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第十話 ベルナの町

俺たちはベルナの町の教会に来ていた。

この教会では恵みをもたらすオオヤマツミという神様が祀られているらしい。

なんだかこの神様の名前、日本の神様と響きが似ている気がするのだが、気のせいだろうか?

教会は石のレンガでできていて、掃除が行き届いているのか、苔ひとつ生えていなかった。

見た目は西洋の教会そのもので、教会の周りには手入れが行き届いた綺麗な庭が広がっていた。

俺たちが教会の中に入ると、シスターのような姿をした猿耳族の女性が出迎えてきた。

「こんにちは。オオヤマツミ様にお祈りですか?」

「そうだよー。村に新たな仲間を迎えることになったから、もっとたくさん食べ物が必要になってくるだろうしねー。」

ミレイさんがシスターと親しげに挨拶を交わした。

「!あらあら?」

シスターが俺の後ろを見て何やらニヤニヤとしながら言った。

「どうやら、子宝の恵みもお祈りしておくべきのようですね?」

俺が後ろを振り向くと、ライトの腕をがっしりと掴んだエルサさんが、シスターを睨みつけていた。

「あんなに猿耳族を嫌っていた貴女が、猿耳族の殿方を連れてくるとはねー。」

あ。

少しエルサさんの顔が赤くなった。

「盗らないでよ、サラサ。」

エルサさんがシスター…サラサさんを睨みながら言った。

「それじゃあ、お祈りしましょ!」

ミレイさんがオオヤマツミ様らしき男の銅像の前へ向かいながら言った。

「いきましょ。」

スグハは俺たちを促して言った。

俺たちは銅像の前の横に長い椅子に座って、腕を組んでお祈りを始めた。


すると、目の前が薄緑色に染まった。

そして、俺の目の前に緑色の着物のような服を羽織った大柄の男が立っていた。

『我はオオヤマツミ。汝に恵みをもたらす者なり。』

俺は呆然とオオヤマツミと名乗る男を見つめていた。

『汝に加護を与えよう。』


俺が呆然としていると、また教会に戻ってきていた。

俺の他に、ライトやススム、ツバサも俺と同じように呆然と宙を見つめてた。

「どうした?4人とも?」

ラミアさんが不思議そうに尋ねた。

「神様にあったんです。」

「神様?オオヤマツミ様のことー?」

「加護を与えようって。」

どうやら、他の3人もオオヤマツミ様から加護を受け取ったらしい。

俺たちはステータスシートを開いた。

すると、キャラクターシート(レベルや称号とかが書いてある方のシート)の一番下に「加護」という欄が追加されていた。


加護

恵の神(オオヤマツミ)の加護


「なるほど、4人は加護を頂いたのか。一体どんな加護なんだろうな?」

「恵の神の加護っていうくらいだから、豊作になるみたいな加護じゃないか?」

あれこれ話していると、サラサさんが

「後がつかえていますので、終わったのでしたら出て行っていただけるとー…。」

と俺たちを出口の方へ促した。

「ああ、すまない。行くぞ、みんな。」

ランガスさんに連れられて、俺たちは教会を後にした。


「それじゃあ、ここからは自由行動とするか。」

噴水のある広場でランガスさんが言った。

「…俺はリルルとルカを家に連れて行かないとだからな。」

チャドさんがリルルとルカと手を繋ぎながら言った。

「わかった。それじゃあ、夕方の鐘が鳴るまでにまたここに集合するように。」

「はい。」

俺たちは返事をしてそれぞれ解散した。

「ススム、一緒に行こうぜ。」

俺は元のサイズに戻ったスグハと一緒にススムに言った。

「うん。」

「あたしも一緒にいいー?」

ミレイさんが言った。

「もちろん。」

ライトはエルサさんに連れられて、どこかへ行ってしまった。

ツバサはランガスさんと武器屋を見に行った。

「まずはスグハのアクセサリーの素材になりそうなものを探すか。」

俺が言うと、ミレイさんの後ろからレミが出てきた。

「あれ、ランガスさんと一緒に行かないの?」

ミレイさんが言うと、レミはリボンをひらひら揺らしながら言った。

「ランガスがあなたたちに素材を売ってる店を教えてやれって…。」

「ああ、なるほど。ありがとう。」

俺たちはレミの道案内で素材屋に行くことになった。


素材屋は冒険者ギルドのすぐ近くにあり、ギルドの建物と似たような雰囲気の木造の建物だった。

冒険者ギルドで買い取ったものをこの素材屋で売り捌いているらしい。

「へえ、ここが。」

「入りましょう。」

レミが俺たちの背中を非力な力で押した。

中は木箱やチェスト(宝箱)でぎゅうぎゅうで、かろうじて人が1人通れるくらいの隙間しかなかった。

