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第二十三話 オークの軍勢

俺たちは驚いて一斉に扉の方を向いた。

そこには数十体の巨体のオークがボロボロに刃こぼれした斧や、先端に血がこびりついて錆びついた槍を構えて、俺たちを見下ろしていた。

恐らく全員、オークの上位種だろう。

口からは生臭い、吐き気を催す臭いを放っていた。

生まれてから一度も歯を磨いてこなかったんだろうな…。

オークたちは表情のわからない、怒っているような、呆けているような顔をして、俺たちを一通り見回した後、後ろを振り向いた。

オークたちの後ろには石を削って作られたのだろう、椅子に深く腰をかけて大きないびきを掻いている巨大なオークが鎮座していた。

どうやら、この巨大なオークがオークたちの(おさ)らしい。

巨大なオークは漆黒の鎧を纏っていて、口の端から伸びる牙は鋭く、他のオークたちの牙よりも4倍も5倍も大きかった。

俺たちは言葉が出てこず、チャドさんの方を向いた。

チャドさんは真っ直ぐに巨大なオークを見つめていた。

オークたちや俺たちの視線が集まる中、オークの長はようやく目を開けた。

気配を察したのか、それとも元々起きていたのか、なぜこのタイミングなのかはわからないが、オークの長は急にいびきを掻くのをやめて目を覚ました。

オークの長がのそりと立ち上がると、他のオークたちは道を開けるかのように、部屋の脇に避けるように移動した。

オークの長はゆっくりと俺たちの前に近づいてきた。

オークの長の間合いに俺たちが入ったところで、オークの長はゆっくりと口を開けた。

「何の用だ?エルフと…猿耳族か…。」

低い、腹の奥底から響くような濁声だ。

「ヂュイィイ!」

部屋の脇に避けていたオークがオークの長に向かって何かを伝えるように叫んだ。

「なるほど…。お前たちは我々の巣に侵入した不届者なのだな?」

「…そうだ。…お前が、オークロード、だな?」

俺たちがオークが人の言葉を喋ったことに動揺している中、チャドさんがオークの長に尋ねた。

チャドさんも想定外のことに戸惑っているのか、呼吸が浅い。

猪の顔の巨体の魔物が人の言葉を話しているのだから、不気味だ。

「そうだ。我こそが、オークの王、オークロード・グローグだ。」

「…なぜお前は人間の言葉を話せるんだ?」

チャドさんは俺たちが今一番聞きたかったことをオークロードに尋ねた。

「教えると思うか?まあいい、冥土の土産に教えてやろう。我は創造神アザトース様より、知性を授かり、多種族の言語を理解することができるようになったのだ。」

知性を授かったから喋れるようになった?

オークと他種族はお互いに言語を理解できないんじゃなかったか?

知性を授かって言語がわかるようになるんだったら、俺たち他種族も知性が足りていないことにならないか?

創造神アザトースが何か絡んでいるのは確実だな。

俺がオークロードの発言に不信感を覚えていると、急にオークたちの雄叫びが聞こえた。

『ヂュイィイイ!!』

すると、一斉に部屋の隅に待機していたオークたちが一斉に俺たちに襲いかかってきた。

俺は焦って、背中に背負っていた剣を鞘ごと抜いて、盾のように構えた。

オークたちは巨体に似合わず、俊敏な動きで俺たちに攻撃を仕掛けた。

俺はなんとか受け止めたが、衝撃で後方の壁に打ち付けられた。

緑色の体力ゲージが短くなった。

「ナオ!」

俺の首巻きに隠れていたスグハが俺に回復の癒しの魔法をかけてくれた。

体力ゲージが元の長さに戻った。

「ありがとう!」

俺はスグハに礼を述べて鞘から鋼の剣を抜き、構え直した。

オークのうちの一体が俺の方に槍を向けて突進してきた。

俺は避けられないと思い、姿勢をオークが向けている槍よりも下にして、オークに向けて真っ直ぐに剣を構えた。

オークと俺の距離が0になると、剣を構えた腕に衝撃が走った。

大型トラックがぶつかってきたかのような衝撃を受け、腕が痺れた。

オークの攻撃が外れて、オークの槍は壁に深く突き刺さっていた。

そして、俺の剣はオークの膝に刺さって、傷口からは真っ赤な鮮血がドクドクと溢れ落ちていた。

剣が深く刺さっていたため、剣を即座に抜くことができなかった。

代わりに俺は壁とオークの間から脱出し、左側から迫ってきていたオークと、槍が壁から抜けなくなっているオークを突撃させた。

『スキル・略奪不可』

俺はステータスシートのインベントリを開き、“オークの膝”と表示されたインベントリを選択した。

すると、深く突き刺さっていた鋼の剣がオークの膝から抜けて俺の右手におさまった。

オークは剣が抜けた時の激痛に悲鳴をあげた。

『スキル・体力増強・脚力強化』

さらにバフスキルを使って、俺のステータスを強化する。

チャドさんとライトもそれぞれ自分の武器を抜いて、オークたちに応戦した。

俺は迫ってくるオークたちの頭上に跳躍して、脳天に鋼の剣を叩きつけた。

オークの頭は硬い毛皮で覆われているため、鋼の剣を叩きつけても頭がかち割れることはなかった。

だが、脳震盪を起こしたのか、オークはその場に目を回して崩れ落ちた。

俺はそのオークをダメ押しとばかりに足場にして再び跳躍した。

「大気にありし全ての魔法の子、我が手に集え。我に力を、人類最古にして最強の武器、炎の力を我が手に!」

俺はできるだけ早口で呪文を唱えた。

火よ(フレイム)

