第十六話 商人ギルド
翌日、俺たちは朝食のパンケーキを食べていた。
「そういやよ。」
「ん?」
ライトがパンケーキに蜂蜜を塗りたくりながら言った。
「昨日の夜、裏庭から誰かの話し声が聞こえたんだが、お前ら知ってるか?」
それ多分、ドラゴンオーブのブルーさんと話してる俺の声だな。
俺が何か言う前にツバサが言った。
「あー、確かに聞こえた。部屋でエルサさんから借りた錬金術の本を読んでたんだけど、途中から裏庭の方で灯りが灯って、少ししたら話し声が聞こえてきたなあ。」
ススムは首を傾げながら言った。
「僕は寝てたからなあー。」
「あー、それ、俺だわ。」
俺が手を挙げて言うと、スグハが何してたの!?という顔で見つめてきた。
「昨日の夜さ、魔導書読みながら水魔法の練習をしてたんだ。で、その作った水の処理をどうしようってなって、ちょうどエルサさんが持ってきてた樽に水を入れて、風呂にしたんだよ。魔力水で作った風呂。」
「なんであたしも誘ってくれなかったのー!?」
スグハが両手にパンケーキを持ちながら言った。
「いや、スグハはもう寝てたし、起こすのは悪いと思って。」
スグハはむむぅと唸った。
「まあいいや。それで、風呂はどうだったよ?」
ライトが言った。
「ああ。夜の冷たい風が心地よかったぞ。お湯加減も我ながらうまくできたと思う。」
「ほう。ちなみに今それまだあるか?」
「ああ。あるぞ。もう冷えてると思うけど。今日の夜また沸かすから、その時に入ってみたら?」
俺が言うと、ライトは頷いて言った。
「じゃあそうするわ。」
全員で朝食を食べ終わった後、俺たちはテリーたちと集合して、ベルナの町へ向かった。
エルサさんは村の周辺の警備の仕事があるらしく、名残惜しそうにライトと抱き合っていた。
この二人、昨日一体何があったんだ?
後でススムに聞いてみると、どうやら門の見張りの時にオークジェネラルと戦ったらしく、その時にライトはエルサさんに助けられたらしく、その時に惚れたらしい。(ススム視点)
俺たちはそれぞれ馬に跨った。
俺とスグハはもちろんハルヒ、テリーはスグリ、ライト、ススム、ツバサの3人はテリーの父親の馬、ヒュリチェルにのせてもらった。
ヒュリチェルは銀色の毛波の巨大な馬で、ハルヒの3〜4倍はありそうだった。
3人を軽々とのせ、悠々とスグリとハルヒの後ろをついてきた。
「それじゃあ、ここからは別行動にしようか。」
門番に身分証代わりのギルドカードを見せ、門を通り、町に入ってしばらくしてツバサが言った。
「僕とススムは冒険者ギルドで錬金屋の手伝いの求人とかをみてくるよ。」
「おっけ。ライトはどうする?」
俺が聞くと、ライトは少し唸って言った。
「じゃあ、俺はナオたちについていくわ。」
「それじゃあ、正午の鐘が鳴るまでにこの前の広場に集合しよう。」
テリーが言った。
俺たちは頷いて了承した。
俺たちはまず、ハルヒたちをコウセイたちの馬宿に預けた。
馬宿は町の中央ら辺にあり、どこの門から入っても同じくらいの時間でたどり着けるように設定されているらしい。
「商人ギルドに行くんだ。それだったら、もしかしたらユウトとタイチに会えるかもね。今二人とも商人ギルドで干し草と油を買いに行ってるから」
ハルヒたちを馬小屋に届けながらコウセイが言った。
「へえー、そっか商人ギルドから仕入れをしてるのか。」
ライトが感心したように言った。
「それじゃあ、スグリたちを頼みましたよ。」
テリーが3頭分の代金をコウセイに渡しながら言った。
「お任せください。」
コウセイはどんっと転生前よりも逞しくなった腕で分厚い胸を叩いて言った。
商人ギルドは町の東側にあった。
冒険者ギルドの建物と同様、木でできた2階建てで、入り口にはこの世界の文字(この国の文字)で「商人ギルド・ベルナ支部」と書かれていた。
建物の大きさは冒険者ギルドの3倍くらいあった。
馬車を入れる車庫や荷物を置く倉庫などもあるせいでかなりでかい。
「んー。目撃情報はこのあたりね。」
俺の頭の上から、スグハが言った。
「そういや、ナオたちは商人ギルドの何の用があるんだ?」
ライトに説明するのをすっかり忘れていた。
俺はライトに昨日の朝の話をした。
「ふむ。確かに俺たちを召喚した女神様のことは気になるな。」
ライトは顎に手を当てながら言った。
「俺たちは死んでいない、みたいなことを言ってた気がするけど、ほんとかどうか怪しくなってきたな。召喚するだけだったら、魂だけじゃなく、体そのままこの世界に持ってくればいいのに。」
