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意識高い系ダイガクセイ

作者: クラリッサ

大学受験が終わった日の帰り道、俺は駅の構内で一人沈んでいた。


「赤本の形式と全く違うじゃねえかよ...」


その日の問題形式が予想とは全く異なっていたことに対応できなかった俺は、試験が終了してからずっと不満を募らせていた。

周りの連中は妙に明るい表情をしているが、きっと名門高校出身なのだろう。浪人をして受験した自分がいつも以上に惨めに思った。

そんな状態の俺の下に、高校時代の友人から一通の通知が届いた。


『久しぶり!今度一緒に食事に行かない?』


普段は友人の誘いをほとんど断っていたが、傷心していた今の俺にとっては気分転換に丁度いいと思い、珍しく誘いに乗った。






渋谷のレストランで現地集合となったため、俺はそこの前に佇んでいた。


「おしゃれ過ぎない?この店...」


俺はファミレスのような店を予想していたため、予想以上のオシャレさに尻込みしていた。

本当にここに入店するのか、と逃げ腰になっている俺の背後から誰かが声をかけてきた。


「よう!久しぶりだな!」


誰かと思い振り向くと、約束をしていた友人がそこに立っていた。

服装のセンスが壊滅的な俺と違って、こいつは黒のテーラードジャケットに白の七分袖Tシャツ、黒のパンツと、典型的な男子大学生と言えるような恰好をしていた。


「相変わらずダサい恰好してんな~」


直にそれを言われると腹立つ。

しかしこの店を前にすると、そう言われるのも無理はない。


「じゃあ店入ろうぜ」


俺の気持ちを少しも理解しないこの友人は、慣れたように入店していった。


(少しは俺を気遣え!)


そう思わずにはいられなかった。








入店してからは意外とその雰囲気に慣れた。


(意外と飛び込んだら大丈夫だったパターンだな、これ)


そんなことを思いながら友人と雑談を楽しんでいるうちに、気付けばお金についての話題になっていた。

お金がなくてさ~、と俺は軽いノリで話していたが、友人は突然スマホを取り出して


「実はさ、俺いま投資をしてるんだよ」


と、チャート画面を俺に見せながら言ってきた。

受験で失敗したばかりの俺には、投資で儲けているであろう友人が眩しく見えた。

俺はつい見栄を張って


「俺も実は今、仮想通貨についての勉強をしているんだよ」


と嘘をついた。

昔からプライドが強かったため、他人と張り合う癖がついていた俺にとって


(俺よりも充実しているなんて許せない)


と思ってしまったのだ。

友人は俺の虚勢体質を知っていたため、苦笑いをするのみだった。

そんな友人の態度を見て、俺は無性に恥ずかしくなった。


「もしよければ、一緒に投資グループで活動しない?」


友人が誘ってきた。


「実はこの辺に俺の尊敬する凄い人がいてさ、もしよかったら紹介するよ。投資についても聞いてみるといい」

「でも...」

「日程はいつがいい?時間帯は?場所はこっちが指定するけどいいかな?」


俺に対して有無を言わさぬまま予定を決めようとしてくる友人。

さっきまでとは様子が違うように見えたが...


(こいつが俺を裏切るわけがないよな)


そう思った俺は、都合のいい日時を友人に伝えた。






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