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『藍より出でて ~ Bubbles on indigo river~』  作者: 錆鼠
第8章 2018
262/279

6104 付喪神(中)③

8月末で完結したかったのですが、既に9月。

自らの非力、言い訳は致しません。

完結まで、気長にお付き合い頂ければ幸いです。


09/05追記

かなり大きな修正を致しました。

投稿直後に読んで下さった皆様にお詫び致します。

申し訳有りません。

6104 『付喪神(中)③』


「店主が骨董好きで、高そうなお宝を店の中に沢山飾ってたらしい。

店は人気だったけど跡継ぎがいなかったから20年位前に閉店。

その後すぐに店主がオッ死んじでよ。今も店の中はそのままだ、お宝も。」


「それって噂だろ。なぁ、やっぱ止めた方が良いんじゃないか?」

「今更何言ってんだ。ほら、バール。

取り敢えずあの窓割って、アラームが鳴らなかったら突入。」


「だからさ~、セキュリティが生きてたらマズいって。」

「もしアラームが鳴っても、街の警備会社からここまで20分。余裕余裕。

あ、バイクは鍵差したままにしとけ。逃げるのは街と反対側だ、慌てるなよ。」


「何でそんなに段取りが良いんだか。」 「慣れてるから、な。」


『・・・・さまの・・・・・ます。お・・・・・さい。』


「今、何か聞こえなかったか?人の声、みたいな。」

「そんな訳あるか、ビビり過ぎだって。行くぞ。」


「お、おい、あれ。」

「何で、店の中に灯り?」


『ほか・・・様のめい・・・ます。おひき・・・・さい。』


「後ろ、後ろ。まわり全部、人が。」


『他の・客様の迷わくになります。お引きと・・ださい。』

『他のお客様の迷惑になります。お引き取り下さい。』


「何でだよ。何時の間に、こんな?」

「だから言ったんだ。」


『他のお客様の迷惑になります。お引き取り下さい。』

『他のお客様の迷惑になります。お引き取り下さい。』

『他のお客様の迷惑になります。お引き取り下さい。』


「逃げろ! 逃げろ!!」


『他のお客様の迷惑になります。お引き取り下さい。』

『他のお客様の迷惑になります。お引き取り下さい。』

『他のお客様の迷惑になります。お引き取り下さい。』

『他のお客様の迷惑になります。お引き取り下さい。』


「うわぁあああ・・・」


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「最初の情報が入ったのは1999年10月。」

「閉店から18年後、ですね。」

「そう。切掛は死亡事故、バイクの。」


バイクの死亡事故。一体、中華料理店と何の関係が。


「ええと、付喪神の話ですよね。中華料理店が変化した。」

「事故は週末の深夜。死亡した2人の血液からアルコールを検出。

榊さんが担当じゃなければ、情報は得られなかった筈。」


「榊さん、って。」

「チーム榊が形になり始めた頃ね。私が関わって直ぐだった。」


私が関わって直ぐ?

1999年って事は...Sさんが19才。榊さんは、32才。

榊さんはともかく。

俺の知らない、Sさん。19才の。何だか、胸の奥がザワザワする。


「何だか、変な顔。どうしたの?」


悪戯っぽい笑顔。

絶対、分かってる。分かってるくせに。


「『榊さんが担当じゃなければ』っていうのが、ちょっと。」

「榊さんが捜査したのは事故現場だけじゃない。『何か』を感じたから。」

「じゃあ、事故現場近くの県道●◇号を虱潰しに?」

「虱潰しまではいかないかな。事故現場から遡って、約1km。

そこに『☆々軒』。流石は榊さん、それも『加護』がもたらす感覚ね。」


「あの店の近くで、何かが見つかったんですね。」

「駐車場でバールが2本、残ってた指紋が2人と一致。」


閉店して18年、放置された建物。

一種の廃墟、心霊スポット。そんな噂が立ってもおかしくはない。

しかし。


「バールを持って肝試しとか、

廃墟マニアやオカルト好きにしては物騒過ぎると言うか。」

「肝試しなんて可愛いモノじゃない。

『☆々軒』の店主は骨董好きで有名だったらしいから、

金目の骨董品を狙った窃盗の計画。

幾つか余罪が有って、最後は未遂犯で事故死。自業自得。」


「そんな...」

いや、待て。それなら事故の、2人が死んだ原因は。


「『☆々軒』に侵入しようとした2人に、付喪神の祟りが?」

「祟りじゃ無い、何らかの異変は起きたでしょうけど。

驚いた2人はパニック。慌てて逃げて、カーブを曲がり損ねたって訳。」


「術者が『☆々軒』を調査をして、付喪神への変化を確認したんですね。」

「そう。だから『上』が動いた。未知の付喪神を放置する訳にはいかない。

窃盗犯みたいな人の感情と関わって『不幸の輪廻』の繋がりが出来たら、

それこそ取り返しが付かないでしょ。」


「それで、『上』は何を?」

「『☆々軒』を買い取ったの、土地と建物をまとめて。

親族は相続で長年ゴタゴタしてたらしくて、随分感謝されたみたいね。」


19才の...いや、その交渉はきっと別の人が。


「人感ライトと防犯カメラを複数設置して、噂も流した。」

「噂、ですか?」


「そう。『☆々軒だけはガチ/噂話をしただけでヤバい』って。

ああいう半端者は怖い話に弱いし、実際死人も出てる。

まあ本物の屑もいるから、セキュリテイ会社と契約した。

屑が侵入したら、即『対策班』が出動・対応する。効果覿面。」


『対策班』は、あらゆる面で一族の荒事を担当する部署。

長い間、炎さんが指揮を執り、『分家』に対抗していた。

武器でも術でも、ありとあらゆる手段を使って『汚れ役』を担う。


『分家』との争いが収束した後は開店休業状態だと思っていたけれど。

廃墟で肝試しする馬鹿の対応なんて、無駄遣いにも程が有る。


ふと眼に浮かぶ、端正な横顔。ニヒルな微笑み。


まあ、炎さんは笑って引き受けたかも知れない。

それがSさんの依頼なら。


「ええと、駐車場の入口を閉鎖すれば良かったような。」

「付喪神が引き寄せるのは、犯罪者だけじゃない。」


Sさんは悪戯っぽく微笑んだ。

「例えば、高木さん。」


軽い耳鳴り。


「ええと、検索のキーワードは確か...

『県道●◇号』/『中華料理店』/『美味しい料理』/『不思議な話』

そして少なくとも2件、高木さんと似た事例があると分かった。

その件で個人まで特定するのは無理だったけど。」


耳鳴りに混じって、Sさんの言葉が頭の中に響く。


『そう、偶然じゃ無いから。』

それは、つまり。


「だから、駐車場を閉鎖しなかったんですね?

ライトとカメラを設置した目的は、防犯じゃ無かった。」

「御名答。2年ちょっとで見つかったのは運が良かったわ。

それもきっと、『良き理』の加護が有ったから。」


成る程、繋がった。


高木さんが付喪神に引き寄せられ、店の入口近くで寝るまでの一部始終。

当然、駐車場に駐めた、高木さんの車のナンバーも。

起動したカメラが記録した映像を『上』は即時に把握・対応。

だから翌日、郷土史研究家を名乗る術者が高木さんに接触出来た、と。


『付喪神(中)③』了

本日投稿予定は1回、任務完了。

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