「そんなわけで、俺たちは女神様に話を聞くためにその一番手の精霊を探そうとしてるんだ。」
一番手一番手言っていたが、正式名称は「特位精霊」というらしい。
その下が高位精霊らしい。
そんなことはさておき、俺たちは商人ギルドに入った。
商人ギルドの中には中央に円形のカウンターがあり、入り口から見て右側には小さな屋台が並んでいた。
「そういえば、その一番手…特位精霊を目撃したっていう精霊はどこにいるんだ?」
テリーがスグハに尋ねた。
「えっとね、ここで働いてるリラの契約精霊よ。」
「リラ?」
「私たちの村出身のエルフよ。テリーは覚えてるでしょ?」
「ああ、あの計算が得意なリラか。そうか、ベルナの町で働いてるのか。それじゃあ早速、リラに会ってみるか。」
テリーはズンズンと受付のカウンターへ向かった。
「すみません。」
テリーは退屈そうに書類を眺めてはハンコを押していた受付嬢に声をかけた。
「いらっしゃいませ。どんなご用ですか?」
受付嬢は書類から顔を上げ、淡々と定型文言った。
「リラ、という受付嬢に取り次いで欲しいのだが…。」
「リラは私ですが。」
どうやらリラさんはこの人のことだったらしい。
気づかなかったが、よく見ると耳は俺やテリーと同じように長かった。
「え?す、すまない。」
「相変わらず人の顔を覚えられないのねえ。」
リラさんが栗色の長い髪をいじりながら言った。
「まあ、少し顔を変えてるから無理もないでしょう。」
その背後から紺色のベストに紺色のタイスカートのやや吊り目がちな蝶の羽の精霊が出てきて言った。
顔を変えている、というのはエルフだと奴隷狩りをしている奴らに会うと面倒だからだろう。
「それで?私になんの用かしら?」
「ああ、用があるのはリラの方じゃなくてリラの契約精霊の方なんだが…。」
「ミズキに用ですか?」
リラさんの契約精霊ーミズキさんは首を傾げて言った。
「昨日の朝、特位精霊の居場所をきたでしょ?」
スグハが俺の頭の上から身を乗り出して言った。
「ああ。お久しぶりです、スグハ様。そうですか、詳しい情報を聞きに、ということですね?」
ミズキさんは背筋をピンと伸ばしてスグハに低頭した。
「そうだけど…、別にタメ口でいいわよ?あなたの方が歳は上なんだから。」
「そうもいきません。」
ピシャリとミズキさんは言った。
「ミズキは上位精霊であり、スグハ様は高位精霊です。序列は重要ですから。」
「相変わらず、ミズキはお堅いわねえ。」
スグハはやれやれという風に首を振った。
「まあいいわ。用はさっきあなたが言った通りよ。特位精霊の方たちがどこにいるのか知りたいの。」
「わかりました。では2階の会談室へ案内しますね。リラ、いきますよ。」
「はあい。」
リラさんは気だる気に返事をして、書類の束をテーブルの隅に追いやり、手元のカードに何かを記入し、鍵の束を取り出して立ち上がった。
リラさんはカウンターから出て建物の奥の大きな階段へ向かった。
俺たちもそれについて行った。
案内されたのは階段を上がって少し進んだ先の部屋だった。
中央には部屋を分断するように縦長のテーブルが置いてあり、ソファーがそれに沿うように置かれていた。
俺たちはそれぞれ適当な場所に座った。
「それでは、特位精霊の行方についてですね。」
「うん。詳しい話をお願い。」
俺たちとは反対側のソファーに座ったリラさんの隣に、リラさんと同じくらいのサイズになったミズキさんが座った。
「はい。ミズキがお見かけしたのはウォーキンス様です。」
「ウォーキンス様?あのヴァルキリーと一緒にいる?」
「はい。空色のマントを纏っていましたので、間違いないかと。」
「そう。」
「ヴァルキリー?」
ライトが首を傾げて言った。
「女神様に使える女性騎士たちのことだ。彼女たちはこのラミレリア王国の南の半島に国を構えていて、有事の際はペガサスに乗って戦うんだ。」
テリーがライトに向かって説明してくれた。
「ちなみにヴァルキリーの国は女性しか入ることが許されていないんだ。よく知らないけど、そういうしきたりらしい。」
「へえー。」
ファンタジーの定番、って感じだな。
男子禁制の国って。
「話を戻しますね。」
「ああ、すんません。」
ライトが話を逸らしてしまったことをミズキさんに詫びた。
「それで、少しお話をしたんです。どうやら武器を作るために必要な鋼を探しにきていたそうです。」
「ああ、あの綺麗な黒髪の人?」
リラさんはようやく思い出したと言うように手をポンと叩いて言った。
