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潮風とサンドイッチ  作者: 京野 薫
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ドライブ

私はただ頭を空っぽにして逃げていた。

車を走らせて。

道路を目的地も決めずに走らせていると、物理的にも精神的にも逃げているように感じて、その自分が落ちている様な、それでいて救われているような不思議な感じがただ楽しい。

昨日、私は仕事を辞めた。

いや、正しくは放り出したのだ。


とあるクリニックで看護師として働いていたけど、忙しさを増す仕事。

何だかんだと言って私だけに降りかかる仕事。

「あなたでないと無理だから」

そんな甘い言葉にのった自分が馬鹿だったのだけど、結果クリニックの雑務のほとんどを受けることになった。

そして、さらに「あなたのお陰でみんな気持ちよく仕事が出来ている」またまた甘い言葉に乗せられて、みんなへのドクターからの批判の矢面にも立った。

あの日までは、満足していた。

私が盾になっているから、みんなのびのび仕事できている。

私にしか出来ない仕事なんだから、誇りを持って取り組もう。

でも、ある日。

ドクターと他の看護師が話しているのを聞いた。

それは、私が一人浮いていると言うことと、自己満足に浸っていると言う物。

いわゆる陰口だった。

よくある事なのかも知れないけど、その時私の心は壊れた。

今まで、信じて来てたものが実は馬鹿馬鹿しいくらい、価値のない物だった。

そこで辞表を出して、円満退職して新しい所を探す。

本来はそうすべきだったのだけど、出来なかった。

職場に行くことが、同僚やドクターの声を聞くことがどうしようも無く怖かった。

仮病で休んだ私は、心療内科を考えてネットで調べ車で向かった・・・けど、たまらない衝動に引っ張られるように全然関係ない方向へ向かっていた。


現実に向き合うのが怖かった。

社会から脱落した自分。心の病を持ってしまった自分。

お金のこと、将来のキャリアのこと。

彼氏は私をクリニックでバリバリ働き、みんなを引っ張るリーダーと思ってくれている。

そんな期待を裏切ってしまう。

そんなこんなが頭の中をグルグル回った。

それは情けないことだけど、今の私には受け止めるには重すぎた。

だから逃げた。

全てから。

どうしたいのか。どうするつもりなのか分からない。

ただ、もうあの場所には戻りたくない。

ごめんなさい。

わたしはあなたたちの思うほど、しっかりした人じゃありません。

正しい人でもありません。

実はおおざっぱでいい加減です。

もう許してください。

見逃してください。

看護学校を出てから10年。

一生懸命頑張ってきました。

悟さん。あなたの好きな私になるため辛いことも話さず綺麗な私、頑張り屋で弱音を言わない前向きな私を見せてきました。

もういいですよね。

私を逃がしてください。

責任は・・・取れません。でも、もう無理なんです。

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