リバウンドリレーションシップ
会社から帰宅した里奈はチューハイの缶をあけながらスマホをバッグからとりだした。
「連絡まってる時ほど、連絡まってる人以外からのメッセージがこれでもかってほど届くんだよね」
母からのメッセージに返信しながらチューハイを口にし、冷蔵庫から作り置きしてある食事をとりだしあたためる。
「これぞリバウンドリレーションシップの醍醐味ですか?」
自虐的な言い方で彼氏から二週間放置されている自分の状況をからかってみる。
二か月前に彼氏になった拓海は大学時代のゼミ仲間で、彼女と別れたと聞いたので「三ヶ月お試しで付き合ってみよう」と里奈が強引に押し切り付き合うことになった。
大学の時に拓海のことが好きだったが、ただのゼミ仲間で終わった。
拓海には付き合っていた彼女がいたので、人のものを奪う性格でもなければそのような根性もない里奈は、拓海への気持ちをそっと胸にしまった。
大学時代の友人と久しぶりに話をしていたときに拓海が彼女と別れたと聞いた。
聞いた時はそうなのかとしか思わなかった。
しかしふと目に入ったネットの記事に書かれていた「リバウンドリレーションシップ」という言葉を見たときに、「これだ!」とひらめいた。
【リバウンドリレーションシップ】
恋人と別れた人がその寂しさをうめるために新しい関係をはじめること。傷がいえるまでの短い付き合いになることが多い。
このような説明がされていた。
里奈はこれだと思った勢いで男性が失恋から立ち直るのにどのぐらいの時間がかかるのかをネット検索していた。
それぞれのサイトであげられた数字はちがっていたが一ヶ月ほどで立ち直りがみられるという感じだ。
いつ拓海が彼女と別れたか分からないが、まだ付き合っている人がいないなら告白しようと決めた。
勢いにのり拓海に連絡し会う約束をとりつけた。自分史上、これほど積極的になったことがこれまであっただろうかと思うほどの行動の早さで、自分でも笑ってしまった。
「久しぶり!」
待ち合わせ場所にあらわれた拓海はスーツ姿で、学生時代と雰囲気がちがいときめいた。里奈は自分の思いつきをこのまま実行することにした。
「相変わらずちいさいな」とからかわれ、そのあたりは学生の頃と変わっていないようだ。
背の高い拓海にしてみれば百六十センチに満たない里奈はとても小さく見えるようで、ゼミの飲み会でよく「本当にちいさい」と里奈にいっていた。
「考えてみればこうしてサシで飲むのって初めてだよな。いつもゼミのみんなで飲んでたし」
「そうだよね。この間マミちゃんと話した時に拓海の話がでて懐かしくて思わず連絡しちゃった。こっちで働いてる卒業生って多くないしこれを機会に飲み仲間を増やそうと思って」
拓海が笑う。ゼミの飲み会を断ったことがないので里奈は酒好きとして知られている。
お互いの近況を報告しあい世間話や仕事の愚痴をこぼしているうちに拓海が、
「いまさらだけど二人きりで飲んでて大丈夫なのか? 彼氏が乗り込んできて殴ってくるとか勘弁してくれよ」といった。
チャンス到来とばかりに今日の目的を果たすことにした。
「彼氏いないから大丈夫。それをいうなら拓海の方こそ、女の子と二人きりで飲むなんてひどいとかいって頬をひっぱたくような彼女が登場するとかないでしょうね?」
「俺、最近彼女と別れたばっかだから安心しろ」
里奈は拓海に同情をしめしつつ別れた理由をさりげなく聞くと、あっさり「浮気された」といった。
なかなかの修羅場をくぐったようで別れてから三か月たっているようだが、まだ立ち直れていない可能性は高そうだと里奈はふんだ。
「私、大学の時に拓海のことが好きだった。私も彼氏いなくてフリーだから付き合わない?」
ストレートに告白してみた。
「えっ!?」
絶句して拓海が固まっている。
ここまで固まられると拓海にとって里奈は、女としてまったく眼中になかったのだろうと笑えた。