「そうよ、リラ。あなたは受付で一緒にいたヴァルキリーの使者の人と話し込んでたからよく見てないでしょうけど。」
「それで、その人たちは今どこへ?」
テリーが聞いた。
「おそらくですが、ヴァルキリア…ヴァルキリーの国に戻ったのではないかと思います。」
「それじゃあ、そのウォーキンスさんに会うにはヴァルキリーの国に行かないとってことか…。」
俺はソファーの背もたれに背を預けながら言った。
「そうなりますね。ヴァルキリアはここからずっと南下していくとあります。しかし…入国できるのは女性のみとなっていますので…スグハ様の契約者様たちは入国できないです。」
ミズキさんが言うと、ライトがいい案を思いついた!と言って立ち上がった。
「女装すればいいんじゃないか?」
ゲームとかだとよくあるよな。
「おそらくバレて処刑されてしまうでしょう。入国の際には身体の隅々まで調べられますから。変化のスキルがあれば突破できるかもしれませんが…。」
そういえば俺、転生前のスキル選びで変化をとったような…。
そう思って俺はステータスシートを開いた。
スキル一覧を眺める。
スキル
火炎耐性 脚力強化 千里眼 体力増強 変化 略奪不可 錬金術 森林移動
やっぱりあった。
「俺、持ってますよ。変化のスキル。」
「そういえば俺と決闘した時に使ってたな。」
「一回やってみたらどうだ?」
ライトが促した。
俺は目を瞑って俺を女体化させた姿をイメージする。
しかし、どうしてもブスになってしまう。
せっかくなら美女になりたいので、スグハをベースにスグハよりも大人っぽい顔にしてみる。
そして、体型はエルフになってから細くなったのであまり変える必要はないのだが、せっかくなので少し整形。
これだ、と思い、スキルを発動させる。
『スキル・変化』
俺はイメージした姿に変化した。
「おお!」(テリー)
「おー。」(ライト)
「まあ!」(ミズキさん)
「わあ!」(スグハ)
「可愛い!」(リラさん)
変化が終わって顔を上げると、その場にいた全員から様々な反応をもらった。
スグハは人の姿になって俺の隣に並んだ。
「どうどう?テリー、あたしたち、なんだか姉妹みたいじゃない?」
スグハベースで構成しましたからね。
「そ、そうだな。」
「ていうかそっくりすぎて双子に見えるな。」
ライトが俺の顔をジロジロ見て言った。
テリーは少し複雑そうな顔をして、目を逸らした。
「調子はどう?」
リラさんが言った。
「そうですねえ。」
おっと、思ったよりも高い声だった。
でもまあ、野太い声よりはいいか。
「ちょっと違和感はありますけど、調子はいいです。」
「うんうん。その感じなら、ヴァルキリアに行ってもバレないんじゃない?」
「そうですね。ミズキもそう思います。」
二人は仲良くうんうんと頷いている。
「それじゃあ、俺は明後日からヴァルキリア目指して旅に出るよ。」
俺が言うと、ライトが少し驚いて言った。
「早くないか?」
「ウォーキンスさんの居場所がはっきりしない以上、とにかく行動しないと。」
「そうですね。それでしたら、この国とヴァルキリア周辺の地図帳の写本を渡します。明日には完成できると思うので、商人ギルドまで取りに来てください。」
ミズキさんがポケットからメモ帳か何かを取り出してサラサラと何かを書き留めた。
「えっ、いいんですか?地図ってそんな簡単に他者に渡しちゃっていいんすか?」
ライトが言った。
「本当はだめですけど、我々としてもウォーキンス様の行方は知りたいですし、渡すのも写本ですので大丈夫です。」
「そうですか。ではありがたくもらいます。」
俺はミズキさんとリラさんに深々とお辞儀をした。
他のみんなもそれに倣って頭を下げた。
「それでは、明日の昼頃に地図を取りに来てください。お待ちしております。」
「わかりました。ありがとうございます。」
俺たちは再度ミズキさんたちにお礼を言って、会談室を後にした。
階段を降りて一階に行くと、タイチとユウトが何やら猿耳族の商人と困ったように話をしていた。
「ーそんなわけで、今は質のいい油も悪い油も仕入れができない状況なのです。」
商人はオレンジ色の帽子をとって心底申し訳なさそうに二人に謝っていた。
「うーん…どうしよう…。宿の油、そろそろ無くなっちゃいそうなんだよなあ。」
タイチが長い耳をしゅんと垂れながら言った。
「どうかしたの?」
俺が尋ねると、3人は驚いたような顔をした。
「えっと、どちら様でしょう?」
タイチがしどろもどろ言った。
「え?」
なんでわからないんだ?
