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22 選考会1

いつもお読みいただきありがとうございます!


 そういえば。


 手を振ってノルと別れた後、ミラは考えていた。


 ノルって何者なんだろうか。

 服装とか、お菓子を作ってくるところを見るに貴族ではなさそうなのだ。

 でも妙に落ち着いているというか、大人っぽいというか、達観しているというか。

 ただの賢い平民の子供と言うには、少々無理がある。


「商会の子、とか? それにしては欲がないよな……。この街に来た冒険者の子? いや、だったらこんなに長い期間一つのところに留まってはないな。騎士団の誰かの……いや、みんな独身だ」


 考えてもわからない。そもそもノルについて持っている情報が少なすぎるのだ。

 わかることと言えば、年と、お菓子の好みが自分と似ていること、魔法の能力がものすごく高いことぐらいだ。

 愛称が『ノル』だということもわかる。


「愛称…? ノル、ノル、うーん、なーんかこう、忘れてる気がするんだよなー。ノルって名前について。普通に考えればノエルとかノルベルトとかアルノルトとかの短縮だと思うんだけど、どこか違和感ていうか。日本人ってあんまり名前を短縮しないからなー」


 ブツブツひとりごとを言うミラを、奇怪なものを見る目でエマが見ている。

 許していただきたい。ギャル時代の名残である。


 のどの奥に小骨が引っかかるようなもやもやを流し込むように、ミラは魔法瓶に残った紅茶を飲んだ。





「……ラ、ミラ!」

「うおおっ!」


 ソフィアの声でミラははっと意識を引き戻した。

 せっかくのソフィアとの時間に考え事をしてしまった。つらたん。


「わたくしの話、聞いてなかったでしょう」

「えへへ、バレた? ごめん」


 ソフィアはその愛らしい唇を尖らせる。

 今いる場所はハミルトン家の件の庭である。

 ソフィアも、庭も、今日も美しい。


「もー。まあいいのですけどね。ミラにも関係あるんですから、今度はちゃんと聞いてね?」

「ほいほい」


 ソフィアはひとつ息を吸ってもう一度話し出す。


「オリバー第二王子殿下の『(わざわい)』討伐の話は覚えてらっしゃるでしょう?」

「うん。あんまり気分のいい話じゃないよね」

「ええ。とはいえ討伐隊出発まであと一ヵ月ほどでしょう? それで国の安定のためにオーウェン第一王子の立太子をするそうなの」


 当然と言えば当然の話だ。


「それでね? 来週それに伴って王太子妃、つまり次期王妃の選考をするそうよ」

「なるほどそういう話になるわけね」


 初対面でやらかしているミラにはほとんど無関係と言っていいだろう。


「とはいえだよ? 私は最初でほら、ね? 印象最悪だし、ゆうてそこまで王子に興味ないっていうか。お父様もお母様もそこらへんは好きにしろって言ってくれてるし」

「そういえば、スチュワート伯爵家にはレオ様がおりましたわね」

「うん。今留学中だけどね。帰ってきたら家継ぐって言ってるらしいから」


 そう。ミラには7歳年上の兄がいる。

 もっとも、ミラが生まれた時にはすでに隣国に留学していていなかった。優秀な兄なのである。


「そうは言っても、王家の招待を受けないわけには参りません。というわけで、その選考会に行く際の服装を一緒に選んでくれないかしら……。ほら、この前教えてくれた、しゃんぷーとりんす? もとっても素晴らしい効果だったし」


 髪を一房つまんで離すソフィア。つやを増した紅茶色の髪がさらりと音を立てる。

 ミラは友達を構い倒せる絶好の機会に喜びを隠さない。


「まかせて! ソフィには何色のドレスがいいかなあ!」


 この前のような淡い色も素敵だったが、今日着ているミッドナイトブルーのドレスも綺麗だ。

 ミラは期待と想像に胸を弾ませてニマニマした。


「明日また我が家に来て? 私の部屋に案内しますわ」

「うん! りょーかい!」


 ソフィアは満足そうにお茶をすすった。

 ミラも笑いながら紅茶に口をつける。


 あれから心の声らしきものは聞こえてこない。

 聞こうと念じれば聞こえるのかもと思ったが無理だった。

 ノルだけかもしれないと思って以後じっと見てみたりしたのだが、特に何かを読み取れることもなかった。


 しかしノルの心の声が聞こえたのはたしかだ。

 なぜ聞こえたのか。どうしてあのタイミングだけだったのか。それがミラにはわからない。


「ところで、件のノル? とかいう男の子ですけど」

「ん゛っ……、げっほ、ゴっ」


その言葉にミラはむせた。

最近むせてばかりな気がする。


「ん゛っん゛、うん、どうしたの? てかソフィーに話したっけ?」


 なんとか抑え込んでミラは聞き返す。ソフィアはというと、しれっとした顔で紅茶にミルクを入れている。

 なんとも食えない友人だ。こういう時に心の声が聞こえてくれればいいのに。


「藍色の髪に濡羽色の瞳、でしたわね。それほどの大きな魔力の持ち主であれば、国の主要人物一覧(リスト)に載っているはずなのですけど、ノル、ノエル、ノルベルトあるいはアルノルトと言った名前はなかったの」


 ミラの質問には答えず、続けるソフィア。いつの間にそんなことを調べていたのだろう。

 それとやっぱり言っていないと思うのだがどこから知ったのだろう。


「というか主要人物一覧て、ソフィそんなの見れたの!?」

「エマさんの名前はありましたよ」


 そう言ってエマの方を向くソフィア。

 エマはそうですか、と言っただけだったがそのあとこっちを向いてニヤッと笑ったのでけっこう嬉しかったんではなかろうか。

 やっぱりうちの侍女はすごいとミラは思う。


「何者なんでしょうね、本当に」


 ソフィアはぽつりとつぶやいた。

 その正体がすぐわかることになるとも思わずに。




 で、結局どこで知ったんだよ、ソフィア……



いつもお読みいただきありがとうございます

作者の好み丸出しの小説(ほんとそれな)つたない文でご迷惑をおかけするかとは思いますが読んでいただけたら大変うれしいです

いつも私の小説を楽しんでくれている読者の方、初めて覗いてくださった方、心から感謝申し上げます。

引き続きよろしくお願いします!

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