「やあ、レミ、それにスグハも!よくきたね。」

奥のカウンターから黒色のフードを被った中年の女性が言った。

フードで顔の目から上がスッポリと隠れてしまっているため、種族はわからなかった。

「他の3人は…新人かい?」

「ええ、そうよ、ヘナー。」

俺たちはそれぞれヘナーさんに挨拶して、要件を伝えた。

「ふむ。スグハにあうアクセサリーの素材ねえ。」

「できれば、レミみたいなリボンにしたいんだけど。」

「それなら…。この真白絹と、ウェアウルフの魔石を組み合わせてリボンを作ったらどうだい?」

ヘナーさんは白い大きめのハンカチくらいの絹とスグハの髪と似た青色の玉を取り出した。

「絹って高いんじゃあ…。」

ススムが心配そうに言った。

「いや、この絹は純度が低いし、何よりこのくらいのサイズじゃあ、何も作れないからね。二つ合わせて銅貨55枚だよ。」

俺はポケットから小銀貨を一枚取り出してカウンターに置いた。

「じゃあ、お願いします。」

「はい、毎度。いやー、それにしても、あのスグハに契約者ができるなんてねえ。」

ヘナーさんは引き出しの銅貨を数えながら言った。

じゃらじゃら。

「ふふっ、ついに見つけたのよ、ヘナー。あたしのなおほび(騎士)をね!」

スグハがドヤり顔で言った。

ヘナーさんは銅貨を数えながらスグハに言った。

「大事にするんだよ。契約者は一生ものだからね。レミもね。」

じゃらじゃら。

「はいよ、お釣りだよ。」

ヘナーさんは銅貨を10枚ずつ重ねて机に置いた。

全部合わせて45枚。

「ありがとうございます。あ、お金を入れる布袋とかありませんか?」

俺が言うとヘナーさんは呆れたように

「なんだい、ずっとポケットに小銀貨を入れてたのかい。」

と言って、カウンターの引き出しから小さな布袋を取り出した。

「ありがとうございます。いくらですか?」

俺が言うと、ヘナーさんはお代はいらないよ、と言って布袋を俺に渡した。

「ありがとうございます!」

「他の2人は何か買うかい?」

「いや…。」

「んー…、あたしもいいや。」

「そうかい。それじゃ、またきてな。」

俺たちは再度ヘナーさんに礼を言って、素材屋を後にした。


「それじゃ、私はランガスの元に戻りますね。」

レミもそう言って俺たちと別れた。

「それじゃ、どうするか。」

俺がそう言うと、どこからか悲鳴が聞こえた。

「行こう!」

ミレイさんはそう言って悲鳴が聞こえた方に走り出した。


そこはゴミが散乱し、生ごみが腐ったような酷い悪臭のする路地裏だった。

さらにそこには猿耳族のガタイのいい男が3人、気弱そうな小さなホビットと銀髪のウサギの耳をした兎耳族、赤髪と茶髪の猿耳族と向かい合っていた。

赤髪と茶髪の猿耳族はボロボロになっていて、ホビットと兎耳族を庇うように立っていた。

「お前ら本当にスキル魔法持ちかあ?」

ガタイのいい男の1人が革のグローブを嵌め直しながら言った。

「弱すぎて話にならん。まあ、これがレベル差ってやつだなw」

小型のナイフを逆手に持った男が言った。

「俺たちの経験値になってもらうぜえ!」

ロングソードを持った男が2人の猿耳族にとどめとばかりにロングソードを振り下ろす。

「…危ない。」

視界が戦闘状態になる。

ススムが勢いよく飛び出し、ロングソードを持った男をタックルしてロングソードの軌道を逸らした。

しかし逸れた軌道は運悪くススムの顔の中央に真一文字の傷口を作ってしまった。

ススムの体力ゲージの3分の1が削れた。

「ススム!」

俺はナイフをススムに突き刺そうとした男を素手で殴り倒してススムに駆け寄った。

「ナオ!あたしに任せて!」

スグハが俺の肩から飛び降りて言った。

そして呪文の詠唱を始めた。

治癒魔法リカバリー

すると、ススムの顔からだらだらと流れていた血が止まった。

ついでに体力バーも元の長さに戻った。

しかし、血は止まったものの、傷跡は残ったままだった。

「あのロングソード!不完治の魔法がかかってるわ!」

傷が綺麗に塞がらないのを見たスグハが叫んだ。

「せああ!」

ミレイさんがどこから取り出したのか、巨大なハンマーで突然の襲撃に戸惑っているグローブの男を弾いた。

ゴロゴロと路地の端に転がった男たちは俺たちの耳を見て叫んだ。

「がああ!んで、エルフがいんだあ!?」

「お前らも俺たちの経験値にしてやる!」

ロングソードの男が今度は俺に切り掛かってきた。

俺はそれを避け、腹にグーパンをかました。

しかしハードレザーの防具をつけているため、体力ゲージはあまり減らなかった。

「落ち着け!こいつらはまだ子供だ。」

グローブの男が赤色の宝石のはまった杖を取り出して言った。