この前会ったじゃないか…。
俺が首を傾げると、ライトが俺の肩に手を乗せて言った。
「変化。」
あ。
そうだった今俺変化で、女装してんだった。
俺は急いで変化を解いた。
「えええ!?」
ユウトが驚いて飛び跳ねた。
「な、ナオ?」
「うん。変化のスキル持ってたから、ちょっと実験をね…。」
「ついにこいつ、女装趣味に目覚めちまったんだ。」
ライトが俺の肩に手を置いたまま誤解を招きそうな発言をした。
「ちがっ!そう言うんじゃねえって!そ、それより、御三方は何を話してたんだ?」
俺は急いで話題を逸らした。
「ああ、馬宿の明かりに使う油を買いに来たんだが、油を入手するルートが潰れてて、買えなかったんだ。」
「というと?」
商人がオレンジ色の帽子を被り直して言った。
「はい、実はここから南にある油を生産しているベルナ鉱山の麓の森でオークの巣が発見されたんです。数は定かではありませんが、発見した冒険者の見立てでは非常に大規模な巣のため、500匹は優に超えるかと想定されています。」
「オーク?」
腕を組んで静かに話を聞いていたテリーが言った。
「オークが南の森に大規模な巣を作っている?」
「はい、その通りでございます。」
そういえば、昨日の警備でも何匹かオークがいた気がする。
ライトが思い出したかのように言った。
「そういや、昨日の門の警備ででかいオークが襲ってきたな。まあ、撃退したけど。」
「大きいってどのくらい?」
スグハが人化を解いて言った。
「うーん、俺3人分くらい?」
「エルサの報告にもあったとおりだな。おそらくだが、そいつはオークキャプテンじゃないか?」
「オークキャプテン?」
俺とタイチ、ユウトが頭の上に?を浮かべながら言った。
「オークの上位種よ。」
スグハが答えた。
「オークには5つの階級があるわ。弱い順にオーク、ハイオーク、オークキャプテン、オークジェネラル、オークロードの5つよ。他にも亜種としてウルクがいるわ。オークキャプテンは上から3番目の強さよ。普通、3人じゃ倒せないわよ。」
「そうなのか?エルサと一緒に戦ったけど、あんまり強くなかったぞ?」
「お前らが強すぎるだけじゃねえ?」
「本当にオークキャプテンなら他にも数匹オークかハイオークがいると思うけど?そいつらはどうしたの?」
スグハがライトを質問攻めする。
「ああ、他にも10匹くらいいたなあ。」
「オークが10匹も!?」
話を聞いていた商人が顔を青くして言った。
「ほとんどススムが一人で追い払ったぞ?」
「どうやって?」
タイチが聞くと、ライトは腕を大きく振りかぶって言った。
「こうやって…」
ライトが振り上げた腕を床に叩きつけた。
「こう…ドゴォン!って。そしたらオークキャプテン?以外のオークたちはみんな散り散りに逃げてったぞ。」
親友たちがどんどん人外に…。
まあススムはドワーフになったから文字通り人外なのだが。
「やっぱりあなたたち、常人じゃないわね…。」
スグハが唸った。
「そ、そんなことができる人がいるとは…。」
商人も信じられない、と言う風に言った。
「そんなにお強いのでしたら、明後日、ベルナ鉱山まで護衛をお願いできますでしょうか?冒険者ギルドにも依頼を出したのですが、ハイオークから護衛するのですから、誰も引き受けてくださらないのです。」
「俺たちは構いませんけど…。」
俺がスグハと顔を見合わせて言うと、テリーとライトは首を横に振った。
「ナオは南のヴァルキリアに向かうからいいと思うけど、俺たちは村の自警団だからなあ。」
二人は村の警備の仕事があるため、来れないようだった。
