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第二十二話 オークの洞窟

俺たちはオークを縛ったあと、周辺にあった大砲を全て破壊した。

大砲は荷車に積まれていて、移動式の大砲となっていた。

「まだありますかね?」

俺が聞くと、チャドさんは

「…オークが大量に兵器を持っているとは考えにくい。…12機の大砲の出所は不明だが、ひとまずは大丈夫だろう。…俺たちは前進を続けるぞ。」

と言い、青色の矢印の形をした魔法弾を発射した。

どうやら前進の合図のようだ。

「このオークたちはどうしますか?」

「オークの習性はわからないが、とりあえず道案内でもさせるか。」

ランガスさんはオークを繋いでいる縄を持ち上げて、オークたちを立たせた。

「ヂュィ!」

オークは抵抗して俺たちに黄ばんだ牙を見せつけた。

「どうしたもんか。放置するわけにもいかんし。村には牢屋なんてないぞ。」

ランガスさんはこちらを睨んでくるオークたちの顔を見ながら言った。

「ベルナの町に連れて行けばいいんじゃないですか?」

ライトが提案するが、チャドさんは首を振った。

「…それだと、町の住人は恐怖で怯えることになってしまうだろう。…君たちにとってはオークはそこまで強くないのかもしれないが、オークは本来1体につき3人のパーティーで挑むのが普通なんだ。…そんな奴らが何十体も町に入ってきたら町は混乱するだろう。」