「えっと、俺のこと本当に好きだったの? そういう素振りまったくなかったけど」
「ちょっと、そこから説明させる気? 彼女がいたからあきらめてただけだよ。
ねえ、こうしない? お試しで三か月付き合ってみよう。それでぴんとこなければ友達にもどるのはどう?」
拓海が視線を宙にうかせ考えているようだ。もう一押しした方がよいだろうと口を開こうとしたら、
「じゃあ、お試しで」
拓海が笑顔でいった。
里奈と拓海のリバウンドリレーションシップがはじまった。
里奈はこの勢いを止めてはいけないとすぐに拓海と週末一緒にでかける約束をとりつけた。お昼を一緒に食べて映画でもみようと無難な提案をしたところ了承してもらえた。
里奈の勢いにのまれ拓海は付き合うことを承諾してしまったので、あとで冷静になり断られるかもしれないと思ったが、それならそれでよいかという気持ちだった。
しかし予想に反し拓海は約束をキャンセルしなかった。
里奈からいいだしたことなのですべてお膳立てした。映画のチケットを買いながら、そういえばと元カレに最後の方は放置されていたなと思い出した。
里奈から連絡しなければ相手から何の連絡もなく、その状態に疲れた里奈が別れようといい関係が終わった。
付き合い初めの頃は元カレが積極的にいろいろと計画してくれた。気持ちが離れてしまってからは手のひらを返したかのように何もしなくなった。
「何を縁起の悪いこと考えてるのよ」
里奈はデートに着ていくものをえらび気持ちをもりあげた。
拓海とのデートは楽しかった。大学の時のような気軽さでいろいろな話をした。
昼食と映画だけの予定だったが夕食もという話になった。人混みの中にいるのに疲れたので、デパ地下でおいしいお弁当でもかって家で食べないかとさそった。
それならとビールも買い家でだらだらしながら飲む。楽しい。
野球の話になり応援している球団がライバル同士なことから拓海が応援している球団をこきおろしていると、あっという間に終電の時間がせまっていた。
「うわっ、ごめん。こんな時間まで長居して」
「別にいいよ。帰るの面倒なら泊まっていったら?」里奈がいうと拓海が微妙な表情になった。
女友達と家飲みするといつもそのような流れになるのでいっただけだが、男女の間だと意味が違ってくるのを忘れていた。
「うわーごめん。そういう意味じゃなくて、よく友達と家で飲んで帰るの面倒で泊まるパターンになりがちだからいっただけ」
あわてて言い訳すると拓海が笑った。つられて里奈も笑うと拓海の唇が里奈の唇にふれた。
「うれしい申し出だけど今日は帰るよ」
拓海が帰っていった。まさかキスされるとは思わなかった。すこしは里奈のことを意識してくれているようだとうれしかった。
里奈はいつ拓海が正気にもどり関係解消をいいだすかと考えていたが、拍子抜けするほど普通に交際がすすんだ。
仕事帰りや週末にデートしていたが、交際がはじまり一か月たった頃から里奈が連絡すれば拓海から連絡はあるが、仕事がたてこんでいるといい会うことがなくなった。
付き合いたての勢いがうすれたかと里奈は拓海に連絡するのをやめてみた。こちらから連絡しなくても拓海から連絡はくるのか実験する。
その結果、二週間の放置となった。
「あっけなかったなあ。自然消滅かな」
温めたご飯を食べながら里奈はスマホをみて大きく息をはいた。別れのサインはいつも向こうから連絡がこなくなることだ。
仕事やプライベートで何かと忙しく連絡するのを忘れたり、連絡するのが億劫になることがあるのは自分も同じなので分かる。
しかしさすがに二週間放置は「お前のことなど頭にない」ということだろう。
拓海が元カノと別れた痛みや寂しさを解消させるための期間限定の付き合い。
「忙しくて寂しさを感じる時間もなければ、もしかして私って必要ない存在?」
当たり前すぎることをつぶやく自分の痛さに里奈は笑った。
