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13/86

13 ノル

今回は短めです。


 窓から入り込んだ夜風がそっとカーテンを揺らす。

 空には星がまるで銀砂を撒いたかのように輝き、月のない今日、星明りだけが王都を照らしている。


 窓辺に置かれた椅子に座る少年は本を読んでいた。

 文字を追う瞳は透き通るような、それでいて思わず惹きこまれるような烏羽(からすば)色。

 風にあおられてぱらりとめくれるページをふと見やり、ついで窓の外を見る。


 誰にも知られずに(またた)いていた満天の星々が、少年の目に映る。

 しばしその光景に目を奪われていた少年は、ノックの音で我に返った。

 ゆっくりと扉を開けて入ってきたのは真っ白な髭がチャーミングなロマンスグレーの老執事だ。

 その姿をとらえて、少年は安堵したように息を吐いた。


「ノル様、やはりまだ起きておられましたか。今温かいミルクとチョコレートをお持ちいたします」


「ありがとう、じいや」


 老執事は窓辺に置かれた魔法書をみつけ、ろうそくの明かりがともるように表情を緩めた。


「何か、良いことでもございましたか?」


 そう尋ねる老執事。


「とても素直でお人好しな女の子に出会ったんだ」


 少年はこともなげに答える。

 けれど老執事は、その声音に隠しきれないあたたかな響きを感じ取った。


 ここしばらくこの家で笑みを見せなかった少年の表情が、幾分か和らいでいることに老執事は驚き、嬉しさに顔を綻ばせた。


「なんというお名前だったのです? その女の子は」


 内緒話をするかのように声を潜めて、楽しそうに尋ねる老執事。

 少年はそんな彼をちょいちょいと手招きし、口元に手を当てて老執事の耳に顔を近づけた。


「ミラ=スチュワートっていうんだ。名前通りの勤勉な子だよ」


 少年は一瞬だけ以前のいたずらっぽい瞳を取り戻して、にっと笑う。

 その表情に老執事は目を見開いて、それから優しいまなざしを少年に向ける。


「ミラ=スチュワート、か。彼女ならノル様を救えるだろうか……」


 その老執事のひとりごとは、椅子に戻って再び本を読み始めた少年には届かない。


 ふたりの間のひそやかな会話も、老執事のつぶやきも

 広い空をどこまでも埋め尽くす、星々だけが知っている。




いつもお読みいただきありがとうございます!


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