「なんでそう思うんだ?」

俺が背中の剣を抜きながら言った。

「決まってる。エルフは若ければ若いほど耳が小さいんだよ。」

そうだったのか。

確かに言われてみればテリーやチャドさん、ランガスさんたちは耳が俺たちよりも少し長い気がする。

「はっ。んだよ、びびらせやがって。」

ナイフの男がものすごい速さで俺を切り裂きにきた。

『スキル・アサッシングナイフ』

ナイフの刃が俺の首にとどきそうになる。

なんとか俺は剣で防御することに成功した。

男はすぐに俺から距離をとった。

「こいつら、少しはやるようだな。」

俺は剣を構え直した。

爆裂魔法バン

ミレイさんは俺が動くよりも前に呪文を唱え、魔法を発動させた。

男たちの胸元で小規模の爆発が発生し、男たちを路地の壁に叩きつけた。

男たちの体力バーが半分程度に縮んだ。

やつらもスキル魔法を持っているらしく、左下を見て不利だとさとったらしく叫んだ。

「ヅラかるぞ!」

「覚えてろよ!ギルドランク30の俺たちに喧嘩売ったこと、後悔しろよ!」

男たちはお決まりの台詞を吐いて表通りに走って行ってしまった。

男たちが去った後には4枚のギルドカードが落ちていた。

ギルドカードには見覚えのある名前が書かれていた。

「久しぶりだな。」

俺が4人に声をかけると、4人は俺を目を丸くして見つめた。

大智タイチ優斗ユウト勇介ユウスケ康生コウセイ、俺だ、ナオヤだ。こっちではナオって名乗ってるから。」

4人はさらに目を丸くした。

よくよく見ると、赤髪の猿耳の少年はユウスケそっくりだし、茶髪の方はコウセイにそっくりだ。

銀髪の兎耳族はタイチそっくりで、濃紺の髪色のホビットはユウトそっくりだった。

休みの日に一緒に遊ぶ、と言うほどの仲ではなかったが、4人とは休み時間とかによく喋っていた。

タイチは地元のサッカーチームに所属していて、運動神経抜群で、ユウスケはバスケ部で素早い動きが得意だった。

ユウトとコウセイはテニス部でユウトは若干運動が苦手、というイメージだ。

「ナオ…ヤ?」

タイチが言った。

「じゃあ、他の3人も…?」

「ああ、こっちのムキムキドワーフはススムで、この2人はこっちの世界の住人だよ。…あ。」

言ってから気がついた。

ミレイさんたちには俺は奴隷だったと話していたのだ。

奴隷でない知り合いがいると言うのは不自然。

やらかしたー!

…そう思っていたのだが、ミレイさんは俺の肩に手を置いて言った。

「ナオの奴隷仲間?あたしはミレイ。よろしくね。」


俺たちはランガスさんたちに合流する道すがら、4人に設定を説明した。

「なるほど。確かに女神様に転移させられましたって言っても、信じてもらえないか。」

コウセイが言った。

「じゃあー、僕たちはー、その奴隷商のー、下働きって設定にすればー、いいかなー?」

ユウスケが新たな設定を即興で追加してくれた。

「そうだね。頼むよ。」


途中、俺たちは屋台によって、昼飯を買うことにした。

俺とミレイさんのエルフ組とタイチはサラダセットを買い、人間組と小人ドワーフとホビット組は鹿の串焼きを買った。

俺とミレイさんから見ると、肉はどうも美味そうに見えない。

タイチはウサギなため、肉を消化することができず、食えないらしく、美味そうに肉を頬張る4人を羨ましそうに見つめていた。

スグハに関しては匂いを嗅ぐのも嫌だと、俺のポテサラに顔を埋めてポテサラを頬張っている。

「それにしても、4人は一体今までどこにいたんだ?」

俺が切り出すと、葉野菜をバリバリ噛みちぎっていたタイチが言った。

「ああ、この町にある馬宿の住み込みの仕事をしてるんだ。」

「馬宿?」

「あたしは馬に乗らないから使わないけど、馬で旅をする人たちが利用する宿泊施設よ。」

ミレイさんが俺とススムに説明してくれてた。

「僕たちは馬の世話をしたりもするから、最初は酷い目にあったよ…。」

コウセイが言った。

「馬に蹴飛ばされたり、馬糞をかけられたり…。」

「でも朝夕2食付きだから生活面では結構いいんだよ。正社員として雇ってもらえたしね。」

「なるほど。でもどうやってそこに就職したんだ?」

俺が聞くと、ユウスケが答えた。

「初日にこの町に来れてー、ギルドに会員登録してー、馬宿のアルバイト的な依頼があったからー、受けてみたらー、ボクのアニマルトレーナーのスキルが役に立ってねー。」

「宿屋の主人が俺たちを正式に雇ってくれたんだ。」

「へえー。」

「そろそろ広場へ行きましょ!」

ミレイさんが惣菜のゴミを収納のスキルを使って片付けながら言った。

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