っていた。

「いつの間に?」

「ああ、さっき少しオークに絡まれてしまってな。到着するのが遅れてしまった。」

「え…。大丈夫ですか?」

ツバサが言った。

「ああ。大丈夫だ。オークくらいなら余裕で逃げ切れる。」

ラミアさんはおろおろしている2人を抱きしめているチャドさんに向かって言った。

「さて、それはそれとして、チャド?この2人を村で引き取ると言うのは本気か?」

「…ああ。」

チャドさんは2人から手を解いて言った。

「そうか。ちなみに、2人とも、名前は?」

「私はリルルと言います。」

灰色の髪に茶色い瞳の子が言った。

「私はルカです。」

濃いグレーの髪に青みがかった瞳の子が言った。

「よろしく、リルル、ルカ。」

ラミアさんはにっこりと笑って言った。

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