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潮風とサンドイッチ  作者: 京野 薫
8/13

揺れる気持ち

とりあえずはこのくらいでいいかな・・・

神谷さんの出してくれた軽トラックの荷台に、自宅アパートから運び出した着替えや最低限の家具を積み込んで、私はアパートの窓を見上げ深々とため息をついた。

海辺で潮騒の聞こえる素敵な貝殻と出会った翌日。

神谷さんのお店「サザンウインド」に下宿するにあたり、生活に必要な物をアパートから写そうと思ったのだ。

本当はもっと早くに行うべきだったのだろうけど、環境の変化に心が追いつかずついつい後伸ばしになっていた。

また、ここに戻ったのはもう一つ目的があった。

荷物を移す前に心療内科のクリニックも受診し、そこで「適応障害」との診断を受け診断書をもらうと共に一ヶ月の休職指示が出た私は、職場のクリニックにその旨を伝えると共に退職の意思も伝えた。

ただ、職場のリーダー曰く「あなたにしか分からない業務もある」との事で、退職は一旦保留となり休職期間中に当面連絡がある都度、対応して引き継ぎも兼ねて在宅勤務のような事をすることとなった。

「本当はドクターストップがかかったら、即日退職も効くんですけどね・・・でないと、何かあったときに遺族から訴えられたら、安全配慮義務違反でエラいことになるから」

「ありがとう。でも、あれだけ迷惑かけたから、これ以上は・・・」

「夏木さん、本当に真面目ですね。あ、これ嫌みじゃないですよ」

神谷さんは不満げにそう言ったが、職場の人もいい人が多い。

そんな人たちまで見捨てて、それでよしとするのは辛い。

「そんな事無い。やっぱり嫌な気持ちになってる人も多いみたいだし」

職場から出るとき、仲良くしていた事務の子が居たので挨拶をしたが、チラリと一瞥されたのみだったのが、刺さったトゲのように心に痛みを与えていた。

「それは気にしすぎない方がいいですよ『認知のゆがみ』のせいかもしれないので」

「認知のゆがみ?」

「はい。『物事を過剰に悪い方に捉えてしまう』そんな心理を言います。その人はもしかしたら仕事が忙しくて、夏木さんに言葉をかけれなかっただけかも知れない。それか、久しぶりに見たあなたにどう声をかけたら良いか戸惑っていたのかも知れない」

「そうかな・・・」

「証拠が無いので絶対では無いですよ。もちろん。でもそれなら悪い方の見方も同じく証拠なんて無い。恐らく『根拠をハッキリ言葉に出来る物が真実に近い』と思います。根拠の無い物に囚われすぎないでください」

「う、うん・・・」

確かにそうかも知れない。

どうも何でも悪い方悪い方へ考えすぎて、いつしかそれが真実と思い込む。

どうもこのパターンが多い。

「職場の事は考えすぎない方がいいです。人それぞれ事情もあまりその状態が負担になったら、迷惑とか考えすぎずに踏み切った方がいいですよ」

「うん。ずっと宙ぶらりんも辛いし」

そう。休職中に電話対応は引き受けたいいけど、真綿で首を絞められるような気分なのは事実。

でも・・・何でもかんでも逃げたくないし・・・

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