「それなら、あたしのインベントリに収納して置きますか?」

ミレイさんが手を挙げて言った。

「収納?」

確かミレイさんもスキル持ちだったか。

「そう、あたしのスキル“収納”はどんなものでもインベントリっていう場所?に収納することができるの。」

ミレイさんはニコニコとしながらオークたちに向き合った。

「ナオの略奪不可の上位互換みたいなスキルだな。」

ライトが言った。

「そういや、ナオとライトもスキルを持ってんだっけな。」

ランガスさんが感心したように言った。

「俺たちはスキルを持ってないから、羨ましいぜ。」

「2人はさっき二つスキル使ってたよね?他にも持ってたりするの?」

ミレイさんがオークを俺たちのステータスシートのような板にオークを“収納”しながら言った。

「ああ。」

「うん。いくつか持ってるよ。」

「へえ。すごいね!」


「よし、全部入れ終わったよ!」

ミレイさんがチャドさんに報告した。

「よし、それじゃあ、オークがやってきた方角に向かって前進するぞ!」

ランガスさんが山の方に指をさして言った。


俺たちはまた木の上を通って森の奥へ進んだ。

オークは村の近くまで迫っているのか、オークの集団とはもうすれ違わなかった。

「オークはもう村まで到着してしまったんでしょうか?」

俺がチャドさんに聞くと、チャドさんは少し振り返って言った。

「…おそらくな。…だが、心配しなくてもテリーたちが守ってくれるだろう。」

「俺たちは前進して、親玉を捕らえることに集中するぞ!」

「はい!」

「見えてきたぞ!あの洞窟じゃないか?」

ライトが叫んだ。

見ると、確かに大きな洞窟が山の麓に口を開けていた。

周りには警備しているのだろう、武装したオークが2体立っていた。

俺たちは木の影に隠れて、様子を伺った。

2体のオークは油断なくあたりを見回している。

「2体だけなら行けそうじゃないか?」

ランガスさんが洞窟の奥を目を凝らしながら言った。

俺も洞窟の奥に目を凝らしたが、真っ暗で何も見えなかった。

『スキル・千里眼』

俺は遠くまで見えそうなスキルを発動させた。


視界が薄い青色に染まり、まるでドローンを飛ばしてその映像をみているかのようだった。

俺は早速洞窟の中に架空のドローンを飛ばした。

中には点々と松明が壁に刺さっていて、巨体のオークが住んでいるためとにかく大きな洞窟になっていた。

入ってからすぐに何やら部屋のような空間の入り口を見つけた。

そこにはなんと何十人もの人間が押し込められていた。

そこでは全員がボロボロの布をきていて、武器などを作らされていた。


俺はさらに洞窟の奥を見ようとしたが、そこで、ぷつりと視界が元に戻ってしまった。

見ると青色の俺の魔力ゲージがなくなっていた。

どうやら魔力を使いすぎてしまったようだ。

いきなりもとの視界に戻され、俺は少し吐き気を覚えた。

「ナオ?大丈夫?」

スグハが心配して俺の背中をさすってくれた。

「ありが、とう。スキルを、はっ、使って中を、除いて、ふぅ、みたんだ。」

俺は吐き気に耐えながら浅く呼吸をして言った。

この場にいる全員が俺の方を向いた。

「中、にはっ、たくさんの、人間が囚われてい、ました。ざっとみた感じさん、30人くらいはいました。それ、で、全員何か、を、作らされて、いました。」

「…そうか、わかった。…ありがとう。…中はどのくらいの広さで、オークは何人いたかわかるか?」

「人間の作業場の出入り口に1体、その奥には見えた数だと2、3体、はいました…。」

「…わかった。…少し休んでいろ。…俺たちはその人間たちを解放してくる。…スグハ、何かあったら知らせる。」

「わかったわ。」

チャドさんたちはそう言って、オークの洞窟へ跳躍した。

「全くもう、自分の魔力とスキルの消費量をしっかり確認しなさいよ。」

スグハが怒ってますというふうに頬を膨らませながら言った。

「うん…。ごめん。」

俺は素直に謝った。

今回はスキルの消費魔力量の確認を怠った俺が悪い。

俺は木の幹にもたれかかって楽な姿勢をとって休むことにした。


しばらくして洞窟の入り口が騒がしくなった。

俺は目を開けて入り口の方を見た。

「チャドたちが奴隷の解放に成功した見たいね。」

さっき“千里眼”で見た作業をさせられていた人間たちが次々と出てきたのだ。

人間は全員が男性で、背の低いホビットや、猿耳族、犬耳族、兎耳族など様々な人種がいた。

全員やつれていて、全員目が淀んでいて職人特有の覇気がなかった。

「あの人たちはどのくらいここで働かされていたんだろうな…。」

俺は彼らの痛ましいその姿を見て言った。

「わからないけど、数十年も働かせれていたわけではないでしょうね。」

「なんでだ?」

「彼ら、やつれていて、髭も髪もボサボサだけどみんな年齢は若いわ。大体20代後半くらいね。何年も囚われていたのならもっと歳を取っているはずよ。」

「若すぎないか?」

俺はスグハの言ったことが信じられなかった。

「そうね。一番の原因はあの不衛生な洞窟じゃ、長く生きられないんでしょうね。それよりも不思議なのがどうやってあんな何十人も人間を集めたのか、よね。」

「確かにな。」

俺は解放された人々が太陽の光を浴びているのを見ていた。

彼らは冷たい洞窟の中にいたためか暖かい日の光を光合成をするように浴びていた。