職場の同期からさそわれ里奈は金曜日の夜に泊まりがけで同期の家に遊びにいった。同期達の近況や職場の噂話で大いにもりあがる。
「そういえば彼氏できた?」
「できてない。面倒くさいから彼氏はしばらくいらない」
拓海とは終わったも同然というよりも、始まってもいない関係なので嘘はいっていないだろう。
「そうだよね。面倒だよね。彼氏はいれば楽しいけど、関係をうまくいかせるのは結構大変」
彼氏と旅行しようと計画しているが、お互い行きたい場所がちがう、休みを合わせるのが大変といった、愚痴なのかのろけなのかよく分からない話を聞かされながら里奈は大いに飲んだ。
翌日は目がさめると昼前で、のんびり二人でご飯をつくって食べたあと解散となった。
一瞬、拓海のことを考えたが連絡などあるはずないと思い直す。
家に帰ったら片付けでもしようかと考えながらもどると、拓海が家の前に立っていた。
「どうしたの?」
「ようやく仕事が一段落ついたから彼女に会いに来たんだけどいないから待ってた」
おどろいた。まさか拓海が自分のことを「彼女」とよぶとは思わなかった。それだけでなく会いに来るとは。
「ごめん、もしかして連絡くれてた? 昨日友達の家で飲んでてスマホ電池切れさせちゃったから見てなかった」
拓海を家に招き入れると抱きしめられた。
「連絡せずごめん。仕事がたてこんでるところに出張がはいってばたばたしてて。
金曜日にやっと片付いたから連絡いれようと思ったら夜中で、朝起きてからにしようと思って起きたら昼すぎてた。
あわてて里奈に連絡しようと思ってアプリみたら二週間前からまったく連絡してなかったことに気付いて。
ぜったい里奈が怒ってるだろうとあわててここにきた」
拓海の言い訳にどれほどの真実がふくまれているか分からないが、素直に会いにきてくれてうれしいといっておこう。
「こうして会いにきてくれてうれしいよ。拓海は私とのこと自然消滅させようとしてるのかとちょっぴり思っちゃった。だからしつこくするのも何だからと思って連絡するのやめたんだ」
拓海が大きなため息をついた。
「ごめん。本当にごめん。仕事で追いこまれると連絡がおろそかになって、それで女の子に振られてきてるから気をつけようと思ってるんだけど。本当にごめん」
里奈は拓海を抱きしめ返した。
拓海はゼミ仲間なので性格は知っているが、友達として付き合うのと、彼氏として付き合うのとでは相手に見せる面が違う。
大学時代に拓海と連絡が取りづらかった記憶はないが、お互いあれから状況は変わっている。それに彼氏としてまめに連絡する方なのかは今回はじめて知ることだ。
「拓海が来ると思ってなかったから家にろくなものないし、お腹すいてるなら外に食べに行くかデリバリーかなあ。どうする?」
お互い外食する気力はなかったのでデリバリーを頼み、家にあるワインを飲みながら前回と同じくだらだらしているうちに終電の時間に近付いた。
「終電もうすぐだよ。そろそろ出ないと間に合わない」
「――泊まっちゃだめ?」
拓海がわざわざ家に来た理由が分かった。
「いいよ」
拓海が里奈を抱きしめ深くキスをした。
拓海との付き合いはその後も変わらなかった。
里奈が連絡すれば拓海から返事はくる。しかし拓海から連絡をしてくることはなかった。
里奈は週末拓海と会えないか連絡しようかと思ったがやめた。そろそろお試し期間の三か月がおわる。関係終了だ。
しかしめずらしく拓海から週末会いたいという連絡がきた。
土曜日の昼間は用事があるので夕飯を一緒に食べようということだったので、里奈は昼間ひとりで買い物にでかけた。
デートに着ていくのにちょうどよいワンピースをみつけた。夜のデートに着ていこうと浮かれていると、雑踏のなかに拓海の姿をみつけた。
声をかけようとして拓海の隣にいる女性に気づき、その女性が拓海と腕をからめているのが目に入った。
「用事ってこういうことかあ」