「僕たちは、戦闘スキルを持っていませんが…油は早く仕入れたいんですよね…。」
ユウトがおろおろと言った。
「一度旦那様に確認をしてきます。」
タイチも少し考えて言った。
「すみません、では明日馬宿のお二人は確認を取ってもらって、エルフの方もまた集まってもらってもよろしいでしょうか?」
商人が言うと、俺たちは頷いて言った。
「わかりました。それではまた、明日のこの時間に来ます、えっと…?」
俺は商人の名前がわからなくて、言葉に詰まった。
「申し遅れました、ワタクシ、鉱産資源商人をしております、ホウエル・ホーンと申します。」
商人ーホーンさんが自己紹介をすると、俺たちもそれぞれ自己紹介をした。
「それでは明日、よろしくお願いいたします。」
ホーンさんと別れて、俺たちは集合場所の広場の方へ向かった。
「なんか、あっさり護衛の依頼引き受けたけど、よかったのか?ナオ。」
ライトが言った。
「まあ、ついでだしね。ヴァルキリアも、ベルナ鉱山もここより南にあるわけだし。」
「ナオがいいなら別にいいけどさ。」
広場に着くと、すでにススムとツバサがベンチに座っていた。
「二人とも!早かったな!」
ライトが二人に手を振りながら言った。
二人は立ち上がってこちらに来た。
「二人とも、なんだか嬉しそうね?」
スグハが言った。
「うん、僕たちなんとね、錬金術師と鍛治師の手伝いになれたんだ!」
ツバサが尻尾をブンブン振りながら言った。
ススムもうんうんと嬉しそうに頷いている。
「すごいじゃないか!でも、一体どうやって?」
テリーが言った。
「冒険者ギルドで求人の応募に行ったらちょうど、この前言ったランドラさんって鍛治師が手伝いを募集してて、ススム君が鍛治が少しできるって紹介したらすぐに気に入って、手伝いとして雇ってくれたんだ。人手が足りないって言うよりかは、ススム君の腕前を見抜いたっていう感じだったな。」
「それで、明日から僕はランドラさんの手伝いをすることになったんだ。その後錬金術屋に行って、ツバサが錬金術を披露して見せたら、錬金術師さんは見込みがあるって言って、弟子としてツバサを迎えてくれたんだ。」
二人がお互いの成果を発表した。
「すごいじゃないか、二人とも!おめでとう!」
俺たちは二人に拍手した。
まさか半日で弟子入りしてくるとは…。
我が親友恐るべし…。
「ライトたちはどうだった?」
俺たちも結果を報告した後、ベルナの町の屋台で買い食いをして、日が暮れる前に村に帰った。
ハルヒに乗って、村に続く道を歩いていると、反対側からランガスさんとチャドさん、ミレイさんが歩いてきた。
「みんな!」
ミレイさんがこちらに向かって手を振った。
「兄貴たち、村の周辺の警備か?」
テリーが尋ねると、チャドさんは頷いて言った。
「…村から南の方で、オークたちが巨大な群れで行動しているのを見つけた。…これから春になるが、大規模な群れだったから周辺の草木は食い尽くされるだろうな…。」
「ベルナの商人ギルドでも聞きましたよ。ベルナ鉱山の麓にオークの巣が見つかったとかって。」
俺が言うと、ランガスさんたちはやっぱりか、と言う風に肩を落とした。
「…今日見た限りでは、オークの群れは徐々にこちらに向かって勢力を広げているように感じた。…まだ当分ここには辿りつかないだろうが…。」
「それでしたら、明後日から俺とスグハはそっちの方に行くので、ついでに撤退させるように呼び掛けましょうか?」
俺が名案とばかりに進言すると、チャドさんは首を振った。
「…呼び掛けは無理だ…。」




