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41 【閑話休題】木の上で

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

今日は短めです。


「あれが『禍』……」


 ユカワの街を出発してからおよそ25分。

 普通の人の足ならばどんなに急いでもその倍はかかるであろう悪道もものともせず、フィリップ小隊は禍の大元である稲荷岩にたどり着いた。

 禍からは100メートル離れているのだが、その周辺の瘴気は恐ろしく濃い。

 その証拠に周辺の木々は一切枯れ果て、水は濁り、紫のような黒のような魔力の残滓が漂っている。

 だがミラの口元の浄化付与のおかげで体調の悪化は感じない。

 俺の婚約者すごすぎとノルは思った。


「うーん、とりあえず討伐作戦は立てられたから、一度帰るぞー」


 少し上のほうから帰ってきたフィルさんがのんびりとそう言った。

 どうやら、危惧していたよりは被害はなかったようだ。

 しかし思ってたよりも成長速度が大きいらしい。

 もうふたまわりは小さめのはずだし、そもそも禍が予測よりも大きくなることは殆どないと言われている。

 禍が大きくなるには外から全属性の魔法を与える必要があるからだ。

 それも結構な魔力量を必要とする。

 わざわざ自分から災害を大きくしていく馬鹿はいないし、もしいたとしてもできるやつがそもそも少ない。

 しかしこの規模の拡大ならば、その可能性を再び思考に入れる必要があるかもしれない。


「ノル~、早くしろ~」


 吹いてくる風に雨の匂いが混じっている。

 下り坂に向かう山の空を一度仰いで、ノルは偵察組を追いかけた。






「あれがオリバー=ウィステリア……。恐ろしいほどの魔力だ」


 木の枝に乗り、生い茂る葉に紛れるようにして立っていた一人の男がぽつりとつぶやいた。


「ああ。禍のありかを調べるために、風魔法を応用した空間認知魔法を使っていたな。あの強大な魔力量で驚くべき操作性だ。高い位置にいなかったら我々の存在もバレていたであろうよ」


 その隣に音もなく現れた人物が男の言葉に首肯を返す。

 その人物は長いローブを身に纏い、フードを目深にかぶっていて男か女かもわからない。

 ただ深みのある声だけが響き、周辺の木々に沁みこむようにして消えた。


「ひとまず今我々がすべき仕事は終わった。それ以上の手出しも深追いも、蛇足というものだろう」


 二人の仕事は禍の拡大だ。それは組織の、ひいては世界のために必要な仕事である。

 それによって払われる犠牲もまた、仕方のないことである。

 だがこれ以上の接触は自分の身を滅ぼすことになりかねない。

 この仕事が組織によるものだとバレるのはまずいのである。


「ところで彼らは一様に口もとに魔法を付与していたが、あれは一体なんだ? いくつか魔法を組み合わせていたがなんのためのものだか見当もつかない。しかもあんな狭い範囲に、だぞ」


 男がフードの人物に向かって問いかける。フードの人物は考え込むように口に手を当てた。


「む、わからない。私も初めて見る魔法だ。風に、日に、水だったか。今のところ考えられるのは"水鏡"のように虚像を作る魔法か、"幻"のような幻影魔法だ。だがそれを口もとに付与する理由がわからない。加えて各魔法の割合もそれらではありえない配分だ。風魔法の割合が大きすぎる。だとすると別の魔法だと考えるのが妥当だが……」


 フードの人物の『わからない』は男にとってけっこうな衝撃だった。

 なにせ魔法の知識に関しては、組織においてこのフードの人物の右に出る者はいないのだ。


「それ以上にあの魔法はあまりにも精密だ。日魔法は特にそうだ。非常に強力な魔法を口もとの1点に収束させている。それに、どの魔法もそうだが、使い方によっては人体の害にもなりうるであろう魔法を、人体にのみ無効化している。いや、そうならぬように調整している……? 何にせよ一朝一夕にできていい芸当ではない。下手をすればオリバー=ウィステリアの強大な魔力よりもよほど脅威だ」

「なんだと……? オリバー=ウィステリアよりも……。それは、ぜひとも欲しいな……」


 男は片頬を持ち上げる。


「まずは本部にこのことを報告せねば。それから策を練って、あの未知の魔法の正体を突き止めよう」

「そんな悠長なこと、言ってられねえ! 俺には時間がねえんだ! 俺があの一向に潜り込んで、探ってくる!」


 あくまでも報告を優先しようとするフードの人物に、男は抗議する。


「勝手にしろ。私はやらない」


 すげなく断られてしまった。

 そして、フードの人物はまた、音もなく姿を消した。


 一人残された木の上で、男はひとつ舌打ちをすると、身軽な動作で木を下りたのだった。

今話も最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございます!

新キャラ登場です!


男。フードの人物の部下。理由があってこの仕事をやってる。チャラ男。昔ヤンチャしたときについた傷があり、結構黒歴史。


フードさん。寝るの大好き。実は休日出勤。この仕事そろそろやめたい。フードをかぶる理由は色々あるけど、1つは安心感あるから。引き籠もり。


更新スローペースですみません!もう少しで、作者側の事情諸々、落ち着きます。がんばりますので、今後ともご愛読のほど、よろしくお願い致します。


あづまひろ

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