拓海は好きな人ができたので里奈との傷をなめ合う関係はもう必要なく、関係解消のために連絡してきたのだろう。
「律儀だなあ」
デートに買ったばかりのワンピースを着ていこうと思っていたが、別れ話に着飾る必要もないかと里奈は着ていくものを考え直した。
拓海が予約していたレストランはいつもよりもすこし高級な所だった。
別れ話をするのだしとカジュアルな格好をしてきたので里奈は場違いさにいたたまれない。
「拓海、こういうお店にくるなら一言いってほしかったなあ。服がレストランの雰囲気にあってなくてはずかしいよ」
「いや、全然大丈夫。かわいいよ」
そうだった。男に女の服のことを聞いても的外れな感想しかかえってこないのを忘れていた。
場違いな服はいまさらどうすることもできないので、拓海との最後のデートを楽しもうと里奈は気持ちを切りかえた。
料理を楽しみようやくデザートになった。話を切りだそう。
里奈から始めた関係だ。里奈が終わらせる。
「拓海、今日で三か月のお試し関係終了しよう。ありがとう、いままで」
里奈は拓海のおどろいた顔をみて、もしかしたら里奈が拓海を振るような形になったことにプライドを傷つけたかもとあせる。
「ちょっと待て。関係終了ってお試しの関係を終了させて、ちゃんと付き合おうって意味じゃないよな。その言い方からすると」
「うん。友達にもどろうって意味。拓海もそう思ってたでしょう?」
「何だよ、それ。なんで勝手に俺が関係終了させようって思ってることになってるんだよ」
拓海が怒りをみせたことにおどろいた。拓海から話を切りだすのを待てばよかったかもと後悔する。
「だって今日、女の子と腕くんで歩いてるのみたよ。彼女と付き合うことにしたから関係終了の話しをするために連絡してきたんでしょう?
拓海から連絡くるなんてめずらしいから、こういうことだったんだって納得がいった」
「待て、ちょっと待て。彼女は――」
里奈は拓海の言葉をさえぎった。
「お試し期間で駄目だと思ったら関係解消しようって初めからいってたんだから気にすることないよ」
拓海がため息をついたあと口元をおおった。
里奈は言うことをいったのでデザートのケーキを口にする。特別甘い物をえらんだのは正解だった。口の中に広がる甘みで緊張がほぐれた。
「俺は関係を終了したいと思ってない。それと里奈がみたのは高校時代の友達だ。
昼間は高校時代の友達三人がこっちに来たから会ってた。男二人もそばにいたけど、里奈がそいつらに気付かなかったのは仕方ないよな。
彼女は昔から気軽に腕をくんできたりするタイプだったから気にしてなかったけど今後は気をつける。
今日は久しぶりに里奈との時間を楽しみたかったから奮発したんだ」
拓海が里奈と視線をあわせた。
「俺から連絡しなかったことは本当に申し訳ない。忙しいと気持ちの余裕がなくて、スマホをみてメッセージの着信があれば返事するだけになる。
里奈と付き合うようになって、仕事が一段落して連絡できる状態になると一番はじめに考えるのは里奈のことだ。
本当に今日は里奈と会えるの楽しみにしてて……」
拓海のその言葉に里奈は救われた。体で傷をなめ合うだけの関係ではなく、拓海はこれまで里奈をちゃんと彼女扱いしてくれた。
拓海が里奈のことを好きで始まった関係ではない。里奈とどうしても会いたい、少しでもよいので連絡をとりたいとならないのは仕方ない。余裕のある時に会おうと思ってくれるだけでもありがたい。
「最後にそんな風にいってもらえてうれしかったよ」
拓海の瞳がゆれた。
拓海は里奈を家まで送るといったが断った。
寄っていく必要はまったくないが家の近くのコンビニにはいり目についた雑誌と新作コンビニスイーツを買う。
リバウンドリレーションシップの何にひかれ拓海に付き合おうといったのか、我ながら何を考えていたやらと笑いがこみあげた。
大学時代にあきらめた恋を叶えたくなったというよりも、元カレと別れたときの傷をいやしたかったのかもしれない。どうやら自分が思っていたよりも傷ついていたようだ。
