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それでも歩く
男は歩いているわき目もふらずに走っている。精一杯に腕を振り、脚を必死に回し1mmでも前に進もうとしている。走り始めは周りの風景を気にしていたものの、徐々に周りの風景を忘れ無我夢中に走るようになっていた。男は自分が進んでいるのか、どこに向かっているのかも分からなくなっていることに焦り、脚はもつれ上手く走れなくなっていった。男はいつもそこで目を覚ます。
これまではずっと先を走っている人が同じように必死になって走っている姿を見て、応援をしたり、反面教師にしていた。後や先の時間の問題じゃない、気が付いたら独りでに走っていた。順番じゃなかった。走って辛いのは息が切れるからじゃない、喉が渇くからじゃない。走っても走っても前に進まないからだ。
男は目が覚めても瞼を開こうとしない。なぜなら、何も変わっていないからだ。瞼の先に見える風景、テレビは変わっているが、自分がその空間に存在した瞬間にすべての時間が止まってしまう。