それがなんとも不気味だった。

ふと、顔を上げるとライトがこちらに歩いてくるのが見えた。

「よお。大丈夫か?」

ライトが俺に声をかけてきた。

「あぁ、大丈夫だ。そっちはどうだ?」

「ナオの言った通りだったな。でも、捕まってた人たちの健康状態はあんまり良くない。」

「見りゃわかるけどな。」

俺はゾンビのように呻く職人たちを見てつぶやいた。

「それでな、あの洞窟、やっぱりオークの巣で間違いないみたいだ。」

「ねーねー。」

俺たちが話していると、ミレイさんが俺たちの方にやってきた。

「あたしとランガスさんでこの人たちをベルナの町につれていくから、3人は団長と合流していてくれるー?あ、ナオは村に戻って休んだ方がいいかな?」

ミレイさんは木にもたれかかって座っている俺を見て心配そうに言った。

「いえ、大丈夫です。」

「そう?一応これ、魔石って言うんだけど、これ、あげるね。」

そう言ってミレイさんは俺に紫色に光るゴツゴツした石を握らせた。

「ありがとうございます。…これ何に使うんですか?」

「それを握って、それから魔力を吸い取るイメージをすれば魔力が回復するよ。いざって時に使ってね。」

ミレイさんはニコリと笑って言った。

「わかりました。ありがとうございます。」

ミレイさんは「無理はしないでね」と俺たちに言って、囚われていた職人たちの元へ走っていった。

「それじゃあ、チャドさんと合流するか。」

俺は立ち上がって尻についた土を払いながら言った。

「もう大丈夫なのか?」

ライトが腕を組みながら言った。

「ああ。魔力もそれなりに回復した。」

俺は視界の端に見える青色の短い魔力バーを確認して言った。


洞窟に入ると、入り口のすぐそばでチャドさんに合流することができた。

「…体調は大丈夫なのか?」

「はい。大丈夫です。」

「…奥へ進むぞ。」

「はい!」

俺たちはチャドさんの後ろをついて行った。

洞窟はさっき“千里眼”で見た時と同じく、縦にも横にもスペースが空いていて、不均一に明かりとして松明が土の壁に乱暴に捩じ込まれていた。

洞窟の中は生臭い匂いが充満していて、俺たちは思わず鼻を覆った。

「くっさぁい!」

スグハが思わず言った。

「…これを使え。」

チャドさんがそう言って俺たちに緑色の布切れを投げてよこした。

「ありがとうございます。」

俺たちはその布きれで顔を覆った。

スグハには布の面積が大きすぎたため、俺は布をマフラーのように巻いて、スグハをその中に押し込んだ。

「にしても臭いですね。」

「……そうだな。」

チャドさんは目を少し伏せながら呟くように相槌を打った。

俺は何気なく洞窟の通路の脇にぽっかりと開いた穴を覗き込もうとした。

するとそれをチャドさんは俺の視界を遮った。

「…見ない方がいい…。」

「わ、わかりました。」

チャドさんが顔を少し青くして気持ち悪そうだったので、俺は素直に従った。

多分、グロいやつが転がってるんだろうなぁ。

「なになに?」

スグハが顔を出して中を覗こうとしたので、俺はサッとスグハの目を覆った。

「やめといた方がいいって。」

スグハは俺の言いたいことを察したようで、頷いて俺の首に巻いた布に顔を埋めた。


奥に進んでいくと、いくつか部屋を見つけたが、入り口の近くの洞窟よりも生臭い匂いは薄れていた。

部屋にはボロボロの武器やらが無造作に積まれていたり、おかしな紋章が彫られていたりと、結構ごちゃごちゃとしていた。

「きったねえところだな。」

ライトがその部屋の散乱した武器やら食器らしい器を見てつぶやいた。

「…オークは普段そんなに物を整理することはしないからな。」

チャドさんはドロドロとした液体が溢れた場所を避けながら奥へと進んだ。

「奥の部屋は武器庫になってるようですね。」

俺は錆びついた斧の刃が床に転がったり、鉛のようなものが積まれたりしている部屋を覗き込みながら言った。

「この奥に親玉がいるのかな?」

臭いもだいぶ薄れてきたため、首巻から出てあたりを見回していたスグハが言った。

スグハが指差す方を見ると、そこには他の部屋にはついていない鉄製の大きな扉がついていた。

「な、なんか、ここだけ異様だな…。」

俺は扉に彫られた趣味の悪い猪の顔から目を逸らしながら言った。

扉の周りは他の部屋や通路と違い、グレーのレンガで補強されていた。

俺たちは冷たい鉄の扉に耳を当てて見て、中の様子を確認しようと試みた。


GUu… Gurun…


中からいびきが聞こえてくる。

低く唸るようないびきが扉を通してもよく聞こえる。

俺たちは顔を見合わせた。

「ナオのさっき使ったスキルで中の様子を確認できないか?」

ライトが聞いた。

「魔力の消費が激しいし、壁を貫通して見れるかどうかわからない。さっきはドローンを飛ばしたみたいな感じで見えていたから。」

俺は首を振った。

「…壁を破って入るか。」

チャドさんがとんでもないことを言い出した。

「…冗談だ。」

冗談っていう声のトーンじゃなかったと思いますけど?

「…もう一度洞窟の部屋をくまなく調べてみるか。」

「わかりました。」

俺たちが引き返そうと後ろを振り向いた瞬間、扉が勢いよく開かれた。

重そうな鉄の扉が音を立てて開いたのだ。

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