好きな人の気持ちが少しづつ自分からはなれ、大切にしなくてもよいという位置づけになるのはうれしくない。
「もうお前のことはどうでもよい」と連絡がなくなるのを目の当たりにするのはつらい。気持ちがはなれていることを認めるのは苦しい。
またあの苦しみをくぐりぬけることになるかもと思うと新しい恋を始める勇気がでない。足がすくむ。
だからリハビリとして振られても傷つかない関係を、傷をいやすために一時的といえる関係を求めていたのだろう。
できれば拓海ともう少し付き合い始めの楽しさが味わえる関係だったらうれしかったが、連絡がこない苦しさを思い出し残念だった。
支払いをしてコンビニをでると拓海とぶつかりそうになった。
この場所にいるはずのない拓海が目の前にいる状況にぼんやりしていると、拓海に手をひかれ駅前のカフェに連れていかれた。
「さっきは動揺しすぎて頭がフリーズしてる間に解散したから」
拓海はきっと里奈に一言文句をいわないと気がすまないのだろう。
「俺は里奈との関係を継続したい。里奈のことが好きだから」
思わずため息がでた。好きといわれ、これほど心が沈むとは思ってもみなかった。
「もういいよ、拓海。付き合うことを了承したから私のことを好きになろうと頑張ってくれたんだよね。それだけで十分だよ」
「違う。自分の気持ちを伝えてるだけだ。里奈が俺がいってることを信じられないほど俺の態度がひどかったんだと反省してる。
連絡もろくにしない男に愛想がつきたかもしれないけど」
「要するに拓海はいま恋愛する余裕がないんだよ。
友達で十分じゃない? 友達だったらたまに連絡するだけでいいし、月単位どころか年単位に連絡が途切れても大丈夫なもんじゃない、友達って。
本当に無理して私と付き合う必要はないよ」
拓海がうなだれている。
「ごめん。里奈に甘えてた。俺、本当に学習能力がないよな」
「拓海、付き合うのって別に頑張ってするもんじゃないし、連絡しなきゃって義務のようになってるのって関係としておかしいよ。
きっとそのうちどれほど忙しくても声が聞きたい、一目でよいから会いたいって思う相手が拓海にあらわれる。
悲しいけど拓海にとって私はそういう存在じゃない。私から始めた関係だから私が終わらせた。それだけ」
「でも―― いま里奈のことを好きだと思う気持ちを大切にしたい。ゆっくり育っていく気持ちってあるだろう?
これまでの三か月は里奈からいいだしたお試し期間だから、今度は俺から関係をはじめさせてほしい。もう一度お試し期間を三か月つくってほしい」
拓海の提案にとまどう。
「チャンスがほしい」
理性は「このまま関係を終わらせろ」という。あっさりしたリバウンドリレーションシップだったで終わればよい。
しかし感情は「あと三か月だけなら」という。他に好きな人がいるわけでもなく、拓海を嫌いになったわけでもないのだから別によいだろうと。
拓海のすがるような目をみて里奈は決めた。
「じゃあ、あと一か月。拓海に放置されたとしてもそれぐらいなら耐えられそうだし」
「なんだよ、俺からの放置が前提って」
「だって忙しいってずっと放置されたし」
拓海が苦笑いする。
「ごめん。本当にごめん」
「それとこれからの一か月は私から連絡しない。拓海が連絡してくれたら返事する。それでいい?」
拓海が気持ちよさそうに笑った。
「それでいいよ。ありがとうチャンスをくれて」
きっと一週間ぐらいは拓海もいまの勢いで連絡をくれたり、デートにさそってくれるだろう。
しかしその後はその勢いもなくなり現状にもどるはずだ。
「逃げられたから追いかけたくなっただけだろうなあ」
里奈はこれもリバウンドリレーションシップの醍醐味と思うことにした。傷をなめあう関係でおこるドラマのひとつ。そういうことにしておこう。
里奈は拓海と視線があうとにっこりほほえんだ。