オークたちの頭上に小さな炎の雨が降り注ぐ。

俺の手から発生した炎は自重に従ってオークの頭頂を焦がした。

オークたちが頭についた火を消そうとしているところに、ライトのスキルが飛んできた。

『スキル・粘糸』

ライトのスキルによってオークたちが縛られる。

「ナイス!」

俺が親指を立てて、ライトの方を見ると、その奥ではチャドさんがオークロードと戦いを繰り広げていた。

「ナオ!魔力は大丈夫なのか?」

ライトがスキルの糸で縛ったオークたちを一箇所に集めながら言った。

「ああ。大丈夫だ。それよりチャドさんは…。」

「オークロードを引き受けてくれてる。他のオークたちを戦闘不能にしておいてくれだとよ。」

「わかった。」

俺たちは再び地面を蹴って、それぞれ別々の方向に走り出した。

俺はチャドさんを背後から狙っていたオークに向かって鋼の剣を向けた。

俺の剣はオークの足首に直撃し、オークを後方に吹き飛ばすことに成功した。

ライトはスキルを使って、部屋の中を飛び回ってオークたちの目を回していた。

ライトのスタイルの良さも相まって、某映画のヒーローのように見えてカッコよかった。

俺は逆上してこちらに走ってくるオークを避けて、跳躍してオークの首の後ろを剣で叩いた。

漫画とかでよく見る手刀の真似をして、気絶させようとしたのだが、そう上手くいくはずもなく、オークはそのまま勢いを殺せず、壁に激突した。

その衝撃で、部屋がぐらぐらと振動した。

その振動によって頭が大きく、重心が上にあるオークがバランスを崩してその場に横転した。

結果オーライだな!

俺はスグハの方を見て親指を立てた。

あたかも作戦通りだというように。

気絶させようとして失敗したと悟られないように。

「ナオ!」

ライトが俺の左腕にスキルの粘糸を巻きつけた。

「ライト!?何をっ!?」

俺が突然のことに戸惑ってライトの方を見ると、ライトはオークたちの周りを走るようにオークの周りをぐるりと指を回した。

ライトが俺に何をさせたいのか理解して頷いて、まだ立ちあがろうともがいているオークたちの周りを走り出した。

オークは手足が胴体に比べて短いため、一度転ぶとなかなか立ち上がることができないようだった。

俺はオークの体に糸を巻きつけたり、くっつけたりして、オークを絡めた。

ライトは糸に絡まったオークたちを引っ張ってオークたちを一箇所にまとめ始めた。

「ヂュイィ!!」

オークたちは糸に絡められたことに腹を立てたのか、いきりたって声を上げた。

俺が一通りオークたちに糸を絡めた後、俺はライトのところに戻った。

「これで雑魚は全員だな?」

ライトが念のためとオークたちを壁に縛り付けて、糸の強度を高めながら言った。

「ああ。後はオークロードだけだな。」

俺は頷いて言った後、左腕に巻き付いたライトのスキルの糸を見て言った。

「これ外してくれないか?」

「どうやって?」

「どうやってって…ライトのスキルだろ?」

俺はライトの疑問形のセリフに変な汗をかきながら言った。

「「…。」」

俺たちはお互いに顔を見合わせた。

「エルサさんの時は解除できてたじゃないか。」

俺はライトに左腕を差し出してやや震える声で言った。

「あんときは全部の糸を取り外せばよかったけどよ、一部分だけ糸を解くにはどうすりゃいいのかわからんのや。」

「いやいや、やばくね?」

俺は内心めちゃくちゃ焦りながらライトに言った。

スグハも俺の腕に巻き付いた糸を取ろうと引っ張っている。

「なんか、ここだけ解除みたいな意思を持ったらいいんじゃないか?」

俺は剣で糸をギコギコしながら提案した。

「うーん。」

ライトは目をぎゅっとつぶって唸った。

すると、俺の腕に巻き付いていた糸が解けた。

「おぉ、解けた!」

スグハも「よかったね」とホッと息をついた。

「それよりも、チャドに加勢しに行かないの?」

続けてスグハが俺たちにオークロードと戦っているチャドさんの方を指さして言った。

「そうだね、行こう。」

俺は頷いて、轟音の鳴り響くチャドさんとオークロードの戦場へ走り出した。

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